topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.155
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「よっこしっまさぁ〜〜〜ん
 麻帆良祭二日目の早朝、アスナは元気良く横島に飛びついた。
 祭りの期間中はいつもの修行は無しという事になっていたが習慣は変わらず、早くに目を覚ましてしまう者がちらほらいた。
 そういった者達はいつものように軽く身体を動かそうと庭に出ている。アスナもそんな中の一人だった。
 もっともアスナにとっては、横島にハグしてもらう方が大事なようだが。

「そういえば美神さん達は?」
「まだ寝てるだろ。美神さんって、すっごい朝弱いぞ」
「静かにしてた方がいいですか?」
「ああ、大丈夫だ。美神さん達は本城の方に泊まってるから」
 令子一行は、本城の方に泊まっている。せっかくならば豪華な方が良いという令子の要望だ。お世話をする側から見ても、元々客室が用意されてる本城の方がありがたかったりする。
 おキヌは遠慮していたが、今日はお客様なのだからと令子に押し切られていた。
 今朝も朝食の準備などをしなくていいのでゆっくり休んでいるだろう。
「横島さん!」
「横島師父〜」
「兄ちゃ〜ん」
 とりあえず大勢の少女達に群がられている姿を見られずに済んでいるのは、彼にとって幸運かも知れない。


 一方その頃学園長達は、徹夜で書類仕事を終えていた。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.155


 朝食を終えて、そろそろ出掛けようかと思った頃合い、令子は美智恵に呼び止められた。
「ねえ、令子。今日はひのめの事お願いしていいかしら?」
「えっ? ママはどうするのよ?」
「ちょっと用事がね……」
 口淀む美智恵、実はこちらも昨夜の話の関係だった。
 魔法使い達の情報公開に絡む各種の問題。それによって起こりうる事件。
 令子の話を聞いてこれは人間界側も動かねばならないと判断した美智恵は、東京に戻り唐巣や六道夫人のようなオカルト業界の重鎮達に連絡を取ろうとしていた。
 その中にオカルトGメン関係者が入っていないのは、彼女の「信頼」の表れであろう。
 問題は、そういう大事な話し合いをするのに赤ん坊を連れて行けない事。こういう時は家に預けるのが常なのだが、ご存知の通り令子達は麻帆良に来ているため、家には人工幽霊壱号しかいない。
 案の定、令子は嫌そうな顔をした。
 今日はシロがまほら武闘会に出るため任せられないというのもあるが、理由はそれだけではない。令子は人前でひのめの世話をする事を嫌がる。
 令子はひのめの事を可愛がっている。しかしそれは「妹として可愛い」のであって、「娘として」ではない。
 これがおキヌではあれば、子守りをしているのかぐらいにしか思われない。
 しかし二十歳の歳の差と、血のつながりを感じさせる顔の令子の場合、傍からはどう見えるのか。
 そう、令子は「若いお母さん」と勘違いされるのを嫌がっていた。
 買い物に行っている最中、授乳室でおむつを変えている時に親子と勘違いされた事が八回。そこまでなら年齢差もあって許せるのだが、その内半分は二人目以降の子供だと勘違いされた。おむつを替える手際が良過ぎた事が原因だと思われる。
 自分がどういう風に見られているか、何歳ぐらいに見られていたのかも気になるかは聞かぬが花だ。
 そういう理由もあって、いつしか令子は人前では育児能力を発揮しないようになっていた。
「それなら私が引き受けましょうか?」
 美智恵がどうしたものかと頭を悩ませていると、見かねたおキヌが声を掛けてきた。
「おキヌちゃん、頼めるかしら? 令子はやりたくないみたいだから」
「そうやって私だけ悪いみたいに言わないでくれる? シロの応援もあるんだから」
 ちなみに令子が嫌がるのには、もうひとつの理由があった。
 それは参加者の面子から考えるに、まほら武闘大会が激しいものになる。観客達もエキサイトするであろうという事だ。
 ついでにいうと予選は急遽決まったものだったので、本戦は予選以上の観客が集まるだろうと思われる。
 そういうところにひのめを連れて行くのは避けた方が良い。これは美智恵も考えていた事で、当初の予定ならば今日は朝から別行動するはずであった。
 つまり令子がひのめの子守りを引き受けると、シロを応援しに行く事ができなくなるのだ。
 これについては令子の方に理があった。シロに尋ねれば「先生(横島)が来てくれればそれでいいでござるよ!」とか言い出す可能性が大きいが。

