topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.212
前へ もくじへ


 四月、桜が咲く季節。学生にとっては環境が一変する季節であり、それは神楽坂アスナにとっても例外ではなかった。
 特に遠くに進学するとなると、住む場所も変わってその環境は激変するだろう。
 アスナも高校進学に合わせて東京に引っ越した。今は正式に横島の家の居候になっている。
 いつもより早起きしたアスナは新しい制服に袖を通し、鏡の前に立って自分の姿を確認する。
「……よしっ!」
 神楽坂アスナ、十五歳。今日から六道女学院除霊科に入学である。
 横島との関係は、残念ながら大きく進展したとはいえないが、今まで受験勉強で忙しかったのだから仕方がない。
 これからだ。ここからアスナの新しい生活が始まるのだ。
 鏡の前でにっこり笑う。今日も絶好調だ。最後にもう一度制服の着こなしを確認したアスナは、元気よく部屋を出た。

「あ、アスナ、おはよーさん」
 アスナがリビングに行くと、同じく六女の制服姿の木乃香が出迎えた。
 麻帆良では幼い頃から共に過ごしてきたルームメイトであり、これからも一緒にこの家に居候して、六女でも共に過ごす事になる親友だ。
 リビングには六女の制服姿の古菲、夕映、裕奈、アキラ、千雨、千鶴、夏美、風香、史伽、刹那、刀子。

「なんで刀子先生っ!?」

 思わずツッコみ、飛び起きる。
 周りを見ると、そこはアスナに宛がわれている魔法の水晶球内の一室だった。カーテン越しでも、外がまだ暗い事が分かる。

「ゆ、夢……?」

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.212


「……という訳で、夢の中で六女の制服姿の刀子先生が」
「そんな話を聞かされて、私にどう反応しろと?」
 午前の勉強中、アスナは指導してくれている刀子に今朝の夢について話してみた。
 なお似合っていたかどうかについては、アスナも黙秘を貫いている。
 対する刀子は呆れるばかり。アスナとしては予知夢という事もあったりしないだろうかと考えての事だったが、刀子は「ある訳ないでしょ」と一言で切って捨てた。
「生徒じゃなくて教師として出向という可能性ならあるけどね」
「刀子先生がですか?」
「神鳴流剣士って、GSと魔法使い両方と縁があるから」
 GSを育てる六女と、魔法使いを育てる麻帆良。日本におけるオカルト関係教育機関の最高峰同士、交流を深める事は十分に考えられた。逆に六女除霊科の教師が麻帆良に出向する事も有り得るだろう。
 それなら麻帆良側は魔法使いを出向させればいいのかもしれない。しかし、そこはそれ。実は刀子自身が六女出向を狙っているのだ。横島が麻帆良から離れた後、後を追って東京へ行くために。
 六女組に指導しているのも、自身の指導力をアピールするためだったりするのはここだけの話。彼女はガチであった。

 それはともかく、今朝の夢はアスナも色々と考えさせられた。念のために言っておくが、刀子の制服姿にではない。あれはあれで衝撃的ではあったが。
 夢の中では、共に受験勉強に励んでいる皆が六女に合格していた。全員ではないとはいえ、友人達と一緒に進学できる。まさしく夢のような光景だった。
 だが、アスナは気付いてしまった。六女組と交流するようになって理解してしまった。
 六道女学院除霊科は、霊能力の才能だけではなく、勉強もできなければならないと。
 では、自分達の中で不合格になりそうなのは誰か。アスナは他ならぬ自分がそうだと思ってしまった。
 これでも最近は成績が上がってきているのだが、ずっとバカレンジャーと呼ばれていた事もあって、どうしても自信が持てずにいるのだ。

 正確には図抜けた霊能力の才能があれば、それだけで入学できなくもない。推薦入学という形で。おキヌや魔理がそうだ。
 しかし、二人とも入学後勉強で苦労していると聞いていたため、ちゃんと勉強して合格したいとアスナは考えていた。高校でも「バカレンジャー」と呼ばれるのは避けたいのだろう。
 そんな事情もあって、アスナはこれからの受験勉強に対して気合いを入れ直していた。
「みんな、がんばりましょう!」
「なんだよ急に」
 そんな彼女の心境の変化を、周りの面々は分からない。千雨は不意に声を上げたアスナに、呆れた顔をした。
「いや、全員で合格できたらいいねって思ったのよ」
 とはいえ一緒に合格したいというのは同意見であったようで、皆口々に頑張ろうと声を上げる。

