topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.185
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「超必殺! 漢気光線ッ!!」

 魔法使いの従者(ミニステル・マギ)の召喚。仮契約(パクティオー)カードの機能が脳裏に浮かんだ瞬間、光の奔流が怒涛のごとくフェイトの身体を飲み込んだ。
 地面に叩きつけられるフェイト。そしてバランスを崩して地面に向かって真っ逆さまに落ちていく豪徳寺。そうなる事は分かっていたため、ネギは慌てず後を追い、墜落する前に豪徳寺の手を掴む。
 そのまま無事地面に降り立つと、二人はフェイトに近付いた。
「なっ……!? いないぞ、ネギ君!!」
 路面に大きなクレーターができていたが、その中心にいるはずのフェイトの姿が無い。
 ネギは怪訝そうな顔をしながらクレーターの中心に近付く。しゃがんで地面を調べると、石とは違う小さな欠片を拾い上げた。
「それは……?」
「何かまでは分かりませんが、これはおそらくマジックアイテムの一部です。微かに魔法力を感じます」
「フェイトが残していったのか?」
「いえ、おそらくですが……これに魂の一部を宿していたのではないでしょうか」
「なん……だと……?」
 魔法の中でも邪悪な魔法とされる『自分の魂を分割して、魔法の道具に宿す』魔法。フェイトをこれを使い、自分の魂を複数のマジックアイテムに宿している。
 マジックアイテムを破壊しない限り、絶対に倒せない。そういう魔法を使っていたのだとネギは説明する。
 ここにフェイトの姿が無いのは、どこかに逃げたのではなく、マジックアイテムが破壊された事で消滅してしまったためだろう。
「それはつまり、フェイトは自分の弱点を持ち歩いていたのか?」
「魂を宿したマジックアイテムから、あまり離れられないとか制約があるんでしょうね。それを誰かに預けられるような性格をしているとも思えませんし」
「……なるほど」
 確かに、誰かを信用して預けるというのは無さそうだ。
 それゆえに自分で持ち歩き、マジックアイテムを破壊されたとすると、彼の最大の敗因は誰も信じられなかった事かもしれない。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.185


「しかし、これでフェイトを倒せたのか?」
「この分身体に関しては。ですが、魂を分割しているんです。まだいると思いますよ。というか、横島さんも以前に一体倒しているはずですし」
「い、いつの間に……」
 修学旅行で京都に行く前の話である。

「だが、そうなると……ここでフェイトを倒したが、これから行く先の儀式場にもフェイトがいる可能性があるのか?」
「その可能性はありますね、急ぎましょう」
 先行している小太郎達が、向こうでもフェイトと遭遇するかもしれない。そう考えたネギが駆け出す。
「まったく、訳が分からんな……」
 豪徳寺は大きなため息をひとつついてからその後を追った。



 一方その頃、横島達は鈴音一味の隠れ家、その地下を捜索していた。
 地下は思いのほか広く、キッチンや仮眠室、シャワーなどもあって、最低限ここで生活できるだけの設備が整えられていた。
「また便利そうなとこでおますなぁ」
「そうアルか? あんまり住み心地は良くなさそうアル」
 月詠と古菲の言う通り、あくまで最低限。便利ではあるが、お世辞にも居住環境が良いとは言えないだろう。
 とはいえここを利用していたと考えられるのは鈴音とハカセと真名、誰一人としてその辺りは気にしなさそうではある。
 また、ここが直接地下水道とつながっている事も確認できた。
「ここを使って出入りしてたのね」
「というか、この学園都市なんなの?」
 アスナは慣れた反応だが、令子は呆れ顔である。
「美神さんだって色々やってるじゃないスか」
「あれは私一人でやってるんだから、大した規模じゃないわよ」
 その後の「エミもやってるかもしれないけど」という呟きを横島は聞き逃さなかったが、あえてスルーした。
 それはともかく、確かに個人レベルのものと関東魔法協会全体で使っているものでは規模が違うだろう。
 少なくとも令子は東京のいたるところにセーフハウスなど持ってはいない……と思いたいところだが、公衆トイレの隠し地下室の事を考えると、無いとは言い切れないのが怖いところだ。

