topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.194
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「まさか鈴音さんが横島さんに降伏するとは……」
「妥協点が見つかったという事だろう」
 結局真名は薫と紫穂の監視の下、葵の瞬間移動能力(テレポーテーション)の力を借りてハカセを回収した。
 彼女が隠れていたのは世界樹にほど近い場所。『究極の魔体』モドキが完成すれば、彼女が世界樹の上に立って儀式を発動する予定だったらしい。
「あれ? て事は姉ちゃんも魔法使いなの? そんな眼鏡に白衣なのに」
「魔法も使える科学者ですよ〜」
「流石、麻帆良やな……」
 葵はそう言って感心したが、ハカセは麻帆良の関東魔法協会とは関わりがない。
 麻帆良の環境だからこそ、魔法を学ぶ事ができたのは確かだが、基本的には独学で魔法を学んでいた。茶々丸を生み出した時に魔法の存在を知り、興味を持ったらしい。
 鈴音の協力があったとはいえ、それでコスモプロセッサ化の儀式を行えるレベルの魔法使いになっているあたり、相応の才能があったのだろう。
 ある意味彼女は、書庫に入り込んで独学で魔法を学んでいたネギに近いのかもしれない。

「ともかく、これで私達は脱落だ」
「あとはフェイトがどう出るかですね」
 そう言ってハカセは最後の一体になった『究極の魔体』モドキを見る。
 高畑達が戦っていた場所とは世界樹を挟んで正反対の方向にあるそれは、今もなお歩みを止める事なく魔法陣の頂点へと向かっていた。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.194


 高畑達が他の『究極の魔体』モドキを倒している間に、最後の一体は頂点の間近まで迫っていた。
 雪之丞とピートが駆け付け、止めようと攻撃を仕掛けるが、追加で砲門に札を撃ち込むのがやっとでダメージを与えられていない。
 魔体は二人を無視して進んでいく。一体だけがたどり着いても意味は無いはずなのだが、それでもその歩みが止まる事は無い。
「まだ何か企んでおるのか……?」
 その動きを見て、学園長はつぶやいた。
 高畑達も最後の一体を破壊しようと急行していたが、距離があり過ぎた。魔法使い達の妨害をものともせずに進み続け、そして魔法陣への頂点に到達する。
 空に向かって咆哮をあげる魔体。足元に仕込まれていた魔法陣が光を発し、薄暗くなってきた空に魔体の姿を照らし出した。
 しかし、それ以上は動かず、攻撃を続ける雪之丞達も無視している。
 やはり一体だけがたどり着いても意味が無いのだ。しかし、だからといって終わりではない。フェイトには逆転のための一手が残されていた。
「なんだ……?」
「魔体の頭が……!」
 『究極の魔体』モドキの頭部装甲が左右に開き、内部が剥き出しになる。そこには大きな水晶体の頭部が隠されていた。
「へっ、自分から弱点を晒すとはな!」
 雪之丞はすぐさま頭部に近付き、それを破壊しようとする。
 拳を大きく振りかぶり、渾身の一撃を叩き込もうとする――が、その拳は水晶体から生えた細い腕に掴まれ、止められてしまった。
「なっ!?」
 その手の主は、フェイトだった。水晶体から頭、身体、足と生えてくる。
 しかもそれは一人ではなく、雪之丞の前には既に五人のフェイトが生えてきている。
「こいつ……分身か!?」
 正確には水分身である。頭部の水晶体は他の砲門と同じ魔法を発動させる機能を持っており、中のフェイトはそれを通して水分身を生み出しているのだ。
 腕を掴む手が光り、雪之丞は咄嗟に腕を振り払って距離を取る。
「なっ!?」
 しかし、彼の魔装術に包まれた腕は石化し始めていた。
「下がるんだ、雪之丞! 石化の治療を!」
「……仕方ねえ、後は頼んだぞ」
 ピートの言葉に躊躇した雪之丞だったが、こちらに接近してきている学園長の姿を確認し、援軍が来たならばと退避する事を承諾した。
 その間にも水晶体からは次々にフェイトが生えてきて、既に数十人のフェイトが『究極の魔体』モドキの肩に立っている。
「さて、始めようか……」
 一人の水分身が掌を退避する雪之丞に向ける。
「危ない!」
 フェイトの手から放たれた石化光線を、ピートが手にした破魔札マシンガンで迎撃。光線はばら撒かれた札と接触し、爆発を起こした。
 砲門を塞がれた魔体と違い、水分身のフェイトは問題無く魔法を使える。それがいまや魔体に込められた魔法力を使い百人近くに増えているのだ。
「本体を、中の分霊箱を破壊せねば……!」
「させないよ」
 水分身の一人がそう言うと攻撃が激化する。とても頭部の水晶体には近づけない。
 学園長に続き、横島と澪がコレットの『月の舟』に乗って到着したが、フェイト達は彼の文珠を警戒しているのか、すぐさま数十人が襲い掛かり、彼等を近付けさせない。
 高畑、リカードがそれぞれエミと魔鈴、マリアとテレサを連れて来たが、こちらも同程度のフェイト達によって足止めされていた。
 学園長は水晶体を叩こうとするが、それも水分身に阻まれる。
 水分身は破壊する事ができるが、それ以上のスピードで頭部の水晶体から新しい水分身が生み出されている。
「行け……!」
 そうやって数を増やしたフェイトは、他の魔法陣の頂点と世界樹に向けて水分身軍団を送り出した。水晶体の上で一人が指揮を執っているが、それも水分身だろう。
「さては水分身で儀式を進めるつもりか!?」
「その通り」
「最初から君達に」
「勝ち目は無かったのさ」
 学園長を囲む水分身達が口々に言う。学園長は杖を一閃してそれらを破壊するが、すぐに倍以上の数の水分身に囲まれてしまった。
 『究極の魔体』を動かす魔法力から生み出される無数の水分身、これでは切りが無い。
 他の魔法使い達や美智恵達も水分身との戦いに突入しているが、百人以上のフェイト一人一人が石化という致死性の高い魔法を使ってくるため、戦闘不能となるものが激増している。
 フェイトも魔法陣の完成の方を優先しているのか石化後破壊まではしていないが、加速度的に戦力が失われていき、彼等を止める事はできないでいる。


