topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.202
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「うっわ〜……」
「えっ、マジで?」
 電車に乗って東京に到着したアスナ達一行だが、まず駅を出たところで度肝を抜かれる事になった。
 東京の街並みに気圧された……訳ではない。なんと大きなサロンバスが、駅まで一行を迎えにきたのだ。
 バスを手配したのは、六道夫人。これから一行は改築された横島の家に向かうのだが、その改築に関わった夫人が迎えを寄越したのである。
 まさかこんな歓迎を受けるとは。アスナ達は予想外の展開に目を丸くしていた。
 夫人からすれば、横島が麻帆良に行っている間、家を預かり改築を進めていたのだから、改築が終わった家を引き渡すまでが彼女の責任だ。
 しかし、当然それだけではない。
「横島く〜ん、おかえりなさ〜い〜」
 バスには運転手以外に案内人も乗っていた。六道夫人ではなく、その娘の六道冥子だ。ご丁寧にバスガイドの出で立ちになり、ぴこぴこと小さな旗を振っている。
 嬉しそうに満面の笑みを浮かべて出迎える大人の女性。その登場にアスナ達は一瞬身構えたが、すぐにその無邪気さに毒気を抜かれてしまった。
「あれ? タマモ達は?」
「ウチから〜、直接横島君の家に向かっているわ〜」
「それなら急がないと。皆、観光したいだろうけど……」
「いいですよ。この荷物降ろさないと始まらないし」
 この時点で大荷物を抱えた女子中学生集団は目立っていたので、一行は荷物を積み込み、バスに乗り込んですぐに出発する。
 実際、このまま横島の家まで移動していたら、アスナ達はずっと注目の的になっていただろう。六道夫人がその辺りについて気を遣ったというのも、また事実であった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.202


 冥子が上機嫌だったおかげでバスは何事もなく横島の家に到着。
 その間、冥子は木乃香と仲良くなっていた。ノリが近く、気が合ったようだ。
 バスを降りてみるが、タマモ達の姿はまだ無い。
 一同バスを降りて、新たに生まれ変わった横島の自宅兼除霊事務所を見上げる。
「おお、でっかいアル……おぉっと」
 見上げ過ぎて倒れそうになった古菲を、鈴音がとっさに支えた。
「兄ちゃん兄ちゃん、これ個人住宅なんだよね?」
「事務所も入ってるけどな」
 ビルとしては小さいが、個人住宅としては大きい三階建て。元々は庭があった邸宅の、敷地の大部分を建物にしたため、横島から見ても大きくなった印象を受ける。
 外から見られないトレーニング施設も入れるつもりで三階建てにしたのが、急遽その部分も居住空間に変更したため、アスナ達全員が夏休み中泊まり込んでもまだまだ余裕がありそうだ。
 なお刀子は、皆の後ろで小さくガッツポーズをしていた。

「横島く〜ん、はいこれ〜、新しいカギよ〜」
 冥子が、夫人から預かっていた鍵を横島に手渡す。
「おお、帰ってきおったか!」
 大きな声に振り返ると、大きなトラックが見えた。その助手席から顔を出し、手を振っているのは声の主、ドクター・カオスだ。荷台の中身は、改築中預けられていた、横島の家の家具などである。
 そのトラックの後ろにはワゴンが続いており、そちらにはタマモ達が乗っている。どちらも運転しているのは六道家から派遣された人達だ。
「よし、丁度全員揃ったし、中に入ってみるか!」
「これが私達の新しい家なのね、青春だわっ!」
「それじゃ、最初は横島さんが」
 はしゃぐ愛子を横目に、花戸小鳩に促され、横島は鍵を開けて中に入る。
 そして横島は一足先に中に入ると、振り返ってアスナ達を出迎えた。
「ようこそ我が家へネ!」
 さり気に鈴音もその隣に立ち、出迎え側に回っていた。

