topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.177
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「あ〜、休憩〜」
 高台に到着した裕奈達一行。美空は早速ドカッとベンチに腰を下ろした。
「美空、おっさんみたいよ」
「ていうか、ミニスカで足広げて座るの止めなさいよ」
「おっと」
 円と美砂に指摘され、美空はサッと足を閉じる。
 ここは湖のほとりにほど近い場所にある高台だ。柵から身を乗り出して覗けば、眼下には湖のほとりに集まるローブを着て帽子を被った生徒達の姿が見えた。彼等も『学園防衛魔法騎士団』の参加者だ。
 周りを見てみると、まばらだが他の生徒達の姿が見える。美空と目が合うと、男子生徒達は慌てて視線を逸らした。
 よく見てみると、周りの生徒は男子が多い。そのほとんどがチラチラとこちらの様子を窺っている。その多くが見ているのは美空ではない。
「ああ、そういう事ね……」
 その様子を見て美空は察した。おそらく彼等が見ていたのは柵の側で湖を見ている二人。健康的な肢体を水着のような装束に包む裕奈と、その長身もあいまって鎧姿の麗人となったアキラだ。
 裕奈達一行は世界樹前広場で武器『対非生命型魔力駆動体特殊魔装具』を受け取ってきた。
 そこで桜子達と会いここまで移動してきたのだが、その場にいた参加者達が裕奈とアキラに釣られてついて来てしまったのだろう。同じ参加者が行く場所なら問題ないだろうと。
「ナンパしてこないだけ利口かなぁ。あの二人は横島さんにゾッコンだし」
 苦笑する美空は無意識なのだろう、いったん閉じた足を更にあぐらにしていたが、ついてきた生徒達の一部は彼女を見ている事には気付いていなかった。

 なおココネが前に立ってガードしていたので、彼等にパンツは見えていない。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.177


 湖のほとりを見下ろしながら、裕奈が疑問を口にする。
「なんであんなところに集まってんだろ? 防衛ポイントって世界樹前広場だよね?」
「ああ、ネットの方で敵は湖から攻めてくるって噂が流れてるみたいよ」
 それに答えたのは美砂。お祭りには真剣なようで、しっかりと情報収集をしているようだ。
「あ〜、なるほど。ここからだと湖に敵が来たら丸見えだね」
「桜子は知ってたの?」
「ほえ?」
 どうやら知らなかったようだ。美砂曰く、その情報が出始めたのはここに移動し始めた後の事らしい。
「でも、遠くから撃つ分には有利だよね、ここ」
「桜子に合わせてスナイパーライフルもらってて良かったぁ」
「重いけどね」
「まぁまぁ、来るまでまだ時間あるだろうし、座って待っとこうよ」
 桜子達もベンチに腰掛けるが、そこに携帯電話で連絡を取っていたアキラが深刻そうな顔で近付いてきた。
「……攻撃、早まるかもしれないって」
「どういう事?」
 怪訝そうな顔をする円にアキラは続ける。
「鈴音さん達がこのイベントの事を見ていたら、攻撃を早めるかもしれないって」
「あ〜……」
 儀式する時間が決まっていて、それを妨害する勢力が増強されたならば、儀式の時間に間に合うよう攻撃開始を早める可能性がある。先程アキラが受けた連絡は、その旨を伝えるものだった。
「あともうひとつ、追加情報」
 先程美砂が言っていた湖から敵が来るという情報だが、これは学園側が流したものではないらしい。そのため学園長は、それが鈴音が流した情報だと判断した。
 考えられる理由は一つ。イベント参加者を誘き寄せるためだ。
「……罠って事?」
 不機嫌そうな美砂。それが罠だとすれば、鈴音は一般生徒達を嵌めようとしている事になる。友人として、そう考えるのははばかられた。
「逆に、一般生徒達を危険な場所から引き離そうとしてる可能性もあるって」
「湖から攻めてくるのはウソって事?」
「いや、本当に危ないヤツから引き離すのが目的……だと思う」
 鈴音達の本命は、儀式パーツとなる究極の魔体モドキだ。あの巨体が動けば足下でどれだけの被害が出るか分からない。だから噂を流して、その移動ルートから引き離した。
 好意的解釈だが、その可能性が高いというのが学園長の見解だった。
 そのため湖からロボット軍団が攻めてくるのは間違いないだろうという事で、今も裕奈達が湖を見張っている。
 そんな彼女達の動きは周囲の目を引くようで、男子生徒達のチラチラとした視線は途切れることがなかった。


 空が夕暮れに染まる頃、湖面に変化が起きた。
「なにあれ!?」
「光ってますー!」
 真っ先に気付いたのは風香と史伽。彼女達が指差す先には湖面から無数の光の柱が立っていた。湖のほとりを見てみると、集まっている生徒達もそれを見てざわついている。
 裕奈達は、その柱に見覚えがあった。
「あれ、レーベンスシュルト城の……!」
 そう、魔法の水晶球に出入りする時に発生する転移の光だ。
 つまり、今湖の中では鈴音のロボット軍団が次々に転移してきている事になる。
 それを肯定するかのように上陸してくる『田中さん』軍団。まほら武闘会に出場していた個体とは異なり衣服は着ておらず、剥き出しのボディはメタリックなボディスーツのようにも見える。防御面で弱くなっているという事は無さそうだ。
 その後ろから更に大きな多脚ロボも姿を現した。湖面が見えなくなるぐらいの大軍勢だ。