 世界樹付近でも戦いが始まっていた。
 翼を広げた刹那が中心となって戦い、水分身フェイト達を食い止めている。
 魔法を使い飛んでくるフェイト相手に空中戦を強いられる事になるため、空を飛べない面々は高音の影の使い魔の背に乗る事で対応している。
「おっと、先輩に手出しはさせまへん」
 月詠は器用に使い魔の背から背へと飛び移りながら、刹那の背後から攻撃しようとしていたフェイトを一刀両断にする。
 助けられた刹那は、味方の月詠にまだ慣れないのか戸惑った様子だったが、そこから隙を生じさせる事は無く、二人で互いを守りながら戦い続ける。
「お姉さま、使い魔の数増えてませんか?」
「修業の成果よ!」
 つまり、それだけ横島に霊力を注ぎ込まれてきたという事であるが、言っている本人は気付いていない。
 しかし言われた愛衣は気付いたようで、顔を真っ赤にしながら「そうですね〜」と流しつつアーティファクト『炎の狐』に跨ってフェイトを迎撃しに飛び立っていく。
 なお、かくいう彼女の魔法も以前より強力になっていたりする。もちろん、横島との霊力供給の修業のおかげである。

「行かせるかァッ!!」
 神鳴流の太刀で二人まとめて胴薙ぎにした刹那は、水分身一人一人が京都で戦った時よりも弱くなっていると感じていた。刹那が強くなったというのもあるだろうが、それを踏まえた上での判断だ。
 勝てる。数人一度に来ても、蹴散らす事ができる。戸惑う面もあるが、月詠と一緒ならば十人や二十人で来たとしても負けないだろう。
 だが、途切れる事無く百人以上が来続けるというのはどうしようもない。今は拮抗状態で世界樹への接近は阻止できているが、それも時間の問題だろう。
 状況を変える何かが必要だったが、世界樹を守らなければならない刹那達には、成す術が無かった。


 百人以上のフェイトは、一つの頂点から他の頂点へ最短ルートで進もうとしていたため、観光客も巻き込まれそうになる事態に陥っていた。
 そのため救護班を手伝っていた者の内、千鶴を始めとする一部が観光客の避難誘導に当たっている。
 和美もこれはもう一般人のイベント参加者も避難させねばらないとアナウンスで呼び掛けていた。
 石化を治療してもらったばかりの雪之丞も戦線に復帰し、タイガー、陰念と共にフェイト達との戦闘に突入している。
 そんな中、一人の少女――いや、少女のような大人の女性がフェイトの攻撃に巻き込まれてしまった。

「いやぁぁぁ! 怖いぃぃぃぃぃ!!」
「ちょっ、落ち着いて冥子!?」

 彼女の足下の影が爆発的に盛り上がり、十二の使い魔が飛び出した。
 そう、その少女のような女性は式神使いの六道冥子であった。戦闘には参加せず、冥子のお守りという名目でサボっていた妖狐の少女・タマモが必死に宥めようとしているが、全く効果が無い。
 バサラが勢いよく何十人ものフェイトを吸い込み、アンチラが冥子を止めようと襲い掛かってきたフェイトに向かって逆に飛び掛かり数人まとめて斬り裂いている。
 アジラがフェイトのお株を奪って水分身を石化させたかと思うと、それに驚き動きを止めた別のフェイトにサンチラが巻き付いて電撃を食らわせる。
 クビラが冥子の頭の上でフェイトの動きを見張り、近付こうとする者はハイラが毛針で牽制。
 マコラはフェイトに飛び掛かって見事な関節技を仕掛け、そしてビカラはフェイトに食いついてもぐもぐしていた。
 ここだけで既に百人以上のフェイトが倒されている。ある種の地獄絵図が展開されていた。

 閑話休題。


 そして横島達に遅れてアスナ達も現場に到着した。最後の一体の『究極の魔体』モドキが到達した魔法陣の頂点からそう離れていない場所だ。
 空を飛び回る無数のフェイトを見たアスナ達は呆然と立ち尽くすが、流石は令子というべきか、彼女はすぐさま状況を判断し、手を叩いて皆の意識を自分へと向けさせた。
「とりあえず鈴音、アレは何?」
「空飛ぶ変態ネ!」
「もう少し詳しく!」
 そう言われた鈴音は、水分身について詳しく説明した。おそらく『究極の魔体』モドキを魔法力タンクにして数を増やしているであろう事も含めて。
「まあ基本は忍術と同じネ」
「なるほど……」
 令子は情報を分析し、この状況を打破するための方法を考える。
 そして一つの結論にたどり着き、彼女は最後の一体となった『究極の魔体』モドキの巨体を見上げ、力強くこう言った。

「こういう場合、やるべき事は術者の撃破……つまり、近くにいる私達で、あの最後の一体を倒せばいいって事ね」





つづく


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音、フェイト・アーウェルンクスに関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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