topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.162
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「私も一体ぶっ壊しちゃったけど、弁償とか大丈夫ですよね?」
「任務中の事故だから、請求されたら学園長に!」
 そんな会話をしながら走り続ける一行。
 ひとしきり走り抜き、B6フロアにたどり着いたところで一息つこうとしたが、今度は巨大な多脚ロボが姿を現してビームを撃ってきた。
「もういっちょ文珠ーーーッ!!」
 咄嗟に『鏡』の文珠で反射するが、ビーム食らった多脚ロボはピンピンしている。しかし、その隙に高音が影を使い、ビームを撃っている円筒部分を輪切りにした。
 反射しても全くダメージが無い事から察するに、このロボが撃っているのも脱げビームだ。つまり、これも超一味のロボットだと考えられる。
 高音の一撃でロボは沈黙したので、改めて一息つこうとする一行。しかし、更に多脚ロボが数体と、数十人以上の『田中さん』が姿を現した。
 攻撃は脱げビームだけだが、逆に言えば一発食らえば脱げるのだ。
 しかも使い魔を足止めに使った高音によると、ビームは物理的な衝撃を伴っているとの事。自分の影の服はビームによって脱がされる事は無いが、直撃を食らえば意識を失って脱げる。彼女はそう判断していた。
 その衝撃、横島ならばどれだけ耐えられるかは分からないが、試す訳にもいかない。ここで全員意識を失うとなれば、その後どうなるかも分からない。
 やはりここは食らわない事を前提に動くしかないだろう。
「逃げるぞ!!」
 つまりは逃げの一手だ。この数で波状攻撃を仕掛けられたら、文珠がいくらあっても足りない。
 横島達は再び影の使い魔を足止めに残し、慌ててその場から駆け出した。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.162


「魔法協会、何やってんの!? 地下水道、完全に超のテリトリーやん!!」
「先生達によって定期的に見回りされているはずなのですけど……」
 にも関わらずこの状況という事は、魔法先生達は完全に騙されていたという事になる。こうなってくると別ルートから調査している刀子達が心配になってくる。
「多分、どこかに科学的な隠し扉があるのでしょう」
 横島の背中で揺られながら、夕映はそう分析する。
 おそらくその分析は正しい。魔法による幻影などで姿を隠そうとしても、魔法使い達にはそれを探知する方法がある。しかしその一方で、科学的な隠蔽には弱いのが魔法使い達なのだ。
 立ちふさがるロボをアスナの剣と高音の影が斬り、数が多ければ横島と愛衣が爆炎で吹き飛ばす。
 更に数が多ければ横島と高音で足止めをして逃げる。
 そんな戦いを繰り返しながら逃げ回っていると、横島達は更に地下深く、B7へと追い立てられていった。
 敵の数は段々と増えていき、攻撃は激しくなってくる。
「も、もうダメです……」
 しかも、ここで愛衣に体力・魔法力の限界が訪れた。体力の方が先に尽きてアーティファクト『炎の狐』に乗っていたが、それによって魔法力の消耗が激しくなっていたようだ。
「高音、図書館島のアレ頼む!」
「任せて!」
 横島の言いたい事を察した高音は『黒衣の夜想曲(ノクトゥルナ・ニグレーディニス)』で大きな影の使い魔を召喚。
 愛衣だけでなく夕映と千雨も預かり、自らもゴーレムの背に乗る。これで高音の魔法力の消耗は激しくなるが、仕方がない。
 愛衣が戦えなくなった分は、両手が自由になった横島がフォローしなくてはならない。彼は再び『栄光の手』を出して駆け出し、立ちふさがる『田中さん』を斬り伏せた。
 アスナも『ハマノツルギ』を持って隣に並び、高音も三人を乗せたまま使い魔を飛ばして続く。

