topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.161
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「じゃあ先頭は俺とアスナで行くから、高音が後ろに回って夕映と千雨を真ん中で守る形で行こう」
「分かったわ。愛衣、あなたは地図を持って夕映さん達と一緒に」
「はいっ!」
 手早くフォーメーションを決めて地下水道に入る横島一行。土偶羅魔具羅は持ち運ぼうとするとそれなりに重量があるため、今はカードのままだ。
 調査する地下水道は、下水道のような場所をイメージしていたが、臭いはそれほどではない。
 警戒していたが、ハンカチで口を押さえたりせずとも調査できそうだ。
「どうして、こんなにキレイなんだ? いや、臭いのがいいとは言わねえけどよ」
 キョロキョロと辺りを見回しながら千雨が疑問を口にする。
「ここは魔法使い達が隠し通路として使う事もありますからね……。それで、その……ここを通った事が丸わかりだと色々と困る訳で」
「……ああ、なるほど」
 つまり、臭いが残るようでは困るという事だ。日頃から管理されているらしい。
「私こんな道使うくらいなら、堂々と町歩けるGSの方がいいわ……」
「同感です、アスナさん」
「あ、あはは……」
 二人の正直な感想に苦笑いするしかない愛衣。
 それを見て高音は何か言いたげだったが、この道を使いたくない事に関しては同感だったので口ごもってそっぽを向くだけだった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.161


 さて、横島達は地下水道を調査するにあたって、あるひとつの情報に着目していた。
 それは小太郎と犬豪院がパイパーと戦った広い空間の話だ。そこにはパイパーが人々から奪った時間の風船が無数に浮かんでいたという。
 場所は彼等から聞いていたんで、まずはそこへと向かう。
「横島さん、そこが秘密基地って事ですか?」
「いや、そうじゃない」
 話を聞いた横島は、その近くに超一味の隠れ家があるのではないかと考えていた。
「確か、パイパーと戦っている時に、葉加瀬さんが『田中さん』を連れて現れたという話でしたね」
「『田中ハジメ』な」
 パイパー戦で小太郎達と共に戦ったのは「T−ANK−α1」、今回まほら武闘会に現れたのは「T−ANK−α3」である。「2」がどこに行ったのかは謎だ。
「それより問題は、パイパーを倒した後、聡美ちゃんが風船を割るためにドローンを持ってきた事なんだ」
「ああ、金の針で割る子供にした人の時間が入ってた風船……あれ? ドローン? ラジコンだったんじゃ……?」
「時代の流れだな」
「お前ら、メタな話は止めとけ」
 千雨にツっこまれたので話を戻す事にする。
「とにかく! ハカセさんは、ここから徒歩で取りに戻り、さほど時間を掛けずに戻ってこられる場所にドローンを置いていた、そこに拠点があるという事ですね!」
 すかさず入る夕映のフォロー。そう、横島の考えているのは正にそれだった。
 闇雲に探すよりも、パイパーと戦った場所を基点に探した方がいい。という訳で一行は他には目もくれず、真っ直ぐに目的地を目指していた。
「……ちなみに、超が学園都市に金払って地下を借りてるとかは?」
「そんなはずないでしょう。魔法使いの存在は隠匿されているのですから」
 担任の子供先生を思い出すと実際に隠匿できているかどうかは甚だ疑問だったが、千雨は空気を読んでスルーした。
 とりあえず、実際に隠れ家があれば遠慮なく踏み込めるというのが重要だ。
 超は現在まほら武闘会の主催者として会場から動けない立場にあるので、調査するなら今の内だ。
 この件はタカミチとリカードは既に知っており、次の試合を長引かせてやると張り切っていた。