「ですから私だけで……」
「却下、危ない」
 おキヌだけで引き受ける案も同じだった。
 流石の令子も、この観光客でごった返す街に可愛い妹と妹分だけを放り出す気は無い。
 レーベンスシュルト城で留守場しておくというのであれば話は別だが、せっかく麻帆良祭に来たのにそれは酷であろう。
 こうなれば美智恵が東京に戻って人工幽霊壱一号に頼むか、或いは横島の家に行ってタマモに預けるかと考えていると、意外なところから救いの手を差し伸べられた。
「そういう事なら、ウチがおキヌとひのめを見とこか?」
 千草である。
 レーベンスシュルト城に住む大人の中で唯一魔法先生ではない彼女は、比較的自由な立場にあった。
「大丈夫なの?」
「経験無いから子守りごと任されても困るけど、そっちはおキヌがやってくれるなら二人のボディガードしたるわ。こっちには月詠もついとるし」
「それ、余計に心配なんだけど……」
 変に月詠を刺激してはまずいという事で、彼女の狂人っぷりは昨夜の内に令子達に伝えられていた。
「いやいや、最近はおとなしいから大丈夫やて」
 そして千草の親バカぶりも。
 しかし代案が出てくる訳でもなく、美智恵はしばらく忙しくなりそうなので令子の方にいた方が良いという事となり、結局は武闘大会にあまり興味が無い高音と愛衣もボディガードにつくという事で話がついた。
 ひのめの子守りをしつつ、彼女達で祭りを見て回るだろう。
「令子、ずっと押し付けてたら駄目よ?」
「わ、分かってるわよ。ここに戻ってきたらバトンタッチするから」
 最後に釘を刺してから、美智恵は足早に東京へと戻っていった。

「パーティのリーダーが大変なのって、GSも変わらないんですね〜」
「念のために言っとくけど、GSの事務所ってパーティっていうほど人数いる方が少数派らしいからな?」
 ネギが微妙に勘違いしていたため訂正しておく。

「あああ、ネギ先生の勇姿をこの目で見られないとは! しかし、委員長として役割を蔑ろにする訳にも……!」
 バス停の前まで来たところであやかを筆頭にクラスや部活の出し物に出る者達、武闘大会以外に見たいものがある者達と別れる。
 ネギパーテイは全員会場に向かうが、横島達は参加者の古菲を除くとアスナ、木乃香、刹那、アキラ、アーニャ、コレットの六人だけとなる。
 アキラはこういう大会は好まないが、ネギパーティの亜子が怖がりながらもついて行こうとしているため、一緒にいてやりたいという優しさからの参加だ。
「ちと遅くなったな。急ぐぞ、横島」
「ま゛っ!」
「あんたら、いつもそんな事やってんの?」
 これに令子とシロ、エヴァと茶々丸と加えた一行は、急いで会場へと向かう。
 なおエヴァは当然と言わんばかりに横島に肩車されていて、令子は立派に独り立ちしたはずの助手の姿を呆れ顔で見ていた。


「うわっ、もう一杯だな」
「予想通りね、ひのめを連れて来なくて良かったわ」
 そして到着した会場は、既に人だかりで溢れていた。
 参加者であるネギ達はこのまま控室に行けばいいのだが、横島達が観客席に入れるかは微妙なところである。
「うわー! これじゃ入れないじゃーん!」
「仕方ないわねぇ、転売してるヤツいないかしら?」
 焦るまき絵に、冷静にダフ屋を探す令子。
 横島は屋根の上に登れないかと上を見上げているところに、超がやって来た。
「皆、そんなところでどうしたネ?」
「あ、超。すっごい人だかりだけど、これ私達入れそう?」
「あ〜……チケットならまだあるけど、これは入れても後ろの方かも知れないネ」
 ちゃんとした観客席がある訳ではないので、ほとんど見えないかも知れないそうだ。
 ちなみに時間があれば用意するつもりだったとの事。