「せやなあ、どうせなら一緒に行きたいなぁ」
 そう言ってきたのは木乃香。アスナのルームメイトであり、一番の親友だと自信を持って言える。高校進学後も共に過ごせたら、どんなに素晴らしい事だろう。
 彼女の方は学力的にも霊力的にも心配無しなので、頑張らなければいけないのはアスナの方である。
「そうですね、このちゃん達と一緒に……!」
「せやったら、勉強がんばらんとなぁ」
「はい……」
 木乃香にたしなめられた刹那は、がっくりと肩を落とした。
 彼女は新生バカレンジャー候補生であり、受験合格を目指すならばアスナ以上に頑張らねばならない立場だ。
 とはいえ、木乃香がほぼマンツーマンで教え、刹那もやる気を出しているので、このまま努力を続けてればきっと大丈夫だろう。

「ま、ここまで来たらGS資格も欲しいアル」
 元々は強くなる事自体が目的だった古菲も、GSにも興味を持つようになっていた。大真面目に将来の道候補として考えている。
 そうでなければ勉強が苦手な彼女が、ここまで付き合っていなかった。フェイト達と戦うならともかく、受験勉強が相手となるとどこかで逃げていただろう。
「私達は元バカレンジャーですし? 人より勉強しないと」
「そこが悩みどころアル……」
 横からツッコミを入れてきたのは夕映。彼女もまた元バカレンジャーである。
 夕映は、六女に行く気満々だ。彼女もまたバカレンジャーだったのだが、こちらは元々真面目に勉強していなかっただけで、やればできるタイプだ。
 除霊科という普通の学校には無いものに好奇心を刺激されてやる気になったらしい。欲望は強しである。
「いっそ、ここの時間延ばしてもらって本当に人より勉強する?」
「むむむ……!」
「何がむむむですか。それはやり始めるとキリが無いから止めるです」
 なにより、彼女達自身が長期に渡る受験勉強に心身が耐えられないだろう。
「まぁ、バカレンジャー同士、どこまでやれるか分からないけど、正々堂々やれるだけの事はやりましょう。何もしないで逃げるのは嫌でしょ?」
 正々堂々=時間を操作せず、受験勉強する事である。
「ム、逃げと言われたら黙っていられないアル」
「つまり勉強するという事ですね。さぁ、一緒に頑張るです」
 仕方ないと、勉強を再開する古菲。その姿を見たアスナと夕映は顔を見合わせて微笑むと、自分達もまた勉強に打ち込み始めた。

「というか……アスナはともかく、まだ霊能力を使えない私達が六女に入れるのかな?」
 不安そうな顔で疑問を口にしたのはアキラ。
 六女は業界における卒業生の扱いは微妙なところがあるが、なんだかんだでエリート校であり、授業の中に簡易式神との模擬戦などもあるのだ。
「……いや、アキラは大丈夫でしょ」
「えっ?」
 そんな彼女に、裕奈はツッコミを入れた。
 アキラの身体能力は3−Aの中でもトップクラスであり、古菲達武闘派も一目置いていた。
「魔理センパイとか、メリーセンパイみたいな肉体派もいる訳だし? アキラの場合、そのフィジカルだけでお釣りが来るんじゃない?」
「そ、そうかな……?」
「そうだよ」
 かくいう裕奈も負けてないと思ったアキラだったが、残念ながら彼女では上手く説明する事ができなかった。

「でも確かに除霊科を目指すなら、そっちも大切よねぇ」
 千鶴ぐらいになると、受験についてはそれほど焦ってはいないようだ。それよりも霊能力者になれるかどうかの方が気になるらしい。
「ちづ姉は、素質あるみたいだしいいじゃない」
 一方夏美は、うらやましそうに千鶴を見ていた。
 千鶴は生まれつきマイトが強く、後はそれを制御できるようになるだけ。完全な素人から始めた夏美から見ればうらやましい限りであった。
「夏美ちゃんも、最近頑張ってるじゃない」
「修業している間は手応え感じるんだけど、普段がね〜」
 そういう夏美も頑張っている。実際に霊力供給の修業中は、自身の霊力も感じ取れているのだ。
 本人も気付いていないが、実は彼女は、横島の匂いを感じている時、霊力が増している。横島の煩悩全開の嗅覚バージョンのようなものだ。
 そんな夏美がその事に気付いて悶絶するのは、もう少し先の話であった。