「ところで千雨さん。あなたのアーティファクトは広域を調査したりはできないんですか?」
「幽霊とか妖怪ならともかく、それ以外は無理だ。あいつらが使ってるならロボじゃないか?」
「ああ、確かに……」
 千雨は、液晶ディスプレイの裏側上部に付いたカメラを指差しながら答える。逆に言えば、目の前にあるものならば詳細な情報まで入手できるのだが。
 ちなみに幽霊・妖怪でも探知できる範囲に限りがあった。それが今の彼女の限界という事だろう。
 そんな話をしながら、一行はエレベーターを使って最短ルートでB5フロアに到着。
「どんだけ広いんだ、ここの地下……」
 横島は呆れ顔だが、それはアスナ達も同様であった。図書館島の地下に入った時も驚いたが、まさかそれ以外にもダンジョンのような地下空間が広がっていたとは。
「フフフ……麻帆良祭が終わったら、こちらを探検するのも面白そうですね……」
「止めとけ、流石にそれは部活だって言い張れないだろうから」
 夕映に何やら火が着いていたので、横島はすかさず鎮火しておく。
 更に歩くと、辺りは更に薄暗くなってきた。エレベーターから離れるにつれて明かりが減っていっているようだ。
 壁に書かれたペイントの案内と地図を見比べていた愛衣が、横島に声を掛ける。
「お兄様、あの角を曲がったところです」
「分かった、皆気を付けて」
 横島が右手に『栄光の手』を出し、左手には文珠、何があってもすぐに対応できる態勢をとる。
 夕映と千雨が高音の側に下がって影に守られ、愛衣は横島とアスナのすぐ後ろに移動。アスナも神通棍を出して準備完了だ。
 そしてまず横島が一歩踏み出したその時、曲がり角の向こう側から先に人影が現れた。
「えっ、なんでここに?」
 その姿を見て、アスナが疑問を口にする。
 そう、そこに立っていたのは長い髪をオールバックにして、サングラスを掛けた大男。タートルネックのセーターの上にジャンパーを着ている。
 間違いない、まほら武闘会に出場していた『田中さん』だ。
 武闘会で敗北した彼は、真名に胴体を破壊されて動けないはずだ。修理したとしても早過ぎる。そう疑問に思っていると、彼の後ろからもう一人の人物が姿を現す。
「……えっ?」
 『田中さん』だ。もう一人の『田中さん』が現れた。
 更に一人、もう一人と、合わせて五人の『田中さん』が一行の前に現れる。
 アスナ達が戸惑っている間に『田中さん』達は、一斉に口からビームを発射。それが例の『脱げビーム』だと気付いた横島は、咄嗟に『鏡』の文字を込めた文珠を投げてそれを反射。
 跳ね返ったビームは『田中さん』の衣服を吹き飛ばすが、中から現れたのは金属フレームに包まれた機械の身体だった。
「ロボだこれーーーっ!?」
 具体的にいうと、今の身体になる前の茶々丸よりもロボロボである。
 『田中さん』達は、千切れた衣服の破片を巻き込んだのか動きを鈍らせている。
 ここで真っ先に動いたのは横島。すぐさま『栄光の手』を消すと、二つ目の文珠を出し『爆』の文字を込めて投げつけた。
 先頭の『田中さん』に触れると同時に溢れ出す爆炎。横島はアスナと愛衣を抱き寄せて庇うが、高音が影を使ってフォローしたため炎が三人に届く事は無かった。
「横島君、無茶しないで!」
「助かった! でもあれ、絶対普通の霊力効かないぞ!!」
 後に残ったのは一部パーツだけを残した五体分の『田中さんだったもの』。真名が言っていた通りいささか精神衛生上よろしくない姿になっているが、それが機械の塊である事はハッキリと分かる。
 横島の言う通り、この手の相手に霊力はほとんど効かない。物理的な力で叩くというのは正しい判断だった。
「って、また来た!?」
「こちらにも!?」
 しかも曲がり角の向こうからも背後からも更に十人以上の『田中さん』が現れ、横島は調査どころではないと判断。すぐさま逃げの選択をする。
「皆、逃げるぞ! 夕映は俺の背中に!」
「は、はい!」
 夕映が背中に飛びつき、しがみついたのを確認した横島は、すぐさま千雨を小脇に抱える。
「横島君、こっちの方が数が多い!」
「じゃあ、前だな!」
「お願い! こっちは使い魔を足止めにするわ!」
 高音が後方に影の使い魔を召喚した事を確認した横島は、再び前方の『田中さん』達を『爆』の文珠で吹き飛ばす。
 しかし一体が爆炎を逃れて掴みかかってきた。
「『来たれ(アデアット)』!」
 すかさず飛び出したのは、神通棍を『ハマノツルギ(エンシス・エクソルキザンス)』に持ち換えたアスナ。ハリセン状態ではなく大剣の姿で召喚されたそれで、すれ違いざまに胴体を一閃。『田中さん』を真っ二つにする。
「行くぞ! 真っ直ぐだ!!」
 横島は嫌な予感がしたため、今は目的地に向かわず逃げる事を決断。
 案の定、曲がり角の向こう側には雲霞の如く『田中さん』がひしめいていたが、愛衣が『紅き焔(フラグランティア・ルビカンス)』を通路に撃ち込んで先頭集団を粉砕。
 そして影の使い魔達が時間を稼いでくれている間に、一行は全速力でその場を離脱した。