 初めて超を見る令子は、横島に耳打ちして尋ねる。
「誰?」
「超鈴音、この大会の主催者っス」
「……あの子が1000万出すの? 中学生よね?」
「この学校『学祭長者』ってのがいて、出せるみたいっスね。特に超は『超包子』って屋台を経営してて、がっぽがっぽ儲けてるみたいだし」
「へ、へ〜……」
 令子の声に呆れの色が混じっているように感じられるのは気のせいではあるまい。

「という訳で取引ネ」
「取引? 何をだ?」
「ちょっと大会中、茶々丸を貸して欲しいネ。このままだと私、主催者と裏方と実況を兼任する事になるから」
「いや、そりゃ無茶だろ」
「そう、無茶ネ。だから茶々丸を貸してくれたら枡席を用意するヨ」
「そんなのあるの?」
「急遽用意したネ」
 客席は用意できなかったが、一段上から見る事ができる枡席を作ったので、そこを一つ貸してくれるという事だ。
 人混みに入らなくていいのならばとエヴァは取引を承諾した。
「茶々丸、超を手伝ってやれ!」
「分かりました。私は裏方をすればよろしいのでしょうか?」
「いや、そっちは私がやるから、茶々丸は実況を頼むネ」
「では朝倉さんと打ち合わせしておきます」
 超と茶々丸、それにネギ達参加者が控室へと向かい、残った横島一行は超に教えられた枡席へと向かう。
 枡席は四つ並んでおり、全員上ると少し手狭そうだ。
「ハシゴってのがアレだけどね……」
 急ごしらえなので仕方がない。
 横断幕のおかげで見た目はそれなりだが、中を覗いてみると急ごしらえである事がよく分かる。
 しかし耐久性は十分だろうという事で、大会を見る分には問題無いだろうと横島は判断した。
「まぁ、飲み物とかは先に買っときましょうか。あ、ポップコーンも買っとくわよ」
「美神さんがお金を出す!?」
「……流石にあんた達に奢ってもらおうとは思わないわよ」
 それでも珍しい事は確かである。
 ちなみに他の枡席は、いわゆる『学祭長者』と呼ばれる者達のグループがそれぞれ席を取っていた。
 やけに羽振りの良い者達ばかりだが、こちらも令子がいるので負けていない。
「色んな意味で規格外なのね、ここ……」
 枡席に座った令子は辺りを見回し、呆れ気味の声を漏らした。

 それからポップコーンをつまみながらしばらく持っていると、朝倉和美がレースクイーンのような衣装に身を包んで舞台の上に姿を現した。
「あの子も中学生?」
「アスナ達のクラスメイトっス」
 それを聞き、令子は思わず「最近の子は発育良いのねぇ」と呟いた。
 和美が開会の挨拶をしている内に、買い物ついでにもらってきたトーナメント表に目を通す。
「シロは……第四試合か」
「古菲は第一試合だから、当たるなら準決勝っスね」
「あんたは賭けてないんでしょ? 当たったらワザと負けるように言っときなさいよ」
「美神さんって……」
「ズルいな〜」
 そんな会話をしている内にルールの説明も終わり、超の開会宣言も終了。
 第一試合に出る古菲と対戦相手が舞台に上がる。
「あれ誰だっけ?」
「剣道部の辻部長ですね。いつも古菲に勝負を挑んでいる一人で、彼女をライバル視しています」
 同じ剣道部で面識のある刹那が答えてくれた。
 木刀に剣道の防具一式とフル装備で、物凄い気迫で古菲を睨みつけている。
「剣道部が中武研に負けたままではいれない。今日は勝たせてもらうぞ、菲部長!」
 試合が始まる前から木刀を構えている。
 それに対し古菲は、静かに一礼した。
「これはどちらもやる気十分だ! 第一試合……Fight!!」
 和美は高らかに試合開始を宣言。

「哈ッ!」
「はぶぅっ!?」

 直後に強烈な一撃が胴の防具を砕き、試合は終わった。
 古菲、余裕の一回戦突破である。





つづく


あとがき

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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