 先制攻撃を仕掛けたのはロボット軍団だった。
 待ち構えていた生徒達の先頭集団にビームが炸裂、ローブだけでなく、その下に着ていた服ごと吹き飛ばされたらしく大騒ぎになっている。
「なにあれ?」
 その様子を見ていた円は、自分があの場所にいたらと考えて冷や汗をたらす。
「あれが脱げビームかー、アスナ達も地下でアレに狙われたって聞いたけど」
「脱げビームって……」
「いや、他に言いようがないし」
 裕奈にそう言われると、円も納得するしかない。彼女も他の名前は思いつかなかった。
 それはともかく、突然の出来事に湖のほとりの生徒達は混乱している。その隙を逃さず次々に上陸してくるロボット軍団。『田中さん』達は大きく口を開いて脱げビームを発射しようとする。
「皆っ!」
 しかし裕奈がそれを許さなかった。
 彼女の声に合わせて柵の側に集まっていた生徒達が揃ってスナイパーライフルを構える。
「撃てーーーっ!!」
 一斉に放たれた魔力弾が『田中さん』を襲う。
 射手がほとんど素人のため全弾命中とはいかないが、人間に当たっても効果は無く、流れ弾でも非生命型魔力駆動体であれば一撃必殺というものなため問題は無い。
 魔力弾を食らった『田中さん』は、目からも口からも光を失い倒れ伏す。
「どんどん撃っちゃえーーーっ!!」
 裕奈達は手を休めず更に撃ち続け、魔力弾は『田中さん』と多脚ロボを次々に停止させていく。
 高台の上からの奇襲にロボット軍団は対応できず、先陣は全て物言わぬガラクタと化した。
 その間に混乱していたほとりの生徒達は落ち着きを取り戻し、脱げビームを食らった者達もローブと武器を改めて受け取り態勢を整えていた。
 慌てて戻ってきた者達の中にはローブの下は全裸といういかにも麻帆良らしい出で立ちになっている者もいるが、それについてはスルーしておこう。
「高台の連中に負けてられないぞ!」
「おぉっ!?」
「キャーっ!!」
 なお、そういう者は男女問わずにいたとだけいっておく。
 何にせよ、不意打ちの形で始まった一般生徒達とロボット軍団の戦いだったが、序盤は裕奈達の活躍により生徒達の優勢で進んでいった。

「いや〜、上手くいったねぇ」
 ほとりの生徒達の奮戦を見下ろしながら一段落ついていた。
 その間に一部のロボットが高台を登ろうとしてくるが、それは裕奈とアキラで撃墜していく。
「みんな! 今の内に武器を交換しちゃって!」
 高台の生徒達はエネルギー切れになったライフルを予備のものと取り替えていた。
 生徒の数は先程よりも多くなっており、予備の武器も豊富だ。状況は悪くない。
 こんな状況になっているのには訳がある。それは裕奈達に釣られて高台に来ていた男子生徒達が裕奈たちの装備に着目したせいだ。裕奈たちの戦術が高所からの狙撃にあると気づいた男子達は、大急ぎで受付に戻り、武器をスナイパーライフルと交換してきたのだ。
 ここでまたもうひとつの動きが起きた。
 男子生徒達が集団で受付に戻ってきてスナイパーライフルと交換していく姿を受付近くにいた参加者達に目撃されたのだが、更にそれを見て「向こうの方が有利なのではないか?」と考えた面々が同様にスナイパーライフルを担いで高台にやってきたのである。
 その結果現れたのだ、湖から現れるロボット軍団を狙撃する、高台に陣取るスナイパー軍団が。
 学園側もさるもので、密かに参加させていた一部の魔法生徒に急遽命じ、高台に大量のスナイパ―ライフルを持ち込ませていたりする。おかげで彼等は予備の武器には事欠かなかった。
 湖のほとりでは生徒達とロボット軍団の戦いが始まっている。『対非生命型魔力駆動体特殊魔装具』なのだから乱戦の中に撃ち込んでも問題は無いが、有効打は減るだろう。
 少し遠くを見ると今も湖の中に次々転移の光が立ち上っている。
「後続狙った方がポイント稼げそうね」
「当たりしかいないしね」
「よーっし、撃っちゃうよー♪」
 それを見た円達は、後続狙いに切り替える事にした。周りの男子生徒達もそちらの方が稼ぎやすいと後に続く。
 ここまで来るとロボット軍団も高台を落とそうと攻撃を仕掛けてくるが、それから皆を守るのは裕奈達だ。
 アキラが光線を放って多脚ロボを薙ぎ払い、裕奈は逃れた『田中さん』軍団に飛び込み、アサルトライフルで蹴散らしていく。
「……ミソラも行く」
「しょうがないにゃあ……」
 ココネに促された美空はアーティファクトのシューズを履き、縦横無尽に駆け回った。翻弄された『田中さん』達はこぞって脱げビームを撃ち込むが、美空の俊足はそれを尽くかわしていく。撃墜数こそ少ないものの、彼女は立派に囮の役割を果たしていた。
 この高台部隊の活躍により、後続は数を減らしていき、前線に殺到する敵の数は減少。結果として湖のほとりでの戦いは生徒達の優勢を維持したまま進んでいく事になる。
「アキラ、向こうに撃って!」
「分かった! 美空をお願い!」
「裕奈、早く助けに来て〜っ!!」
 その戦いを支え続けるのが裕奈、アキラ、美空の三人の少女達であり、特に裕奈とアキラは近付くロボット軍団をまとめて蹴散らした撃墜王(エース)となるだろう。
 共に高台で戦った男子生徒達から勝利の女神のように見られる事は間違いない。
「えっ、ナンパ? 私には兄ちゃんがいるからなぁ〜。あ、ホントに兄ちゃんじゃないからね?」
「わ、私、好きな人がいるから……」
 なお隙を見てナンパしようとした者達が次々に撃墜され、別の意味でも撃墜王になるのはもう少し先の話である。





つづく


あとがき

 超鈴音に関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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