 それはともかく、防衛設備などが無い事を確認しながら、そして監視カメラの類も壊しながら地下深くまで進んでいくと、一行は小さな部屋にたどり着いた。
 部屋の中にはレーベンスシュルト城のような大きな魔法のボトルと、それを置く台座、そして更に奥へと続く扉しかない。
 シロと月詠が油断無く扉に近付くが、鍵が掛かっており開ける事はできなかった。
「斬ります?」
「いや、こいつを調べてからだ」
 そう言って横島が魔法のボトルを指差すと、月詠はコクリと小さくうなずいて構えを解いた。
 台座は十字型をしており、ボトルの形状から四方にも魔法のボトルを置いて接続できそうに見えた。別荘や修行場とつなげているレーベンスシュルト城と同じようなものだろう。
 ただ、ボトルの中身は大きく異なっていた。中の建物はシンプルな四角い建物が並んでいて、何か所かに『超包子』のロゴマークが描かれている。
 特に立方体の建物が目立っていて、それの一面は壁の半分以上を占める縦長のシャッターになっていた。
 それらの外見から抱く印象は、工業地帯だ。立方体の建物は高さと横幅が同じため低く見えるが、他の建物が工場並のサイズとすれば、かなり大きいだろう。
 地面は砂利のようで、ヘリポートらしき場所も見えるが、そこにヘリポートマーキングではなく魔法陣が描かれていた。
「ねえねえ、横島さん。あのマークってアレですよね、レーベンスシュルト城にある、他の場所に転移するための」
「多分な」
「建物とちぐはぐねぇ」
 アーニャの言う通り、和洋折衷のようなちぐはぐさがある。いや、魔法と科学の融合というべきか。
「…………あ、思い出した」
 ここで令子が声を上げた。
「令子さん、知ってるのか?」
「いや、似たようなのを思い出したんだけど……あの立方体の建物、ロケット組み立て棟に似てるんだわ」
「ロケットって、宇宙に飛ぶアレですか?」
「そうそう」
「それでは、ここでロケットを作ってるでござるか?」
「いや、流石にロケットは……」
 シロの問い掛けに答えようとしたところで令子の動きが止まった。
 ぎこちない動きで周りを見回してみると、横島と千雨の二人だけが顔を青ざめさせている。
 二人も気付いたのだろう。この中が工場だとすれば、一体何を作る工場なのか。
 そして、今も地上で暴れているロボット軍団や『究極の魔体』モドキが、どこで作られたのか。
 そう、ここだ。この魔法のボトルの中こそが、鈴音のロボット工場なのだ。
 『究極の魔体』モドキは、一番大きな立方体の建物で組み立てられたに違いない。
 ここまで研究室や開発室のような場所が無かったのも、全てこの魔法のボトルの中にあるから外には必要無かったのだろう。
「そうか、魔法のボトルの中に工場があるなら、場所を取らない!」
「あんな大量に、どこで作ったのかと思ってたら……」
 作ったものを移動させるのにも魔法のボトルを使ったのだろう。四方に接続したボトルに転移でロボット軍団を移し、ボトルを移動させる。そうする事で鈴音達は密かにロボット軍団を移動させたのだ。
 湖から現れたロボット軍団も、おそらく湖の中に魔法のボトルを仕込んでいるのだろう。
 そう説明するとアスナ達も理解したようで、まじまじとボトルを覗き込む。
「もしかして、今も作られてるアルか?」
「どないやろなぁ、おかわりを用意してる可能性もあるけど……」
「中に入って、工場を止めるでござる!」
「いや、それよりボトルそのもの壊した方が早くない?」
 アスナがそう提案すると、皆の視線が集まった。
「えっと、壊すと中が出てきたりしないの?」
 その令子の疑問には横島が答える。
「あ、それは大丈夫ですよ。俺、城が入ってたフェイトの水晶球を壊したけど、中身はそのまま消えました」
 なお、城の中に脱ぎ捨てた服ごとである。
 とにかく、この場でボトルを破壊してしまっても、横島達には問題が無いという事だ。
 皆で顔を見合わせ、そしてうなずき合う。言葉にしなくても分かる。皆の意志は既にボトル破壊に向かっていた。
「そういう事なら、壊しちゃおうか」
『あ〜、それはちょっと待ってほしいネ』
 いざ破壊しようと横島が文珠を出した時、小さな部屋の中に鈴音の声が響いた。彼女の声そのものではなく、機械を通してであろう音声だ。
『そこはもう動かしてないから、壊さないでもらえるかナ? 結構お金が掛かってるね』
「……横島君」
 お金と聞いて、令子が真っ先に反応した。
 横島も、令子が止めるならばと文珠の使用を止める。
 自然と皆の視線が奥へと続く扉に集まった。
『その通り、私はその扉の先にいるネ』
 その言葉と同時に扉が開く。鈴音側でロックを外したようだ。
 横島を先頭に警戒しながら扉をくぐると、広い指令室のような場所に出た。そこにはハカセと真名の姿は無く、鈴音一人だけが大きなモニタを背に椅子に座っている。
「パパ、ママ、ようこそ私の秘密基地へ」
 彼女は座ったまま不敵に笑った。
「あのボトル壊すの泣いて止めたのに、偉そうにしても説得力無いわよ」
 しかし、すぐさま令子が攻撃ならぬ口撃を仕掛けた。
「いや、泣いてないネ。というか、アレを用意するのにいくら掛かったか、ママなら分かってくれると思ったけど?」
「…………」
 だが、鈴音も負けていない。令子ならば大金が掛かっている事を正確に理解するであろう事と、それを無駄にする事を許せないであろう事を的確に見抜いて反撃した。
 令子は肯定するのもくやしいのか、何も答える事ができない。
 すると鈴音は勝ち誇った顔で立ち上がり、アスナ達に向けて両手を広げた。その姿からは余裕も感じられる。
「フフフ……思ってたより少なかったけど、まぁ、それだけいれば十分ネ」
「な、なによ……この人数に勝てると思ってるの? おとなしく降伏しなさい!」
 アスナが神通棍を伸ばして構えるが、鈴音の余裕の態度は崩れない。
 それどころか両手を広げたまま一歩、また一歩と近付いてくる。
 何かヤバい。そう感じた横島は両者の間に割って入った。
 すると鈴音は足を止めたが、そのまま立ち止まり、下がろうとはしない。
 しかし、それは横島を警戒しての事ではなかった。鈴音は近付かないのではない。彼女にとってはその距離で十分だったのだ。
 彼女は両手を広げた態勢のまま、横島――ではなくアスナ達に向けて言葉を投げ掛ける。

「私の味方になれば、世界の半分をやろう! ……じゃなくて、ママと呼んであげるネ♪
「……へっ?」

 呆気にとられるアスナ達。対する鈴音は、それはもう楽しそうな笑顔で彼女達を見ていた。





つづく


あとがき

 超鈴音、フェイト・アーウェルンクスに関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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