 という訳で横島に歓迎され、新横島家に上がり込んだ一行。まずは探検だと風香と史伽が駆け出す。
「あ、待ちなさい!」
 アスナがその後を追い、祐奈とアキラもそれに続く。
 しかし、風香と史伽は最初の部屋に入ったところで足を止めてしまった。
「うわ〜……」
「殺風景です〜……」
 風香と史伽が、部屋を見回しながらそうつぶやいた。
 そこは事務所となる予定の大きな部屋なのだが、当然家具類はまだ入っていない。がらんどうの殺風景な光景だ。ゴミも汚れも何も無いため、生活感も感じられない。
 ちなみにこの建物には表の入り口が二つあり、一つは直接この事務所に入れるようになっている。
「荷物は、これから運び込むんだって」
 ちなみに、六道家から派遣されてきた運転手は荷物を運ぶ手伝いでもある。
 外を見てみると、二人は横島達をよそに、マリア、テレサ、それにハニワ兵達と一緒に運搬作業を始めようとしていた。
「あ、手伝います」
「私も!」
「私もやるアル」
 真っ先に手伝いを買って出たのはアキラ。アスナと古菲もそれに続く。
「使い魔は……公道では止めておきましょうか」
 高音は影の使い魔を出すのではなく、影をまとって腕力を強化しながら手伝いに参加した。
 揃ってハニワ兵に驚いていないのは、流石麻帆良の住人といったところだろうか。
 横島も手伝おうとするが、その前にエヴァに呼び止められる。
「横島、先に魔法の水晶球を設置しないか?」
「え、ああ、それもやらないとダメか」
 エヴァ達は明日妙神山に行く予定なので、その前に設置しなければならない。
 どうしたものかときょろきょろしていると、タマモが「こっちは適当にやっとくわよ」と声を掛けてくれた。
 確かに家具の配置などは女性陣に任せた方が良さそうだ。
 という訳では横島は、エヴァ、茶々丸、鈴音。それに興味があるので設置するところを見てみたいという夕映、愛衣、アーニャを連れて水晶球を設置する予定の地下へと向かう。
 地下は核シェルター並に頑丈に作られていた。これは元々カオスの実験室や、カオス製の地脈発電機を設置する予定だったので、当然の処置である。
 魔法の水晶球を設置する部屋も、この一角にあった。魔法の水晶球の設置には、水晶球を守るための結界だけでなく、中に出入りするための転移の魔法陣が必要となるので、その部屋は少々縦長だが十分な広さがある。
「横島さん、設置は部屋の奥でよろしいでしょうか?」
「そうだな。手前に置いても奥のスペースが使いにくいだけだろうし」
 横島に相談しながら、エヴァと鈴音が中心となって設置作業を進めていく。鈴音はエヴァの家のレーベンスシュルト城の設置にも関わっていた。
 アーニャがしゃがみ込んで、興味深そうに床に描かれた魔法陣を見ている。
「水晶球の設置って、初めて見るわ……」
「家に設置するとしても、作業現場をわざわざ子供には見せないからなぁ」
 たとえるならば家に業者の人間が来て、エアコンの設置をしているようなものだろうか。
 御覧の通り水晶球の設置は個人でもできる事だが、魔法界でも専門の人に頼むのが多かったりする。アーニャも愛衣も、設置しているところを見るのは初めてだった。
「ところで、この中はどうなってるですか?」
 夕映が台の上に置かれた水晶球を覗き込みながら、エヴァに尋ねた。
 外から見ると、水晶球の中にはジオラマか何かが入っているように見える。森の中にある建物。夕映には複数の建物と、それを囲む森が見える。
「私も知らん。中身は私が用意したものではないからな」
「えっ?」
 この中の施設についてはエヴァの一存ではなく、関東魔法協会と魔法界、それにGS協会が話し合いを行った上で決められた。麻帆良祭後、魔法界の代表者達が東京に行った際に話し合いが行われていたのだ。
 エヴァの方も流石にレーベンスシュルト城のような仰々しいものを贈る気は無かったが、そちらで中身を用意するならばと空の水晶球のみを出している。
 手持ちの中から最もサイズが大きいものを提供したのは、そちらでやるからにはこれに相応しいものを用意してみせろという意地悪心ぐらいはあったのかもしれない。
 念のために言っておくが、何もエヴァが信用できなくてそういう形にした訳ではない。
 今回の件は、情報公開後に魔法の水晶球が主力商品の一つとして名を連ねられるかどうかを計るテストケースなのだ。
 GS達はどういう施設を求めているのか、どういう施設があれば嬉しいのか。それらを実際に試してみるという目的があった。
 中に複数の建物が見えるのも、実際に使ってみてもらおうと複数の施設が入れられているためだったりする。
「まぁ、実際に見てみるのは全員が揃ってからでいいんじゃない?」
 そう言ったのはアーニャ。彼女も今は、設置作業の方が興味深いようだった。


