topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.182
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 人狼と化した犬豪院ポチが力任せに道を切り開く。
 屋根の上から飛び掛かってくる魔物達は、豪徳寺の漢魂と中村の裂空掌で撃墜。
 それらをかいくぐってネギに近付くものは、小太郎の爪と山下の3D柔術が迎撃した。
 ポチと小太郎はもちろんのこと、豪徳寺達も魔物相手に互角以上に戦えている。
「へへっ、地獄の猛特訓は無駄じゃなかったみたいだな!」
 肩の上のカモが得意気に呟く。ネギもパーティの成長に確かな手応えを感じていた。
 ここでふと、山下が歩みを止めて周囲を見回す。
「それにしても、人が少な過ぎないか……?」
「麻帆良祭最終日だし、こんなもんじゃね?」
「それにしてもなんというか……人の気配が全く感じられない」
 大した事無さげな中村に反論する山下。
 その会話を聞いてネギも周囲を探ってみるが、確かに人の気配が全く感じられない。麻帆良祭中は会場以外人気が無くなるものだが、それにしても異常なほどに静かだった。
「これ、もしかして……」
「その通りでさぁ、アニキ。多分、人払いの結界、その類が張られてるぜ」
 普段ネギ達魔法使いが使うものとは少々異なるらしく、意識して探るまで気付く事ができなかった。魔法使いに対する隠蔽能力も備えた改良型の結界らしい。
「つまりフェイトというヤツが意図的に人払いしていると?」
「『究極の魔体』モドキを囮にして、こっちは気付かれない内にやっちまうつもりだったのかもな」
「この結界と合わせれば、可能だと思います」
「チッ! 相変わらずこそこそした野郎やで!」
 京都では一時期行動を共にしていた小太郎は、フェイトへの怒りを露わにした。
 元々こそこそした事を好まないというのもあるが、それよりもフェイト個人が気に入らないというのが大きそうだ。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.182


 魔物は次々に現れるが、それらを撃破しながら突き進んでいくと、一行はこぢんまりとした公園に出た。遊具は少なく、ただの広場といった方が相応しそうだ。
「地図によると、この辺りじゃ唯一の公園みたいだな。だが、ここが目的じゃねえ。アニキの予想地点はもうちょい先だぜ」
 見通しはいいが、それで魔物の襲撃が収まる訳ではない。一行はそのまま通り抜けて行こうとする。
「ッ! 皆さん、待ってください!」
 しかし、ここでネギは悪寒を感じ、皆を呼び止めた。
 一瞬ネギの方を見た一同は、すぐさま周囲を警戒。
「上や!」
 次の瞬間、頭上から巨大な石柱が迫ってきた。ネギ達は、すぐさま飛び退いて回避。石柱は公園の地面に突き刺さる。
「迎撃してきたみたいだね……」
「もしくは、あいつも目的地に向かう途中だったのかもな」
 態勢を整え、杖を構えたネギの視線の先には、宙に浮かぶ白髪の少年・フェイトの姿があった。
「こちらから出向いてやったんだよ。儀式の場で暴れられても困るからね」
 フェイトがそう言うと、周囲で魔物の気配が膨れ上がる。
 それを聞いてネギは納得する。コスモプロセッサほどのものを再現しようとするならば、儀式もそれだけ大掛かりなものになる。『究極の魔体』モドキとフェイトが配置に付くだけでなく、現場にも何かしらの仕掛けを施しているのは十分考えられるだろう。
 そしてすぐさまもうひとつの事を考える。現地の仕掛けを破壊する事でも儀式を止める事ができるのではないかと。
 カモに目配せをするとそちらも同じ事を考えていたようで、携帯電話を手に肩から飛び降りた。
 そのまま豪徳寺のリーゼントの上に駆け上がり、そこで電話を掛ける。
「フェイトは僕が足止めします。皆さんは、ここを切り抜けて当初の目的地へ。何か儀式の準備がされているはずです」
「へっへっへっ、学園長にも連絡しとくぜ!」
 カモの連絡相手は学園長。フェイトの目的地だけでなく、他の五つの方も攻撃してもらうためだ。
「チッ……!」
「させない!」
 フェイトが再度魔法を放とうとするが、ネギが飛行魔法で飛び掛かり妨害。そのまま空中戦に突入する。
 それを皮切りに魔物達が豪徳寺達にも襲い掛かり、なし崩し的に戦闘が始まった。
 これまでよりも明らかに魔物の数が増えており、そして一体一体が強そうに見える。これ以上先には進ませないという明確な意志が感じられた。
「また分身……じゃないやろな?」
「その割にゃ必死に止めようとしているような……もしやこいつ本体か?」

