topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.204
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 水晶球の中で24時間を過ごし、パーティーが無事に終了。皆も帰路についた。
 外では1時間しか過ぎていないため、時間は大体夜10時。いつもならばもっと遅く、深夜になっていただろう。
 この時間でも六女の寮生達は門限を過ぎているが、この後六道夫人が送っていく事になっているので問題無い。
 アスナ達は、せっかくなので時間の流れを元に戻して水晶球の中でもう一泊。こうして無事に東京に戻っての初日は過ぎていった。

 そして翌朝、家の事は一旦タマモ達に任せて、横島とエヴァ達は妙神山に向けて出発する。
 メンバーは横島、エヴァ、茶々丸、チャチャゼロ、すらむぃ、あめ子、ぷりん、千草、月詠だ。すらむぃ、あめ子、ぷりんはエヴァの持つ『封魔の瓶(ラゲーナ・シグナートーリア)』の中に入っている。
 妙神山に行く事を考えれば遅いぐらいの時間なのだが、最寄りの駅からは魔法や式神で飛ぶので問題は無い。
 事実一行は、昼前には妙神山に到着していた。

「ほう、鬼門の試練か……」
「ああ、修業しに来た訳じゃないから素通りでいいぞ」
「出番が!?」
 悲鳴のような声を出す鬼門を見て、月詠がスラリと小太刀を抜く。
「ウチはある意味修業みたいなもんやけど……やります?」
「どうぞ、お通りください」
 こうして鬼門達の試練は省略となった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.204


 中に入った一行を出迎えたのは、小竜姫、ヒャクメ、パピリオ、そしてメドーサ。流石に猿神(ハヌマン)は出てきていないようだ。
 ヒャクメとパピリオはにこやかに出迎えてくれたが、小竜姫は真剣な表情でこちらを見据えている。いや、正確には月詠1人を見据えている。
 月詠をここに連れてきたのは、元々戦闘狂の彼女を更生してもらうためだった。顔は知らないはずだが、小竜姫は一目で彼女が更生対象だと気付いたようだ。
 月詠も念願の小竜姫を前にして興奮しているようで、今にも斬り掛かりそうになっている。
 そしてメドーサは、そんな小竜姫と月詠を交互に見てくっくっくっと笑っていた。

 ここでいの一番で動いたのは千草。月詠の手を引き、小竜姫の前まで連れていく。
「あなたが小竜姫様ですか? この子の事、どうかよろしくお願いします! 根は……良くはないかもしれないけど、それだけの子やないんです! ほら、あんたも頭下げ!」
「ちょっ、千草はん……」
 そして自身も頭を下げて挨拶しつつ、月詠にも頭を下げさせた。
「えっ、あ、はい。大丈夫ですよ。お任せください」
 予想外だったのか、小竜姫は呆気に取られて戸惑っている様子だ。その困った様子を見て、メドーサが笑いをこらえて肩を震わせていた。
 小竜姫も彼女の態度に気付いてこめかみをひくひくとさせていたが、ここは真面目に話を進めるべきだとメドーサの事は丁重にスルーして、千草と月詠を建物の中へと案内する。
 三人の後ろ姿は、たとえるならば先生と、生徒と、保護者といったところだろうか。

