topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.164
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「この気配…………もしかして、フェイトじゃないか?」
「フェイトですって!?」
「それ本当なの!?」
 横島の言葉に反応したのは刀子とシャークティ。無理もない。それは関東魔法協会にとっては因縁の名だ。
 学園長・近衛近右衛門のかつての直弟子であり、同門の魔法生徒達を殺害し魔法協会を裏切った者。
 関西呪術協会を襲撃し、東西の大戦を引き起こした黒幕。
 そして、アスナ達の修学旅行で木乃香を狙い、両面宿儺の復活を目論んだ男だ。
 今は麻帆良祭の時期に合わせて力を高めるという世界樹『神木・蟠桃』を狙っているという。
「横島さん、それって超さんがフェイトと組んでるって事ですか?」
「…………断言はできん」
 霊視の結果は二人がここにいた事を示しているが、二人が同時にここにいた証拠でもない。なので現時点では両者の関係を断定する事はできないが、極めて怪しい事は否定できなかった。横島自身超とは知らない仲ではないので、信じたいという面もあったかもしれない。
「……学園長に連絡しましょうか。ここと、地下で手に入れたデータも渡して」
「そうですね。そこから先は学園長が判断なさるでしょう」
 シャークティの判断に高音も同意し、一行は情報操作の内容等証拠となるデータをコピーし終えると、速やかに離脱する事にした。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.164


 その後地上に出た横島達は、人目を忍んで一旦レーベンスシュルト城に戻った。
 臭いはあまり気にならなかったとはいえ下水道。再び祭の会場に出る前に一風呂浴びておきたかったのだ。
「横島さぁ〜ん 一緒に入って時間節約しませんかぁ〜?」
「色ボケんな、横島2号! さっさと入ってこい!」
 アスナがいつもの調子だったが、千雨が華麗にインターセプト。
 ちなみに千雨と夕映は、集めたデータを学園長に報告できる形にするためお風呂は後回しにして、最初にアスナ達、次に横島、最後に千雨と夕映がデータをまとめ終えてからという順番だ。
「千雨ちゃん達こそ、先に入ってきていいんだぞ?」
「……そこまで臭う訳じゃないからな、こっち優先だ」
「そうですね、急ぎましょう」
 むしろ男らしい事を言う千雨と夕映。千雨の方は、内心厄介事をさっさとパスしてしまいたいという思いがあった。
 なおアスナは、横島が来るのを待ち構えてわざと横島と鉢合わせになろうとしたが、高音に叱られて一緒に戻ってきたので、続けて横島が入浴する。
 刀子とシャークティは、まとめられたデータを受け取ると、すぐに学園長に報告しに行った。
 そして軽く入浴を済ませた横島が戻ってくると、入れ替わりに千雨と夕映がお風呂へと向かう。
 美空はこれ以上の厄介事はゴメンだと言わんばかりに、早々にココネを連れて出掛けていったので、横島とアスナ、高音と愛衣の四人で、二人が上がってくるのを待つ。
 横島がお風呂に入っている間に、愛衣が軽食と飲み物を用意してくれていた。
 四人が座るテーブル、その隣のテーブルの上には、プリントアウトされたデータ資料一式がある。学園長に提出する以外にも手元に残しておくために用意したものだ。
 そちらに視線がいってしまい、待っている間に話題になるのは、おのずと地下で見た光景と超の事になっていた。
「超鈴音……本当にフェイトと手を組んでいるのかしら……?」
 そう呟く高音の表情は、超への反感が露わになっている。愛衣も何も言わないが、怯えが見えた。フェイトの名は、魔法使い達にとってそれだけ重いという事だろう。
「……横島さんは。超がフェイトとグルなんて……そんな事ないですよね?」
 アスナがおずおずと問い掛ける。
 普段から色々と正体不明の怪しい子だとは思っていたが、まさかこういう方向だとは思ってもいなかったのだろう。
 疑いたくないが、状況証拠はある。クラスメイトを信じたいアスナは不安気な表情だ。
「う〜ん……」
 対する横島はどこか歯切れが悪い。
 超を疑っているのではない。かといって信じると言い切れるほど彼女の事を知っている訳でもない。
 なんだかんだといって可愛い少女なので信じてあげたいところだが、なけなしの学習能力が「どうせそんな事だろうと思ったよー!」と言う羽目になる事を警告している。
 そんな彼が気になっているのはただ一点。