「半年あるんだから大丈夫、大丈夫て! こう、サイキックソーサーってね!!」
「で、でも、オバケ怖いです〜」
 そして六女に入学する気満々な風香と、あまり乗り気ではない史伽。しかし、風香の勢いに負けてしまっているようだ。
「卒業までに霊力が使えるようになるか分からないし……」
「大丈夫だよ! その時はかえで姉に教えてもらった忍術で!」
 アスナ達に両手を振って力説する風香。なお、楓が教えたのは双子の二人が走り回ってかく乱する分身の術モドキである。六女で通用するかは微妙なところだ。
 一方史伽は、おとなしく勉強を続けている。怖がりの彼女が、それでも六女受験を止めようとしていないのは「弱い自分を変えたい」という思いがあるからだった。
 そして何より、どちらも仲良しの姉妹と離れたくないという思いがあるのだろう。彼女達もまた真面目な受験生だった。

 皆の話を聞いて、アスナはニヤリと笑った。
「つまり、霊力供給の修業を増やして、霊力を鍛えないとって事ね」
 横島との修業を増やせると考えたようだ。何を求めているかについては言うまでもないだろう。
 千雨は内心で「エ□い事したいだけだろうが、お前は!!」と激しくツッコんでいた。が、口には出さず黙って聞いていた。誰かがツッコむだろうと思っていた。
「…………」
「…………」
「…………」
 しかし、誰も動かなかった。何も言わず、皆視線を合わさず、しかしチラチラと周囲の様子を窺っている。その頬は紅く、口に出さないもののアスナの意見に同意している事が見て取れた。勉強漬けでストレスが溜まる環境にいるのだから尚更……なのかもしれない。
 色ボケばかりだ。受験生がそれでいいのか。千雨は声を張り上げてツッコみたかった。
 しかし、ここは冷静に考えて別方向から説得してみる事にする。
「私は除霊助手でいいから、別に六女には拘ってないんだが……」
 実のところ、横島の下で除霊助手をしたいのならば六女に拘る必要は無いのだ。六女の生徒でなくても横島に雇ってもらえればいいのだから。
「六女じゃなくても、東京の高校ならいいんだろ? たとえば、横島さんと同じ高校に進学でもいいんじゃないか?」
 かくいう千雨が、同じ学校で先輩後輩の関係になるのも良いかもしれないと考えていたのは、ここだけの話である。
 もっともかの学校にも「除霊委員」という謎の役職がある事については、知らない方が幸せだろうが。

 結局、その件については「霊能力に目覚めなくても保険になる」という事になった。
 霊力供給の修業は、まだまだ分からない事が多い。確実に効果が出ると言いきれない以上、そういうものがあるのはありがたい。
 ただ、それはそれとして霊力供給の修業は、きっちりみっちりやろうという事となった。
「……ま、まぁ、いいんじゃねえの?」
 そして千雨も反対はしなかった。なんだかんだで彼女もまた、あの修業を楽しみにしているのだ。


「修業量を増やす? ま、まぁ、いいんじゃない?」
 霊力供給の修業を増やす件については、高音達も同意してくれた。
 頬を紅潮させている様子を見るに、「きびしい修業」と「や○しい修業」のどちらを求めているかは言うまでもないだろう。実は六女組も修業に加わるようになって、物足りなさを感じていたのかもしれない。
「そういえば高音さんって、高校卒業後はどうするんですか?」
「何をやぶからぼうに……」
「いや、六女に行けなくても、横島さんと同じ高校に進学する道もあるよね〜って話になって」
「う〜ん、答えにくいわね」
「えっ? 答えにくい事なの?」
「そうじゃなくて……情報公開前後で変わっちゃうのよ。私達魔法使いの場合」
「ああ、そういう……」
 彼女達魔法使いは今まで正体を隠してきたが、情報公開後は堂々と表舞台に出る事ができるようになる。これはすなわち将来設計の前提条件が根本から変わってしまう事を意味していた。
「愛衣ちゃんも?」
「そうですね。私もお姉さまも、1年猶予があるからマシですけど」
「……美空、大丈夫かしら?」
 それは本人にしか分からない。


「むっ……?」
「どうしたのねー?」
「あいつらが、またバカな事を言っている気がする」
 一方その頃麻帆良では、エヴァが何やら感じ取っていた。
 こちらはのんびり解呪を進めている。
「どうぞ」
「ありがとなのねー」
 ヒャクメは、茶々丸とその姉妹達にお世話される生活にだらけていた。
「大丈夫なのか? あれ」
「ケケケ、卒業に間に合えばいいんじゃね?」
 傍から見ているすらむぃ達にも分かるのだから、そのだらけようは相当なものだ。
 ただ、解呪についてはパズルのノリで進めていたので、エヴァも何も言っていない。
 女神がいるという事で、ヒャクメ滞在中に掛かる費用一切は学園長が出す事になっているため、エヴァも夏休み中に解呪が完了する事には拘っていなかった。