 一方エヴァの方は、ヒャクメがずずいと無遠慮に近付いてその顔を覗き込んでいた。
「ふんふん、こりゃまた複雑に絡み合った呪いなのねー」
「……解呪できそうか?」
「時間は掛かるけど、順番に解いていけば?」
「どれくらい掛かりそうだ? 夏休みが終わると『登校地獄(インフェルヌス・スコラスティクス)』が発動するから、それまでに終わらせてほしいのだが……」
「その時は私が麻帆良に行ってあげるのねー」
 軽く言っているが、逆に言えば呪いを一目見たヒャクメは、一ヶ月で解呪できるかどうか分からないと判断したともいえる。
 それに気付いたエヴァは小さく舌打ちする。
「チッ、別荘だけでも持ってくるべきだったか」
 そのつぶやきに気付いたパピリオが横島に近付いてきて、「あれはどういう事でちゅか?」と尋ねてきた。そこで横島は、魔法の水晶球について説明する。
「それを使えば、外の1時間が中の24時間にできるから、それを使って解呪までの時間を稼げると考えたんだろうな」
「なにそれ!? そんな面白そうなのがあるの!?」
 そしてそれを聞き逃さず、一番興味を持ったのはヒャクメだった。
「メドーサ、パピリオ! 小竜姫のフォローお願いねー!」
「はっ?」
「えっ?」
「百聞は一見に如かずっ!!」
 こうなった時のヒャクメは素早い。ここは任せるとメドーサとパピリオに押し付け、自らはエヴァ、茶々丸、横島の三人を連れて転移で姿を消してしまった。
「あいつ、横島まで連れていきやがった……!」
 残されたメドーサが、わなわなと震えていたのはいうまでもない。
 もっとも、かつてのエヴァは危険な賞金首。『登校地獄』の件を事前に聞いていたヒャクメは、その辺りについても調べていた。それを抜きにしても茶々丸の頭の上に乗っているチャチャゼロが怖い。ヒャクメがボディガードとして横島を求めるのも無理のない話である。
 危険といえば月詠もだ。メドーサは昔取った杵柄か、彼女の狂人っぷりを見抜いていた。真面目なだけの小竜姫では、対応しきれないかもしれないと。
 仕方がないと大きくため息をついたメドーサは、ヒャクメの言う通り、小竜姫のフォローをするために建物に入っていった。
 内心、彼女が月詠のノリに翻弄されていたらからかってやろうと考えながら。


 ところ変わって麻帆良学園都市。転移したヒャクメ達が姿を現したのは、麻帆良学園都市につながる橋の上、かつてエヴァとネギが戦った場所だった。麻帆良を守る結界に気付き、直接中に転移するのを避けたのである。
「じゃあ、その別荘があるところに案内してほしいのねー」
「……構わんが、神族が出歩いてもいいのか?」
「私は神族の調査官。情報公開を控えている魔法使いの調査に来ただけだから!」
「ものは言いようだな、オイ」
 とはいえ『登校地獄』の事を考えると、麻帆良内で解呪ができるのはありがたい。魔法の水晶球を使えばタイムリミットを引き延ばす事もできる。
 戻ってきたならば、別荘よりもレーベンスシュルト城を使った方が良いかもしれない。
「『登校地獄』解呪の間なら、こいつの滞在費用も学園長に請求する事ができるか……?」
 しかも諸経費は学園長持ちにできると、エヴァはほくそ笑んでいた。実際、学園長達ではどうにもできなかった『登校地獄』を解呪してもらうのだから、それぐらいはしてもらっても罰は当たるまい。
 となれば善は急げである。流石にここから町中を飛んで帰る訳にはいかないので、一行は途中でバスに乗って帰路についた。
 無論、解呪の件で神族のヒャクメに来てもらった事を学園長に連絡する事は忘れない。
 そのため一行が家に着く頃には、学園長が高畑と明石教授が揃って待ち構えていた。
 そして家に入るよりも早くに始まる堅苦しい挨拶。ヒャクメも面倒そうだったが、これを無視する訳にはいかず、素直に受けている。
 その間、横島は少し距離を取って待機していたのだが、そこに明石教授が近付いてきた。
「横島君、裕奈が迷惑を掛けてないかい?」
「まだ1日目ですよ。昨日も皆集まってのパーティーでしたし」
「皆?」
「俺の知り合い達です」
「……GS関係の人達かな?」
「え〜っと、『B.A.B.E.L.』の人達もいたけど、大体は」
 つまりはオカルト業界トップクラスの人達が揃っていたという事である。
 六道夫人を筆頭に業界トップクラスのGSである令子とエミ、GS協会幹部の唐巣、オカルトGメンの実質トップ美智恵にエースの西条、そして『B.A.B.E.L.』の局長桐壺。
 自分も会った事がないであろう雲上人達がいたであろう状況を想像し、明石教授は冷や汗を垂らした。娘が何か粗相をやらかさなかったかと。
 現実は賑やかな宴会のノリだったのでそんな心配は無用なのだが、裕奈も率先して輪に混じり騒いでいた事については秘密にしておいた方が良いだろう。明石教授の胃のためにも。
 そんな話をしている内に挨拶は終わり、学園長達は解呪中の諸々を手配するために帰って行った。ヒャクメ滞在中の諸経費については、『登校地獄』を解呪できないまま長年麻帆良に縛り付けていた負い目があるため全額負担してくれるそうだ。
 すらむぃ、あめ子、ぷりんを『封魔の瓶』から出していつも通りに周辺の警備に就かせ、エヴァ達だけで地下に降りていく。
「そういえば横島は、今日はどうするんだ?」
「う〜ん、レーベンスシュルト城で1日休んだら帰るかな。昨日はなんだかんだで疲れたし」
 ついでに言うと、流石に今から1人で妙神山に戻るのは現実的ではないので、帰るのは自宅の方になるだろう。
「えっ? 横島さん帰っちゃうの? ボディガードに連れてきたのに!」
「ここならいらんだろう。麻帆良限定なら多分一番安全な場所だぞ。日本全国で見ると美神さんが物凄い核シェルターとか用意してそうで微妙だけど」
「いや、そっちの安全じゃなくて……」
「自分から転移しておいて、何を言ってるんだこいつは」
 チラリと向けられた視線に気付き、エヴァはすかさずツッコんだ。
 事実、好奇心に負けて妙神山から飛び出してきたのはヒャクメである。
「そんな怖がる必要は無いと思うぞ。こいつ割とマスコット枠だし」
「誰がマスコットだ」
 エヴァは軽くキックを入れたが、これぐらいは軽いじゃれ合いである。その兄妹のようなやり取りを見ていたヒャクメも、これならば大丈夫かもと考え直していた。