 それからも脱げビームの猛攻は続き、横島は更に四つの文珠を消費した。
 直撃こそ食らっていないが、前に立つ横島とアスナは衣服のところどころが吹き飛ばされた状態だ。特にアスナはスカートを丸ごと吹き飛ばされて、スパッツも一部が千切れてしまっている。
 何とかエレベーターにたどり着いて脱出したいが、敵が多過ぎてそれもままならない。
「追い掛け回されている内に、奥深くまで来ちまったな……」
「というか地下何階まであるんですか、ここは……」
 夕映の疑問に答える者はいない。地下水道の見回りに魔法生徒達は関わっていないため、高音達も答える事ができないのだ。
 愛衣が持っていた地図もこの辺りまではフォローされていないようで、一行は当てもなくさまよう迷子の状態である。
「…………」
 そんな中、高音は追いかけてくるロボ達を使い魔であしらいながら、釈然としない顔をしていた。
 青い顔をした愛衣がそれに気付き、声を掛ける。
「お姉様、どうかしたんですか?」
「いえ、私も、想像以上に成長していたのだなと……」
「ああ……」
 それは愛衣にも覚えがある事だった。
 以前の彼女だったら、もっと早くに魔法力が尽きていただろう。高音もここまでは保っていなかったはずだ。
 しかし現実はどうだろう。愛衣はここまで保ち、高音はまだ余裕がある様子で影の使い魔達を操っている。
 アスナもそうだ。数ヶ月前は素人だった彼女が、危ういところはあるものの、彼の隣で見事にサポートをこなしている。
 考えられるのはやはり毎晩の霊力供給の修行だろう。今でも嬉しい半分恥ずかしい半分の煩悩一直線な修行だが、それで霊力を鍛えたおかげで魔法力も増したのだ。愛衣はやはり毎晩横島に身を委ねていてよかったと、彼への敬意と好意を新たにしている。
 高音もあの修行のおかげな事は分かっているのだ。分かっているからこそ釈然としないのだ。やはり有効な修行なのだと、あの修行への忌避感が薄れる自分自身に。
「……今は突き進むのみです!」
 しかし、今は悩んでいる暇は無い。結果として今こうして戦えているのだから、それでいい。そう自分に言い聞かせながら、高音は使い魔を操り続けていた。

 その後も一行は超の隠れ家を探しながら進み続けるが、脱げビームが激しく、落ち着いて探すどころではない。
 戦えない夕映と愛衣も使い魔の背で目をこらすが、それらしいものは見つからなかった。
「……なぁ、ちょっといいか?」
 ここで活路を見出したのは、千雨だった。
「下の方に、でっかい力の反応があるんだけど……」
 ただし、下方向へ続く活路だ。
 いつの間にか『Grimoire Book』を出していた彼女は、ある大きな力の反応を探知していた。
「……その反応の方に行くぞ」
 円筒部を斬り飛ばした多脚ロボ二体でバリケードを作りながら横島は決断する。
 図書館島もそうだったが、重要な場所まで行けば地上に脱出できる直通エレベーターがあるかも知れない。闇雲に探し回るよりも、そちらの方が無事に脱出できる可能性が高いと考えたのだ。
 ロボバリケードを更に文珠で凍らせて強化し、横島達は千雨の誘導に従って進んでいく。
 道を塞いだおかげか、しばらくは余裕を持っていく事ができた。しかし、それも束の間、再び脱げビームの猛攻に晒される事になる。
 B8フロアに降りるが、千雨の言う力の反応は更に下だ。
「ッ! しまった!」
 追撃をかわしながら反応がある方へと進んでいく一行だが、反応に気を取られるあまり途中で水路が途切れている場所に出てしまった。
 そこは大きな吹き抜けになっており、底が見えない。
 背後からは『田中さん』と多脚ロボの集団が迫ってくる。時間が無い。
「千雨ちゃん、反応はどっちだ!?」
「向こう! この吹き抜けの向こう側だ!」
 そう言って彼女が指差す先を見ると、下方に吹き抜けを横切る通路が見えた。
「掴まって横島君! アスナさん!」
 それを見るやいなや、高音が動く。
 影の使い魔の大きな手を伸ばし、二人が掴まるのを確認すると、そのまま吹き抜けに飛び降りた。
 多脚ロボは勢い余ってそのまま吹き抜けに落下。『田中さん』は水路に並んで脱げビームを撃ってくる。
「こなくそ!」
 ここで高音が意識を失えば、全員多脚ロボの後を追う事になる。
 この体勢では文珠を上手く投げられない。横島はサイキックソーサーを操作し、ビームの一発を撃墜、爆発させて他のビームを散らす。
 そのまま無事に通路に着陸。しかし、そこで高音が力尽き倒れた。
「あああ、お姉様脱げちゃう〜!」
 集中が途切れた事で彼女の影が消え、影の服も消えてしまうが、今も脱げビームが降り注いでいるためそれどころではない。
「千雨ちゃん、反応は!?」
「このフロアだ! 多分、通路の向こう側!」
「よし、行くぞ!」
 千雨はアスナが背負い、愛衣が夕映の手を引く。脱げた高音は横島が抱き上げ、皆必死に通路を走った。当然高音の豊満な肢体が彼の目の前にさらされる事になるが、それでも横島は暴走せずにひた走った。
 その間も容赦無く降り注ぐ脱げビーム。ここで脱がされては色々な意味でまずい。
 ここで横島は一旦足を止めて振り返る。
「煩悩ビィーーームッ!!」
 額から湧き上がったばかりの煩悩を発射。『田中さん』達の足元を破壊して、数人に多脚ロボと同じ運命をたどらせる。
 これにより止む脱げビーム。その隙を逃さず、横島達は死に物狂いで通路を走り抜けた。
 なおそれでも煩悩が尽きなかった横島は、アスナ達を追い抜いては煩悩光線を発射。その間にアスナ達が先に行くと再び追い抜いて発射を繰り返し、撤退を支援していた。
 彼等が無事に通路を抜ける事ができたのは……高音のおかげであろう。