「……あいつ、素直にフェイトに従うタマか?」

 そう、フェイトの下でおとなしくしている超を、どうしてもイメージできなかったのだ。
「それは……」
 高音は絶句している。
「あ〜……超さんなら従ったフリして裏でトンでもない事企んでるかも」
「何をですかっ!?」
 そしてアスナは納得し、愛衣が思わずツっこんだ。
 実は超の方が黒幕であっても驚かない。それが全員の共通認識だった。
「それより気になるのは、あの究極の魔体モドキだ」
「文珠で壊したのでは?」
「確実に壊したとは思うけど、そもそもアレの情報をどこで手に入れたのか……」
「当時の映像記録を見たとか?」
「いや、あの辺のデータは破棄されたらしいぞ」
 これはかつて美智恵から聞いた話だ。
 何らかの工作とかそういうレベルの話ではなく、インパクトで言えば究極の魔体すら霞む、あの二柱の映像を残しておく訳にはいかなかったらしい。
「というかあれ、外から見るだけで分かるか? 俺は分からんぞ」
 アスナと愛衣の視線が、この場で一番成績の良い高音に向くが、彼女は両手を上げてぷるぷると頭を振る。そうだ、普通はできる訳がない。
 こちらも超ならばもしかして……と思わせる怖さがあるが、やはり確信を持つには至らなかった。
「アシュタロスがアレ隠してたのは小笠原諸島だから行けなくもないけど、あいつアシュタロスとも組んでたって事か?」
 他に情報を手に入れる手段は無いかと考え、ふとアシュタロスの下で超がハニワ兵達と一緒に究極の魔体を作っている姿が浮かんだが、流石にそれは無いと頭を振る。
 アスナ達も同意したが、心のどこかで「超ならばやりかねないのでは……?」という思いが燻っていた。
 皆が微妙な顔をして唸る中、横島はふとテーブルの上にあった一枚の写真を手に取る。究極の魔体モドキを正面から映したものだ。
 地下で見た時は究極の魔体に似ていると思ったが、こうして見ると本物よりもメカメカしい気がする。怪獣がメカ怪獣になって帰ってきたかのようだ。
 すると隣に座っていたアスナが身を寄せ、その写真を覗き込んでくる。
「横島さん、このロボの事なんですけど……」
「どうかしたのか?」
「私、究極の魔体っていうのは知らないせいか、あっちに似てる気がするんですよね……京都で見た両面宿儺に」
「…………」
 横島は改めて食い入るように写真を見てみた。確かに似てなくもない。究極の魔体と両面宿儺、どちらに似ているかと問われれば迷って答えが出せないだろう。
 高音と愛衣はどちらも見た事が無いので、何とも言えなかった。
「……こうなったら美神さんに見せてみようか」
「令子さんにですか?」
「ああ、美神さんも究極の魔体と戦った一人だし、俺よりその手の知識はあるはずだ」
「なるほど……」
 この手の情報は美智恵の方が詳しそうだが、令子はなんといっても横島と共に最初から最後まで究極の魔体と戦ったのだ。ロボットの専門知識が無くとも働く直感、霊感があるだろう。
「ユエちゃん達が上がってきたら、行ってみます?」
「そうだな。おキヌちゃん達と合流するって話だったから……派手そうなところに行ってみるか」
「あの方、派手好きなんですか? 意外というか」
「いや、千草と月詠が一緒のはずだから、多分月詠があれ行きたい、これ行きたいって言ってると思う」
「ああ……」
 横島の推論に、三人は納得し頷いた。
 お風呂から上がってきた二人にその事を話すと、まず夕映が目を輝かせて同意した。千雨の方は厄介事に巻き込まれたくないタイプだったが、こういう時は横島と一緒の方が安全だろうという事で、こちらも同行する事になる。
 その後彼等は千雨と夕映も連れて令子を探しに行くが、特に急ぎという訳ではないのでその歩みは祭りを楽しみながらのゆったりしたものであった。