 そしてレーベンスシュルト城に入ったヒャクメは、まずその広大さに驚き、次にこういうものが一年もすれば人間界に出回ると聞いて二度驚いた。
 続けて本城の豪華さに恐れおののき、最後に解呪の間はここで過ごせる事に気付いて喜んだ。
「……わざと長引かせようとするなよ?」
「そ、そんな事しないのねー」
 その返事を怪しんだエヴァは、早く解呪できればしばらくここで豪遊しても良いという条件を付けた。どうせ諸経費は学園長持ちである。
 ヒャクメはそれでやる気を漲らせていたので、思いのほか早く解呪できるかもしれない。
 その後はレーベンスシュルト城での滞在を楽しむのだろうが、彼女の滞在中については茶々丸の姉達がお世話してくれるだろう。

 結局横島は、ヒャクメが不安がっていたのでレーベンスシュルト城で一泊。
 夜の内に、解呪できるまで会えないのだからとベッドに縛り付けられ、エヴァにたんまりねっとりと吸われたのは秘密である。
 なおヒャクメには丸見えだったらしく、翌日には何故かエヴァに対して敬意をはらうようになっていたらしい。
 それはともかく、外ではまだ一時間しか経っていない。一旦全員で外に出た横島が妙神山に連絡を取ってみたところ、電話に出たのはパピリオだった。
 既に小竜姫と月詠の戦いは始まっているらしく、小竜姫は電話に出られない状態のようだ。
「それって大丈夫なのか?」
「戦うだけなら、大丈夫だと思うでちゅ。月詠って大した事ないし」
 彼女を大した事ないと言えるあたりは、流石パピリオである。
 なお小竜姫の方は、戦いにおいては月詠を軽くあしらえるが、会話だと逆に翻弄されてしまうらしい。その辺りはメドーサが上手くフォローしてくれているようだ。
「一通り暴れないと落ち着かなさそうだから、小竜姫は電話には出られないでちゅよ」
「ああ、それじゃ千草の方はどうしてる?」
「さっきメドーサと、夏の間ここで修業するって話してて、今は鬼門と戦ってるでちゅ」
「ああ、鬼門の試練を受け直してるのか」
 彼女もオカルト業界の人間だ。この機会は逃せないと考えたのだろう。
 強力な式神を使う陰陽師、試練も無事に突破できるはずだ。
「あのオバチャンは、優しいから気に入ったでちゅ! ここで修業するならサービスしてやるでちゅ!」
「……パピリオ、サービスするなら『お姉さん』と呼んでやってくれ」
 横島は横島で、千草をフォローしておいた。
 そして電話を終えた横島は、ヒャクメの方に向き直る。
「ヒャクメ、もう俺がいなくても大丈夫か?」
「大丈夫なのねー。なんなら転移で送るけど家がいい? 妙神山がいい?」
「向こうも気になるし、妙神山で」
 特に、パピリオが千草を「おばちゃん」と呼び続けないかは確認しておいた方が良さそうだ。
 という訳で外の時間的にはとんぼ返りとなるが、横島はヒャクメに連れられて再び妙神山へ転移する事となった。





つづく


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音に関する各種設定。
 魔法のに関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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