 向こう岸に待っていたのは巨大な扉。すぐ側に世界樹だと思われる巨大な木の根がある。それを見た愛衣は、ここは昔の魔法使いの遺跡ではないかと言い出した。
 真相は分からないが、千雨が言うには力の反応は扉の向こうだ。脱げた高音を愛衣と夕映に預け、横島が扉を開く。
 真っ先に中を見た横島は、そこにいた集団の姿を確認すると、飛び退いて身構えた。
「……?」
 何事かとアスナも身構えるが、様子がおかしい。
 恐る恐る中に入り、そして横島は大きなため息をつく。
「驚かせんなよ……」
 そこにいたのは『田中さん』の集団だった。おそらく100体以上はいるだろう。
 だが、どうやら起動していないようで、横島達に続きアスナ達が入ってきても何の反応も示さない。
 扉の中はかなり広い空間で、壁や天井を見た感じ人工的に造られたものだと考えられる。
「なんだここは、超の兵器庫か……?」
 千雨は怪訝そうな顔で辺りを見回す。
 そうしつついつの間にか横島の隣に移動しているのは、安心感を求めての事だろう。
 夕映の方は好奇心を刺激されたのか、『田中さん』に近付き観察していた。
 アスナと愛衣は、高音をいつまでも脱げたままにしておく訳にはいかないと『田中さん』の服を拝借できまいかと調べていた。
 こういうものを調べるならば、千雨の『Grimoire Book』の出番だ。
 高音がジャンパーを着せられ、腰にも巻かれたのを確認すると、アスナの下に千雨を連れて行って、『田中さん』から調べてもらう事にする。
 夕映もそれに合流したのを確認した横島は、調べている間にこの空間の全容を把握しておこうと一人奥の方へと進んでいく。
 『田中さん』はただのロボットだ。千雨が感知していた大きな力は別にある。それを見つけるまでは油断できない。
 奥へと進んでいくと、途中から並んでいるロボが多脚ロボに変わった。更に進むと人工的な壁・天井が途切れて無数の木が生え並ぶ地底湖が現れる。その光景は図書館島の最深部に近い。
「…………」
 だが、横島はそれ以外のものに目を奪われていた。
 湖の中に鎮座する巨大な影。
 ロボだ。多脚ロボの数倍の大きさはありそうな巨大ロボの上半身がそこにあった。
 超の技術力が異常なのは今更言うまでもないが、それ以上に横島には気になる事があった。
 その巨大ロボから、霊力のような力が感じられるのだ。おそらく千雨が感知していた大きな力の正体はこれだろう。
 そこにどこかで感じたような気配を感じ取った横島は、その姿を見上げながらポツリと呟いた。
 「こいつ……『究極の魔体』みたいだ」と……。





つづく


あとがき

 麻帆良学園都市の地下水道は意外ときれい。
 魔法使い達の隠し通路として使われている。

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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