topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.195
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「こういう場合、やるべき事は術者の撃破……つまり、近くにいる私達で、あの最後の一体を倒せばいいって事ね」
 そう言って令子は不敵な笑みを浮かべた。
「……どうやって?」
「え〜っと……」
 しかし、その後が続かなかった。

 というのも水分身が反則過ぎるのだ。
 攻撃力も判断力も本体と同等、防御も本体と同等ではあるが倒しても本体には何の影響も無いのだから質が悪い。
 しかも『究極の魔体』モドキの力を使っているのか、数はほぼ無尽蔵。倒しても倒しても次々に新しい水分身が湧いてくる。
 令子は知っている。これによく似た能力を持っていた強敵を。そう、『蠅の王』ベルゼブルだ。

 倒す方法もベルゼブルと同じ、本体を倒す事だろう。この場合は供給源になっている『究極の魔体』モドキだろうか。ベルゼブルと違って目立つ巨体を堂々と晒しているので、探す分には苦労しない。
 ただ、水分身フェイトの軍団がそれを阻む。
 ベルゼブルの群も厄介だったが、フェイトの水分身は魔法による攻撃力がやたらと高い上に石化など一撃で致命傷になるものが多い。そういう意味ではフェイトの厄介さはベルゼブル以上といえるだろう。

「ハエより厄介なヤツね……!」

 つまりこれは、令子なりの誉め言葉である。多分。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.195


「令子!」
 令子達が揃って頭を悩ませていると、そこに美智恵が現れた。彼女も最後の一体をどうにかせねばと接近しているところだったようだ。
 水分身フェイト軍団については親子で同じ事を考えていたようで、現状では美智恵も逆転の一手は無いと判断していた。
 美智恵自身、ここまで十体を超える水分身を蹴散らしてここまで来たが、それでもまだ足りない。やはり数が多過ぎるのだ。
 ここはフェイトの軍勢を突っ切って、『究極の魔体』モドキまでたどり着けるだけの圧倒的な力が無ければどうしようもないだろう。
 そしてそれは、美智恵にも令子にも無い。いや、今麻帆良にいる誰一人としてそんな力は持っていないだろう。
 令子も美智恵の姿に気付いて駆け寄る。
「ママ、増援を連れてきてくれたのね!」
「皆で観光に来ただけよ」
 建前は大事なのである。
 令子はアスナ達を連れていた。美智恵にとっては見知った顔ぶれだ。アスナ達も近くまでくると揃ってペコリと頭を下げた。
 だが、その中に一人、知っている顔だが何故ここにここにいるのかと疑問を抱く少女がいる。
「……ところで、その子は超鈴音よね?」
 そう、鈴音だ。
 敵の一味だと思われていた彼女が一緒にいる。東京に戻っていた美智恵は詳しい事情が分からず、まずはその事を確認してきた。
 しかし、対する令子は、どう説明すればいいのやらと戸惑った様子を見せる。
「私の本当の名前は横島鈴音。忠夫パパと令子ママの娘ネ。おばーちゃん♪」
「………………えっ?」
 そこに鈴音が爆弾を投下。流石に祖母だと言われるのは予想外だったようで、美智恵はリアクションを返すのにしばしの時間を要した。

「そ、そう、あなたも時間移動能力を受け継いだのね……」
 未来から来た事を簡単に説明すると、ひとまず未来の可能性のひとつとして納得してくれたようだ。
「あんた、時間移動の事、スルーして自己紹介したでしょ?」
「なんのことやら」
 そんな二人のやり取りを見て、美智恵は親子である事に納得した。
 同時にどうせなら横島の方に似てくれればと思ってしまったが、そう離れていないところで水分身相手に無双している横島のソウルシスターの事を思い出し、やっぱりそれはそれでまずいと考え直した。
 今の横島は色々とあって成長し落ち着いてきているが、昔の彼は今と比べものにならない程の問題児だったのだから。

「お〜い、みんな〜!」
 そんな事を考えていると、コレットと共に『月の舟』に乗って戦っていた横島が、澪を小脇に抱えたまま近付いてきた。
「ずるいぞ、澪ーっ!!」
 近くでそれを見ていたらしい薫達も飛んできた。
 更に騒ぎを聞きつけて雪之丞、ピート、西条の三人もやってくる。
「僕は隊長と合流するために来たんだけどね」
「西条のダンナ、誰に言い訳してるんだ?」
 それはさておき、次に合流したのはネギだった。
「魔法陣の頂点まで行ってみたんですけど、そこにはフェイトの姿が無かったんです」
「ネギ達が行ったところって、足りない魔体の代わりに水分身が行っているとかいう所だよな?」
「そのはずだったんですけど……」
「あれだけいれば、一人で確保しなくてもよくなったんじゃないかナ?」
「ああ、なるほど……」
 鈴音の予想に、ネギは納得した。
 確かに彼女の言う通り、無数の水分身がいれば、一体の水分身で頂点を確保しておく必要は無い。敵を全て片付けてからゆっくり残りの五つの頂点を確保すればいいのだから。
 という訳で当てが外れたネギは、杖に乗ってフェイトを探していたところで水分身の大量発生が起き、戦っている内に横島達が集まっているのを見つけてここに来たそうだ。
 杖に乗って飛んできたネギだけが先行しており、小太郎達は少し遅れて今到着である。