「カウント10! ネギ・スプリングフィールド選手優勝ーーーッ!!」
 横島達の出し物巡りが三軒目に突入した頃、まほら武闘会ではネギが見事優勝を勝ち取っていた。
 アルビレオ・イマ、犬豪院ポチ、真名、そして決勝ではタカミチ・T・高畑と、連続する激戦を制しての優勝だ。
 数々の名勝負、そして語り継がれるであろうドラマが生まれた武闘会だったが、その辺りは割愛してとにかく優勝である。
 すました顔の超が閉会を宣言する中、のどかにまき絵、それに小太郎達に囲まれて祝福を受けるネギ。
 しかし高畑はその輪に加わらず、そっとその場を離れる。
 アキラだけがその動きに気付いたが、教師だから仕事があるのではと考えて少し首を傾げるだけだった。

 それから高畑はガンドルフィーニをはじめとする魔法先生達と合流し、情報を受け取る。
 それを見た彼は、まず眉をひそめた。
 情報は言うまでもないが、刀子達が学園長に報告した地下の件、そしてまほら武闘会に関する情報操作の件だ。
 彼もかつては超の担任だったため思うところはあるが、この情報が事実ならば、どう考えて拘束やむなしである。
 閉会宣言を終えて控室に戻ろうとする超を、渡り廊下で捕捉。高畑含む六人の魔法先生で取り囲む。
「待ちなさい、超君」
「やぁ、高畑先生。これはこれは皆様もお揃いで……お仕事お疲れ様ネ」
 しかし、超は余裕の態度を崩さない。高畑もそれは意に介さずに話を続ける。
「職員室まで来てもらおう、超君。君にいくつか話を聞きたい」
「何の罪でカナ?」
「罪じゃないよ、ただ話を聞きたいだけさ。あの情報操作も、情報公開を控えた今じゃ罪って程じゃあないしね」
「むしろ下準備になったんじゃないカナ?」
「いやいや、下準備はこちらの仕事さ。勝手にやられちゃうと予定が狂っちゃうんだよね」
「おや、それは申し訳ないネ」
 談笑するような雰囲気の二人、それを見てガンドルフィーニが激昂するが、高畑はそれを手で制して続ける。
「でも学校の敷地内に、勝手に秘密基地を造ったのはまずかったね」
「アイヤ、バレてしまたか」
 高畑の指摘は職員室に連行されても文句を言えない内容だったが、それでも超は悪びれない。
「その秘密基地に……フェイトが出入りしていたらしいんだけど、職員室で詳しく話を聞かせてくれるかな?」
 しかし、この一言で彼女の纏う雰囲気が変わった。
 眉をピクリと動かしただけで表情はほとんど変わらなかったのは、流石としか言いようがない。
「……さて、どうしたものかナ?」
「とぼけても無駄だ! 強引にでも連れて行くぞ!!」
 ここでガンドルフィーニが瀬流彦を伴い動く。高畑もそれを止めず、自らも一歩踏み出した。
 しかし超は避けようとも迎え撃とうともせず、ただ袖の中から何かを取り出す。
「三日目にまた会おう。魔法使いの諸君
 彼女の口がその言葉を紡いだ次の瞬間、その姿がふっと掻き消えた。
 飛びかかろうとしていたガンドルフィーニがたたらを踏む。単に姿を消したのではなく、完全にその場からいなくなっている。
 呆然と立ち尽くす六人の耳に、まほら武闘会の終了を告げる和美のアナウンスが虚しく響いた。





つづく


あとがき

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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