 周囲を見回しカモは考える。小太郎と豪徳寺の言う通り、フェイトは明らかに自分達をここに釘付けにしようとしている。自分達が目的地に到着する前に、ここで片付けてしまおうと考えている。
 それを踏まえて考えるに、目の前のフェイトは本体の可能性が高い。分身では今のネギ達を止められないと考えたのかもしれない。
 更にカモは考える。ここでフェイトが嫌がる事をしようと考えるならば、彼の目的地の方を狙うのはアリではないだろうかと。
 しかし、それは簡単な話ではない。
「くっそー、なんとかこの包囲網を抜けられたらなぁ!」
「できたとしても、ネギ君を一人置いていく訳にはいかんだろう」
 下駄型アーティファクト『金鷹』を脱ぎ、手に装着しながら豪徳寺が言う。
 確かにその通りなのだが、カモは諦めきれない。儀式を進めるはずのフェイトがここに来た。魔物だけでは止められないと判断したのだろう。
 これはチャンスだ。『究極の魔体』モドキを一体破壊した事で生まれた隙だ。
 魔法陣の重要ポイントが無防備という事はないだろう。しかし、目の前のフェイトを相手にするよりはマシなはずだ。カモとしてはこの機を逃さずに儀式の魔法陣を破壊してしまいたかった。
 一番ここから離脱しやすいのは空を飛べるネギだが、彼はフェイトとの闘いに集中している。二人は激しい戦いを繰り広げ、割って入るも難しそうだ。下手に援護しようものならネギに当たりかねない。
 これでは修学旅行の時のように彼一人を先行させる事はできないだろう。
「中村、上だ!」
「おぉっとぉ!?」
 ポチの声で中村が咄嗟にその場を飛び退く。直後彼がいた場所に石柱が突き刺さった。ネギ達の戦いの流れ弾だ。
 ネギが離脱するとフェイトがフリーになってしまう。空を飛べない面々では一方的に攻撃されるばかりだろう。やはりネギはこの場から動かせないだろう。
 そして魔物の攻撃も激しい。こちらにも戦力を残しておかないと、残った者が魔物に倒され、その後ネギが袋叩きにされるに違いない。
 しかし、送り出すならばそれ相応の実力が求められる。何故なら、そこまで無防備になるならばフェイトがこうして迎撃しにくるはずがないからだ。
 戦況を見ながら、カモは決断する。
「……となると、これしかねえか!」
 豪徳寺のリーゼントから飛び降り、魔物の足の間を潜り抜けて小太郎に飛びつくカモ。そのまま肩まで登ると、声を張り上げる。
「犬豪院のダンナと小太郎! 二人でここを突破して魔法陣を壊しに行っちまえ!!」
「はぁ!? いや、ここ放っとけんやろ!?」
 いきなり耳元でされた提案に、小太郎が素っ頓狂な声を上げた。
 しかしカモは本気も本気、ネギ以外で少数精鋭を送り出すとなると、やはり人狼族と狗であるこの二人になるのだ。
「豪徳寺の兄さん達だって、そう簡単に負けやしねえ! それより魔法陣からフェイトが離れているこのチャンスを逃す手はねえぜ!!」
「させないよ……!」
「それはこっちのセリフだ、フェイト!」
 フェイトがその言葉を遮ろうと魔法を放つが、ネギが『雷の斧(ディオス・テュコス)』を発動させた杖で打ち払う。雷の刃を煌めかせる杖はさながらポールアックスのようであり、ネギはそのままフェイトに斬りかかった。
 その動きは実戦さながらの修行で鍛えられただけあって様になっており、フェイトに追撃する間も与えない。
 カモは空中戦を続ける二人を見てガッツポーズを取った。
「ほれ見ろ! 奴さんにとっても、俺達に行かれるのはまずいんだよ!」
「……みたいやな」
 こうなると小太郎も納得するしかなかった。
 正直ここから抜け出すのは背を向けて逃げるようで納得がいかないが、本来の目的である儀式の阻止を達成するためには、そうするのが良いという事は理解できる。
 ここは逃げるのではなく、フェイトが阻止しようとした事をやってやる。小太郎はそう自分を納得させた。
 ポチの方も、ここを突破して進むのに異存は無い。豪徳寺、中村、山下の三人も、二人が抜けたからといって負けるつもりはさらさら無かった。
「よし! 俺が道を開くぞ!!」
 豪徳寺が一歩前に出て、腰を落とし気を溜める。
「はぁぁぁぁ! 漢気光線ッ!!」
 そして突き出された両手の『金鷹』から放たれた光線が、射線上の魔物達をまとめて消し飛ばした。
「今やっ!」
「応ッ!」
 カモが小太郎の肩から飛び降り、二人はこじ開けられた隙間を掻い潜るべく駆け出す。
 魔物がそれを阻止しようとするが、先行するポチの爪が、牙が引き裂き、蹴散らしていく。
 そのまま包囲網を突破した二人を魔物達が追おうとするが、それは小太郎が放った狗神と、魔物が二人に気を取られた隙を狙った中村と山下によって阻止。
 それを見たフェイトが再び魔法を撃ち込もうとするが、ネギがそれを見過ごすはずがない。
 一瞬無防備になった背中目掛けて『雷の斧』を振り下ろし、フェイトを地面に叩きつけた。
 その隙に小太郎達は離脱に成功。ネギは空中からその背中を見送る。
「……おっと」
 しかしすぐに意識をフェイトへと戻す。
 油断してはいけない。修行中に身体に叩き込まれた師の教えである。
 リカードからはその心構えを、エヴァからは倒れていても攻撃を仕掛ける容赦の無さを、そして横島からは倒れた振りをして奇襲する様々な方法を学んだネギは、地面に落ちたフェイトが何をしてきても対処できるよう、少し距離を取った場所に降り立った。
「……やってくれたね」
 しばらく倒れていたフェイトだったが、やがて何事も無かったかのように立ち上がった。
 『雷の斧』が背中に直撃したはずだが、ダメージを受けた様子は無い。障壁で防がれてしまったのだろう。
 振り返り、こちらを見つめてくる。その目を見てネギは気付く、ここからが本番だと。
 フェイトは一刻も早くネギ達を片付けて儀式のポイントに戻りたいのだろう。これまで以上の激戦が始まる。
「豪徳寺さん、流れ弾に気を付けてください。気にしている余裕が無くなるかもしれません」
「……分かった。こちらは気にするな。自分達でなんとかする」
 その声に決意の色を感じた豪徳寺は、力強くネギを送り出した。
 対するネギはコクリとうなずくと、杖を握る手に力を込め、フェイトに向けて一歩踏み出した。





つづく


あとがき

 超鈴音、フェイト・アーウェルンクスに関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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