topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.176
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「それじゃ俺達は鈴音を探しに行くから」
「兄ちゃん、こっちは任せて!」
 レーベンシュルト城を出たところで、裕奈チーム、木乃香チーム、それに刀子とシャークティの魔法先生達は『学園防衛魔法騎士団』に参加するため会場へと移動する。バス停からは横島達とは別行動だ。
 裕奈チームは参加者に混じり、木乃香チームは運営側の裏方として救護班を手伝う事になっている。学園側と既に話はついているので、このまま会場に行けばいい。
 裕奈達も鈴音の事は気になっているが、『学園防衛魔法騎士団』も鈴音とフェイトによる襲撃の阻止、ひいては儀式場の完成阻止を目的としている。こちらも放っておく訳にはいかない。
 鈴音の事は横島達に任せ、自分達はやれる事をやる。
 彼女達もまた決戦へと赴こうとしていた。
「子守は私に任せて、二人はがんばってね!」
「美空、またそうやってサボる気じゃ……」
「アキラ、ストップ。大丈夫だから」
「そう?」
「風香と史伽も一緒だったら、サボるどころじゃないって」
「……ああ」
 美空は嫌な予感がして見てみると、そこにはやる気満々の風香と史伽、そしてそれに感化されたココネ。フードの猫耳を揺らして走り回る三人の姿があった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.176