 一方別ルートの刀子達は、やはり脱げビームの脅威に晒されていた。
 しかし、幸いにも霊も斬れるがロボでも斬れる『神鳴流』のおかげで押し進む事ができている。
「いや、これもう帰りません? 明らかに戦力不足ですって」
 やる気の無い美空も、シャークティが一緒では逃げる事ができず、シスター服は既にボロボロ。下着も露わになっていた。
 一応彼女の名誉のために何度かココネを庇ったと言っておく。
 そのココネもベールとスカートが吹き飛び、パンツが丸見え状態だ。
 大人の女性二人は流石というべきか、二人よりははるかにマシな状態だったが、それでも完全回避とはいかず、服の所々が吹き飛ばされている。かえって際どくなっているのは言わぬが花だ。
「そういう訳にもいかないでしょう。超鈴音がまほら武闘会で動けない今がチャンスなのですから」
 それはともかく、刀子もシャークティも撤退には首を縦に振らなかった。二人もこのタイミングを逃してはならないと考えているようだ。
 こちらもそのまま突き進んでいく。刀子のおかげで敵を一掃するのが早く、横島達より余裕をもって進めるのが救いだろう。
 おかげで美空が愚痴る余裕もあるのは、痛し痒しだが。
「絶対ヤバいですって、何がヤバいって、こんな格好で横島さんとどっかでバッタリ会っちゃったらどうするんですか」
「ミソラ、うるさい」
 ココネが止めようとするが、止まらない。
 なんだかんだといって美空の感覚は一般人寄り、羞恥心も同様なのだ。
 アスナ達のような好意はなくとも、横島の事を憎からず思っており、良き友人だと思っている。
 そんな男性の前にほぼ下着姿で出たくない。そう考える彼女の感性は、アスナ達よりよっぽど真っ当であった。
「いや無理! この格好で横島さんの前に出るのは絶対無理! せめて着替え取りに帰らせて! 私は、二人みたいに婚期焦ってないから!!」
 ただし一言多かったため、シャークティのゲンコツを食らう派目になったが。
 かくいうシャークティも内心この状態で横島と会ったらどうしようと思っていたが、任務のためならそれを抑え込む事ができた。
 流石に任務中に飛びかかってきたりはしないだろうと思うぐらいには、彼を信用していたりする。
 ココネについては別の意味で今更だ。彼女は霊力供給の修行を受けて毎晩あふんあふん言わされている身なので。きっと会えば平然と彼に駆け寄るだろう。嬉しそうに微笑むみたいなレアな表情も見られるかも知れない。
「見られたら責任取ってもらうというのも……」
 そして刀子は、何やら企み顔を浮かべていた。
 それを見て美空は何か言いたげだったが、何も言わずに視線を逸らす。彼女は空気の読める子であった。





つづく


あとがき

 麻帆良学園都市の地下水道は意外ときれい。
 魔法使い達の隠し通路として使われている。

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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