 なお、のんびりし過ぎて卒業間際に夏休みの宿題をやっていなかった学生のようになるのがヒャクメクオリティである。


「むっ……!」
「あぁん、小竜姫さま。余所見はいけまへん」
「ああ、すいません。ヒャクメがバカな事をしているような気がして」
 そして妙神山では、小竜姫が何やら感じ取っていた。
 すぐに気を取り直して戦闘を再開。千草とメドーサは、その様子をモニタ越しに見ていた。
 ハラハラしながら見守ること母のごとし。
 見ている間は修業していない訳だが、月詠が戦っていない時はちゃんとしているので心配はいらない。
 こちらは既に大人。しかも立場的にはフリーなのでアスナ達のような悩みは無い。横島除霊事務所への移籍も、ここでの修行も、真っ当なステップアップの一環だ。
 幸い、月詠も最近は落ち着いてきた。小竜姫にはまだまだ敵わないが、強さの基準が彼女になる事で、普段は興奮しないようになれるだろう。
 この二人は、横島と出会う事で良い方向に変われていた。


「そういえば、鈴音は六女には行かないの?」
 横島の魔法の水晶球の中で、アーニャがそんな事を尋ねた。
 毎日アスナ達が受験勉強に励んでいる姿を見ているので、一人それに参加していない鈴音に疑問を抱いたのだ。
「ん〜、六道夫人がどうしても入学して欲しいって言ってきたら考えなくもないネ」
「うわっ、ゴーマン〜」
 コレットが思わず声を上げるが、鈴音にそれだけの能力がある事は彼女も理解していた。
「ぶっちゃけGS資格には拘ってないし、研究設備はここで十分だし?」
「う〜ん、我が道を行く……」
「そういうコレットはどうなのかナ?」
「えっ?」
「……『月の舟』」
「う゛っ……」
「ん? アーティファクトがどうしたの?」
 アーニャは理解できずに首を傾げた。
 同じ魔法使いでもアーニャとコレットには大きな違いがあった。
 アーニャが個人の魔法使いとして活動しているのに対し、コレットはアリアドネー魔法騎士団という集団に属している。
 問題は、コレットのアーティファクト『月の舟』の性能が、アリアドネー魔法騎士団の魔法の箒よりも遥かに高いという事だ。ハッキリと言ってしまえば隔絶している。
 そのためコレットは、手に入れたアーティファクトを活かそうとすれば、アリアドネー魔法騎士団の面々と足並みが揃わないというジレンマに陥っていた。
「ふっふっふっ、どうするネ? 情報公開されると、こっちに来るという選択肢も生まれるネ」
「そうなんだよね〜……」
 コレット自身も迷っているようだ。
「そういえばアーニャはどうするの? 卒業試験は終わったんでしょ?」
 そこでもう一人の魔法使い、アーニャに話を振ってみた。
「えっ? そうねぇ、まずはGS資格取得かしら? 魔法使いに、そういう表向きの資格って今のところ無いし。この年齢で除霊助手になれるのか、魔法使いは特例になれるのか、その辺は情報公開の行方次第ね」
「へ、へ〜……」
 思いの外しっかり考えられていた。アーニャ、しっかりものである。
 最近彼女は、年齢が近い澪や薫達と仲が良いので、葵と紫穂の影響を受けたのかもしれない。
 これにはコレットも影響を受け、夏休みの間日本のオカルト業界について勉強し、自分の将来について考える事になる。


 一方その頃横島は、一仕事終えて帰宅したところだった。
 昨夜は久しぶりの除霊の仕事で、助手としてタマモとテレサ、そして幽霊を説得する事も有り得るという事で、さよを連れて行っていた。
「今日はよく頑張ったな、さよ」
「はいっ♪」
 それが功を奏し、大活躍だったさよ。仕事中は振り落とされるかもしれないとタマモが抱きかかえていたが、今は横島の頭の上でご満悦だ。
 地縛霊でなくなった彼女は、アスナ達と一緒に麻帆良女子中を卒業する事になっている。
 流石に高校進学はできないが、卒業後は横島が引き取る事になっている。
 東京に来てからは、特に澪やハニワ兵達と仲良くなっており、横島家の新しい妹のようになっていた。