「つ、疲れた……」
 世界樹前広場に設営された会場に到着するまでに美空は疲れてしまっていた。
 放っておくと、すぐにどこかに行ってしまいそうな子供達。いつもおとなしいココネを基準に考えていた彼女は三人の想定以上のアクティブさに驚かされた。すぐに横島の下で霊力供給を受けていた影響だと気付いたが後の祭り。
 彼の修行でマイト数が増すという事は、すなわち生命力が強くなりしぶとくなったという事。それは体力が増してタフになったと言い換える事もできる。
 その結果が美空も疲れさせる子供達の元気さである。三人中二人は同級生である事は触れないでおこう。
「わ、私も受けとくべきだったかな……横島さんの修行……」
「私が言うのもなんだけど……軽い気持ちで受けていいものじゃないと思うよ?」
「なんだよねー。自分でもやったらドハマりしそうな気がするしー」
 そう言って笑う美空。ハマっている自覚のある刀子がスッと視線を逸らし、その姿をシャークティがジト目で見ていた。
「ほな、ウチらは向こうやね」
「そ、そうね、行きましょうか」
 誤魔化すためか木乃香の言葉に乗っかりスタスタと歩き出す刀子。
 ここで裏方として参加する木乃香チームと、ヒーローユニットになる魔法先生達、運営側メンバーと別れ、裕奈、アキラ、美空、風香、史伽、ココネの六人が残った。
 六人は参加者側に混じるのだが、参加申し込みの受付には既に参加希望者達が長い行列を作っていた。
 申し込みを終えて武器を受け取った者達は、ほとんどが学園側から貸し出される魔法使いの帽子とローブに身を包み、同じく貸してもらった武器を手にしている。
 コスプレをしている者は少なく、その分裕奈達は目立っている。特に中学生離れした長身を鎧に包むアキラと、中学生離れしたスタイルを毛皮のレオタードのような露出度高めの衣装に包む裕奈が目を引いていた。
 裕奈達は既に参加を申し込んでいる形になっているため、そちらの行列は無視して運営側が用意した武器『対非生命型魔力駆動体特殊魔装具』を受け取る。
 そのデザインはどこか可愛らしく、おもちゃのようにも見えた。この防衛作戦に参加する一般生徒達は、これが本物の武器だとは思わないだろう。
 もっとも生物にはまったく効果が無いものなので、非生命型魔力駆動体以外にはおもちゃ同然である事も確かなのだが。
 しかし形状は銃型、杖型と様々な種類があり、それによって射程距離や効果範囲が異なるが、どれも当たれば効果があるのは変わらないので趣味で選んでしまっても問題はないだろう。
 ちなみに、これだけ多種多様なタイプを用意できたのは、ひとえにメガロメセンブリアの元老院議員リカードが積極的に動いてくれたおかげだ。
 早い内に鈴音のロボット軍団の存在に気付いて動き始めていた事も大きいだろう。リカードがいても時間が無ければこれだけの数は揃えられなかったはずだ。
 そんなリカードの尽力で揃えられた武器の中から、真っ先に片手で使えるサイズの拳銃を選んだのは風香と史伽。サイズに負けないぐらいファンシーなデザインだ。
 次に選んだのはココネ、使い慣れているという理由でネギも予備に使っている小さい杖を選んだ。先端に翼をモチーフにした飾りがついた杖だ。これは先端の飾りから光線が出るようになっている。
 同じく魔法生徒である美空も杖を選ぶかと思いきや、こちらは大きめの拳銃を二つ持ち、二丁拳銃で暴れるつもりのようだ。
「反動は無さそうだし、格好良さ優先って事で♪ あ、数に余裕はあるらしいからココネ達も予備を持っといた方がいいよ」
「……分かった」
 喋りながら更に二丁の銃を借り腰に下げる美空。それに倣いココネは折り畳みができるタイプの杖を二本借り、風香と史伽ももう一丁の拳銃を借りた。
「じゃあ、私はこれで!」
 裕奈が選んだのは……なんと銃は銃でもアサルトライフルだった。
 見た目が格好良いという事で参加者の中でも男子生徒達に人気のそれ。裕奈が選んだのも似たような理由だろう。
 美空の銃よりも大きく、見た目通りに重いのだが、見た目から使い方、それを使って格好良く活躍する姿がイメージしやすいのか、重さに負けずに選んでいる者が多かった。
 流石にもう一丁持ち歩く事は難しそうだったので、裕奈は美空と同じ拳銃を二丁予備として持つ事にする。
「アキラもこれどう?」
「いや、私は……」
 最後にアキラは杖タイプを選んだ。ココネが選んだ短いタイプではなく、1m以上はある長い杖だ。本物でなくても銃を持つのは怖かったようだ。
 こちらは射程距離が長く、効果範囲も広い。SFに登場するビームバズーカといったところだろうか。アサルトライフルのように連射はできないが、一発で大勢を巻き込む事ができる。
 その分大きく、杖の見た目の割にはアサルトライフル以上に重いのが欠点だ。
 そんな物でもアキラは軽々と振り回せたので、その場にあった中で一番大きい杖を選んだ。広範囲を攻撃できるなら、皆を守りやすいと考えているのだろう。
 こちらはココネと同じ、折り畳み式の杖を予備として懐に仕舞い込んだ。