 美智恵は集まった顔を見回し、これならなんとかなるかもしれないと考えていた。令子も同じことを考えたのだろう。目を輝かせて皆を見ている。
「皆、ちょっといいかしら? せっかく集まったんだし、これから皆であのデカブツに突っ込もうと思うんだけど」
 一人で水分身の群を突っ切れる程の圧倒的な力の持ち主はいない。しかし、ここに集まったメンバー全員で突入するとなれば話は別だ。
 学園長達魔法使いの力も借りればいいかもしれないが、彼等が抜けると周囲の戦力バランスが一気に崩れて水分身がここに殺到してくる可能性が高い。これ以上周囲の水分身を増やさないためにも、彼等には別の場所で戦っていてもらう必要があるだろう。
「でも、近付いたところでアレは倒せるんでしょうか?」
「そこは横島君の文珠で……」
「いや、俺があいつの立場なら、分身一体を飛び込ませて盾にするぞ。あれは人間に見えるが、ガチの使い捨てだ」
「うっ……」
 問題は。無数の水分身を従えた『究極の魔体』モドキは、これまでの五体よりもはるかに手ごわいという事だ。
 ピートと雪之丞の言葉に、令子も反論する事ができない。文珠というのは万能の霊能ではあるが、意外と効果範囲が狭いのだ。
 横島は小さな珠を当てないといけないが、対するフェイトは使い捨てにできる人間大の盾を無制限に出せるといえばその厄介さが伝わるだろうか。
「ああ、もう! 考え事の邪魔よ!」
 隙を突いて襲い掛かってきたフェイトを、令子は神通棍の鞭を一閃して撃破。
 彼女達の力ならば、単体のフェイトはどうとでもなるが、それでもどうしようもない数の暴力。
 令子は頭を抱える。皆の力を借りればなんとかなると思ったが、甘かった。やはり必要なのだ、数を圧倒する力が。水分身を盾にして防御しようとしても、まとめて『究極の魔体』モドキを倒せる力が。

「あの〜……ちょっといいですか?」
 ここでアスナが遠慮がちに手を挙げ、横島に声を掛ける。
「横島さん、京都でやったアレ、またできませんか?」
「あ〜、あれは……」
「あれ? 何なの? この状況をどうにかできるものがあるの?」
 それに令子も食いついてきた。横島が妙神山の修業で覚えた何かしらの必殺技のようなものだと考えたようだが、そうではない。
「はい! 文珠を使った『同期合体』ってヤツで、リョウメンスクナを倒したんです!」
「…………あ」
 同期合体、それは令子にとっても記憶に残る言葉だ。かつて彼女と横島で同期合体をし、アシュタロスと本家本元の『究極の魔体』を倒した。
 それと同じような事を、アスナと横島もしていたのだ。場所は京都、相手は大鬼神リョウメンスクナ。アシュタロスと比べると格は落ちるが、十分な大物である。
「ちなみにリョウメンスクナを封印したのは、ママの前世の葛葉ネ♪」
「ぜ、前世のやった事だからセーフ!」
 しかし、リョウメンスクナの一件に巻き込まれた面々は、何とも言えない表情で令子を見ていた。

 それはともかく、令子は無意識の内にそれを思い出さないようにしていた。理由はなんとなく恥ずかしいからだが、彼女自身はそれに気付いていない。
 だが、思い出してしまえば、それは妙手だった。あれならばアシュタロスを倒す事もできるだけの力がある。
 起死回生の一手が見えた。令子は思わず拳を握る。
「確かにそれなら……!」
「ダメよ、令子」
 しかし、それに待ったを掛けたのは美智恵だった。令子と違い、彼女が同期合体の事を忘れているはずがない。
 だが、できないのだ。今の二人では。
「忘れたの、令子。あれは二人の力が同格だからこそ、その力の方向を文珠で同期、共鳴させる事で力を数千倍まで高めていたのよ?」
「だから文珠が二つあれば……えっ? あれ?」
 令子は戸惑い、困惑し、そして横島を見る。
「ま、まさか……まさか……!?」
「そう、単純な霊力量だけなら、妙神山での修行を終えた横島君の方が上なのよ、令子……!」
「なんですってーーーっ!?」
 令子の絶叫が響き渡った。その時振り上げた拳が、上から襲い掛かってきたフェイトを一体粉砕した。
 なお、あくまで単純にマイトを比較しての話であり、GSとしての技術や知識、何より経験も加味すると、まだ令子の方がはるかに上であるとフォローしておく。
 ただ、同期合体においては、二人に差がついてしまった「同程度のマイト」というのが何よりも重要なのだ。ここに差があると、たとえ合体できたとしても、共鳴の効果は著しく落ちる。
「アスナー! あんたはどうやったの!? あんたのマイトは横島君よりはるかに下でしょ!?」
「え、え〜っと、確か、仮契約(パクテイオー)カードを使って……」
「ああ、そのカードにはマスターから魔法使いの従者(ミニステル・マギ)に力を供給するという効果があるんでさぁ」
 しどろもどろになって上手く説明できないアスナに代わり、カモが説明役を買って出た。
「だからといって共鳴できるように調節するのは難しい……あ、もしかして、その時にはまだ……」
「ご明察でさぁ。アスナの姐さんは、まだ霊力に目覚めてませんでしたぜ」
「だから、大体半分の力を供給すれば共鳴できるようになったのね。それじゃ今は……」
「多分無理っス」
 相手の霊力量を把握しつつ、それに自分が分けた霊力を足して、残った霊力と互角になるようにリアルタイムに調整し続ける。ほぼ不可能と言っていいだろう。

 勝つ方法はある。しかし、それを実行するには大きなハードルが立ちふさがっている。
 周りを見回しても、魔法使い達は被害を抑えるのに手一杯で負けはしていないものの、勝ててもいない膠着状態。
 この戦いの行方は、横島達が勝つ方法を実行できるかどうかに掛かっていた。





つづく


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音、フェイト・アーウェルンクス、リョウメンスクナに関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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