 そして横島忠夫、次世代を担うGSの代表とされる一人。
 彼はデタント推進、そして神魔族と付き合っていくためには、「人類全体のレベルアップ」が必要だと考えている。
 難しい課題だ。しかし、アスナ達と出会い、魔法使いが行う『魔力供給』にヒントを得て霊力供給の修業を編み出した。
 これは「霊力は鋼、霊能が刃」という猿神仕込みの信念を持つ彼にピッタリの修業だった。
 その性質上、女性しか受けられないが、それもまた彼にピッタリの修業だった。
 それにより素人だったアスナを、霊能力に目覚めさせる事ができた。そして今では、彼の下には少女達が集い、日々修業に励んでGSを目指している。
 彼の課題は、麻帆良で過ごした4ヶ月で大きく進歩したといえるだろう。
 だが、まだだ。東京に戻ってきて、おキヌ達――彼の下に集った六女の生徒達――も修業を受けるようになった。
 この修業によって霊力に目覚めた者、これから目覚める者、そして既に目覚めていた者、彼女達がこの先どうなっていくのか。霊力供給の修業の真価が問われるのはこれからである。


 そして――


 それは、どこにでもあるような一軒の家だった。
 二階建てで、小さな庭と駐車場があるごく普通の家。しかし、その家の中で異常な現象が起きていた。
 見える者には中の様子が分からなくなる程の大量の悪霊。それが家中に渦巻いている。
「おそらく地縛霊が原因だな」
 この除霊に挑むGSは二人。一人は新世代の代表格、横島忠夫。
 もう一人は……。

 六女の制服に身を包み、長い髪を護符のリボンでツインテールにした少女。
「行きましょう、横島さん!」
 新人GS、神楽坂アスナは神通棍を伸ばして、横島に声を掛けた。
 二人で家に突入し、横島は『栄光の手』で、アスナはサイキックソーサーで悪霊達を蹴散らしながら突き進んでいく。
 そしてたどり着いた家の最深部。やたらと大きく重厚そうな扉をゆっくりと開き、二人は中へと踊り込んだ。
「覚悟しなさい! このGS神楽坂アスナが……極楽へ逝かせてあげるわッ!!」
 そして決めポーズ。決まった。アスナは内心そう思った。

「へぇ……なかなか威勢が良いワケ」
「……えっ?」
 不意に声を掛けられて顔を上げると、そこにはゴテゴテしい派手な装飾で着飾った、真っ黒な装束の女性がいた。その名も『呪いのエミー』!
 その隣に立つ姿は、闇のようなドレスに身を包んだ、正に「悪の女王」といった出で立ちの女性。
「よく〜、ここまで〜たどりついたわね〜〜〜」
 全てを灰燼に帰す破壊神・冥子である。

 そして二人の奥に控えるのは……。
「GSに相応しいかどうか、確かめてあげましょうか」
 際どいボディコン姿で神通棍を構えた令子であった。
「ふっふっふっ、横島君との幸せな未来を築きたければ……私達を倒していきなさいッ!!」
 そしていきなりの宣戦布告である。
 隣にいたはずの横島は、いつの間にか巨大な鳥籠に囚われて令子達に囲まれていた。
 いきなりどうしたのか。自分達は除霊に来ていたのではないのか。
 訳が分からない状況に追い詰められ、アスナは思わず叫ぶ。

「なんで美神さんだけ普通の格好なの!?」

 その言葉と同時に飛び起きるアスナ。周りを見ると、やはりそこはアスナに宛がわれている魔法の水晶球内の一室だった。
「ま……また、夢……?」
 二日連続の夢だった。

 寝ぼけ眼のアスナは洗面所に向かい、まずは顔を洗ってしっかり目を覚ました。
 そして鏡に映った自分の顔を見つめ、気合いを入れ直す。
 夢ではGSになっていた彼女だが、今はまだ除霊助手であり、六女入学を目指す受験生。今日もまた受験勉強が待っている。
 人並外れた身体能力に、『魔法無効化能力』。そして何より横島のように煩悩から生み出される霊力。
 いずれは次世代のGSとして名を馳せるであろう素質を持っている。
「……よしっ! 今日も頑張るぞー!!」
 しかし、それはまだまだ先の話。
 今の彼女は、まだまだ未熟な卵の見習GSであった。 





おわり


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音・茶々丸に関する各種設定。
 魔法のに関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。


 東京帰還後も続いていたエピローグですが、おキヌ達にも霊力供給の修業をして、マリア&テレサも茶々丸と同タイプのボディに なりました。
 やるべき事は やりきった感じです。

 これ以降アスナ達は、真面目に受験勉強の日々を過ごす事になるでしょう。

 ここいらで 『見習GSアスナ極楽大作戦!』 は完結とさせていただきます。
 最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

前へ もくじへ