 そうして装備を整えて外に出ると、桜子、美砂、円の三人が「おーい」と手を振りながら近付いてきた。
 三人は、魔法使いの白い帽子とローブ、それにココネと同じ短い杖と、お揃いの装備だ。
 今日は三人で麻帆良祭最終日を楽しんでいた彼女達だったが『学園防衛魔法騎士団』のチラシを見て、クライマックスイベントだと参加する事にしたらしい。
「その格好、もしかして三人も参加するの?」
「もっちろん!」
「せっかくのクライマックスイベントだしね〜」
 元気よく返事をする彼女達は、学園側から配られているローブとは異なる出で立ちの一行を見て目を輝かせる。
「そっちこそ派手な格好しちゃってぇ、さては事前に話を聞いて用意してたわね」
「いや、多分聞いた時間はそんなに変わらないと思うよ」
 正確には「聞いた時間は早くないが、その後レーベンスシュルト城で1日時間を使って用意した」である。
「敵のロボット軍団って、どんなのだろうね〜?」
 三人は純粋にイベントを楽しみにしているようだ。
「あ〜、三人ともちょっとこっち来てくれる?」
 彼女達も3−Aの仲間、魔法使いの事については知らされている。
 この件についても知らせておくべきだろうと、裕奈達は三人を人気の少ないところへ連れていき、彼女達にも事情を説明した。
「……超、じゃなくて鈴音さんが横島さんの子供ってマジ?」
 彼女達が一番に食いついたのは、やはり鈴音と横島の親子関係だった。
 コスモプロセッサについては説明している裕奈達もしっかり理解できていないのだから、彼女達も理解できないのは仕方がない。
 とりあえず世界樹コスモプロセッサ化が成功するとヤバいので、ロボット軍団を阻止しなければいけない事と、それが別行動をしている横島達、ネギ達の助けになる事だけは理解できた。
 こうなると三人も遊びではなく真剣になる。
「で、そのロボット軍について、発表されてる以上の情報はあるの?」
「まほら武闘会……は三人は見てないか、それに出てた『田中さん』ってロボットが軍団になって攻めて来ると思うよ」
「えっ、同じ顔の集団が来るの?」
「なにそれ怖い」
「あと、多脚戦車ってのもいるよ。こっちは地下水道で見たヤツだけど」
「麻帆良の地下って何があるのよ……」
 割と常識人である美砂と円は頭を抱える。
「全部揃って脱げビーム撃ってくるんだって」
「なにそれ!?」
「まずいじゃん!?」
 声を上げた二人は桜子を連れて受付に行き、武器をライフルタイプに変更して戻ってきた。速射性には劣るが射程が長いタイプの武器だ。
「これなら前に出ずに戦えるはず……」
 脱げビームが怖かったのだろう。学園生徒のほとんどが参加するという事は、男性生徒もそれだけ参加する。そこで脱げるのは避けたいのは当然の反応である。

「それなら地図も用意してた方がいいよ。細かく載ってるヤツ」
「どういう事? 美空」
「いや、その射程活かすなら、どこから撃つかが大事じゃん」
 敵が現れたら、それに合わせて狙撃場所を考えないといけないと美空は説明する。可能であれば待ち伏せした方がいいと。
 彼女はサボりたがりとはいえ、実戦を経験しているれっきとした魔法生徒だ。この手の話については一日の長があった。
 その話を聞いた円は、まほら祭のパンフレットを取り出し、その中にあった地図を皆に見せる。
「敵ってどっから来るの?」
「いや、イベントにしてるけど、鈴音達はマジで攻めてくるだろうから分かんない」
「鈴音、天才だからなぁ〜」
 下手に裏をかこうとしても、更にその裏をかかれてしまいそうだ。
 地図を囲んでどうしたものかと頭を捻っていた面々だったが、いつの間にか全員の視線がある一点に集まっていた。
「へっ? 私?」
 地図ではなく桜子に。
「鈴りんの裏をかくなら……」
「この手しかないね」
 裕奈と美砂が顔を見合わせてコクリと頷き合う。
 鈴音の「天才」に対抗できるのは桜子の「幸運」しかない。そう彼女達が考えた作戦は「桜子の勘任せ」である。
「さぁ!」
「選ぶですー!」
 風香と史伽で地図を広げて桜子に見せた。
 桜子も任されたからには真剣な顔で地図とにらめっこしながら考える。
「スナイパーって高いところから撃つんだよね、『ちょろいもんだぜ』って」
「ちょろいかどうかはともかく、高い方が有利……かな?」
「ん〜……じゃあ、ここ〜♪」
 そう言って桜子が特に考えもせずに指差したのは、麻帆良学園都市内にある湖にほど近い高台だった。





つづく


あとがき

 本編中でも触れていますが、原作より数も種類も多く『対非生命型魔力駆動体特殊魔装具』が集まっています。
 原作と違ってメガロメセンブリアの元老院議員がいて、原作よりも早くに動き出したおかげですね。

 超鈴音に関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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