 そんなこんなで設置作業が終わる頃には、荷物の運び込みも終わっていた。
 その間に、皆一通り自己紹介も終えたようだ。地下で設置していたエヴァ達はここで改めて自己紹介となるのだが、皆の注目はやはり鈴音に注がれる事になる。
「横島君と、美神さんの娘……?」
「私が生まれた未来のパパは独立してなかったから、この先仮に二人が結婚する事になっても私は生まれないけどネ」
 ルシオラは既に復活しているのだから、ルシオラの生まれ変わりである鈴音が生まれるはずはないので当然である。
 それはともかく、建物の大きさに比べて家具が少ないのは仕方がない。それでも最低限事務所は使えるようになっているし、二階の居住スペースで過ごす分には問題無いだろう。

 作業が一段落したので、六道家から来た二人も挨拶して帰って行く。 
 しかし、冥子はそのまま残っていた。彼女によると、今晩令子達も集まってパーティーをするという話になっているそうだ。
「パーティーねぇ……」
「せっかくだし、魔法の水晶球のお披露目もします?」
 千鶴がそう提案してきた。夜のパーティーを、水晶球の中でやろうというのだ。
「あの中、まだ見てないけどパーティーできる場所あるかな?」
「広いスペースは確実にあるから、なんとかなるだろう」
 バーベキューのようなパーティーという手も考えられる。
「というか、あれ見せても大丈夫だっけ? いや、美神さん達は知ってるけど」
「今夜のパーティーは、どういう人達が来るの?」
 横島の疑問に、刀子はまずどういう人達が来るのかと確認してきた。
 まず冥子から出席予定のメンバーを聞き出す。そして刀子が注目したのは、除霊科の人間ではあるが、今は素人の学生でしかない六女の生徒達と、微妙にオカルト業界とは距離がある『B.A.B.E.L.』の面々だった。
「でも、おキヌちゃん達はここで修業する訳ですし、薫達は今晩にでも来ますよ?」
「GSの修業場所として売り出そうとしている訳だから、六女の生徒については大丈夫だと思うわ。口止めは必要だろうけど」
「『B.A.B.E.L.』は?」
「向こうが、どういう出方をするかなのよねぇ……」
 『B.A.B.E.L.』の大きな特徴として、オカルトを科学で解明しようとするというものがある。それだけに向こうがどういう出方をするのか分からないというのが正直なところであった。
 そこに鈴音が助け船を出してきた。
「情報公開まではヒミツ。『詳しく知りたかったらそっちで関東魔法協会に接触しろ』で良いんじゃないかナ?」
「それで大丈夫かしら?」
「どうせ情報公開したら知られるネ。その事を教えたら、残り半年ちょっとの口止めも問題無いネ」
「まぁ、欲しがるヤツがいても、あと半年って言っておけばいいか」
 という訳で全員に魔法の水晶球を見せても問題は無いという事になり、今夜のパーティーはそこで行われる事になった。





つづく


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音に関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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