topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.130
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 コレットはドキドキと高鳴る胸を押さえながら横島の返事を待った。
 英雄の従者になりたいと申し出て、その返事をドキドキしながら待つ自分。まるで伝承歌(サーガ)の一場面のようではないか。

「いや、ダメだろ、それは」

 しかし、横島の返事はにべもないものであった。
「えーっ!? なんで!?」
 コレットは、思わず身を乗り出して声を上げる。すると横島は、頭を掻いて困ったような表情を見せた。
「も、もしかして、私が人間じゃないからですか!?」
「いや、それはない」
 コレットの問い掛けに、きっぱりと答える横島。かく言う彼自身も魔族化しつつある身だ。彼にとっては、人間だと騙されて後になって正体を明かされたりしない限り、彼女の頭に生えた長い耳やスカートの裾から覗くシッポなどは些細な事。それどころか、彼女のメガネの奥に見える愛嬌あるくりっとした目を好ましく思っていた。
 では、何故コレットの仮契約(パクティオー)の申し込みを断るのか。
 コレットもふざけている訳ではない。本人は真剣そのものだ。だが、同じ「真剣」でも、コレットとアスナ達には大きな違いがあった。
「横島さん」
「ん?」
 横島の腕にしなだれかかっていた千鶴が、上目遣いでじっと彼の顔を見詰めて声を掛ける。
「ここは、私達が」
「私達が……って、どうするつもりだ?」
「大丈夫、任せて下さい」
 そう言ってにっこりと微笑む千鶴であったが、有無を言わせぬ迫力があったように見えたのは気のせいだろうか。横島もそれを感じ取ったらしく、微かに冷や汗を滲ませながら、カクカクと頷いた。
 千鶴はアスナ、夕映、古菲、千雨、裕奈と同じ横島の『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』である五人に視線を向ける。すると彼女達も千鶴と同じ気持ちだったようで、神妙な面持ちでコクリと頷いた。そして五人も、スッと立ち上がる。
「コレットちゃん」
「は、はい?」
「少し……場所を変えましょうか」
「う、うん、分かった」
 笑みを浮かびながらも、妙な迫力がある千鶴の表情。冷や汗混じりにコクコクと頷きながら立ち上がるコレット。怯えているのか、頭の上に耳はぺた〜んと垂れ下がり、シッポはピンと立ち、先の方がぶわっと膨らんでいた。シッポが立ち上がった事によりスカートの裾がまくれ上がり、中が覗いている事を横島は見逃さない。
「あの、大丈夫よ」
「そうです。プレッシャーを感じるかも知れませんが、千鶴さんは怒っている訳ではありませんから」
「そうなの?」
「そうそう、大丈夫だって!」
 コレットが怯えているのを察したアスナと夕映、それに裕奈が慌ててフォローする。
 二人の言う通り、千鶴は決して怒っている訳ではない。
「そ、そんなに怖いかしら?」
 現に当の千鶴は、コレットに怯えられてショックを受けていた。
「だから、お前のプレッシャーは怖いんだって」
「霊力が漏れてるんじゃないアルか?」
「ちゃんと抑えているはずなんだけど……」
 首を傾げる千鶴。こうして改めて意識してみると、彼女の放っていた霊圧がみるみる内に消えて行く。どうやら古菲の言う通り、感情の昂ぶりに合わせて霊力が漏れていたようだ。
「それじゃ、ちょっと行ってきますね」
「はい、すいません!」
 気を取り直し、くるっと振り返り横島に声を掛ける千鶴。コレットのまくれ上がったスカートをじっと見ていた横島は思わず背筋を正して返事をした。どちらが従者なのか分からない光景だが、横島忠夫と言う男としては、これが正しいように思えてくるから不思議だ。
 他の面々もコレットを連れて行く六人に対して何も言えなかった。別にここでも良いではないかと思ったが、彼女達にとってはそうではないらしい。
 コレットの方も内心不安であったが、横島の従者達から話が聞けると言うのであれば断る理由はない。皆が呆然と見守る中、七人の少女達は別棟を出て行くのだった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.130


 別棟を出たアスナ達は、別棟の裏手にある庭園に移動した。半球形のケージに囲まれた南国の草木、花が溢れた植物園のような場所だ。
「古菲、どうしたの?」
「い、いや、何でもないアル」
 ここは古菲が横島と仮契約し、彼にファーストキスを捧げた場所でもある。その時の事を思い出したのか、彼女の頬は赤い。
「ここでいいかしらね。さぁ、座って」
「は、はい……」
 千鶴は、ケージ内にあるベンチの一つに腰掛けると、コレットに隣に座るよう促す。コレットはビクッと震えながらも、言われるままに千鶴の隣に腰を下ろした。
 改めて考えてみると、初対面で仮契約を申し込むのは確かにぶしつけだったかも知れない。自分は彼女達を――横島の六人の従者を怒らせてしまったのだろうか。そんな思いがコレットの脳裏を渦巻いている。
 そんな彼女の様子を見て、千鶴がクスッと微笑んだ。
「そんなに怯える事はないわ。アスナ達も言ってたけど、怒っている訳じゃないのよ」
「へ?」
「あなたに忠夫さんの事を、私達の事をもっと知ってもらいたいのよ。ねえ、みんな?」
 千鶴が問い掛けると、周りのアスナ達はうんうんと頷く。確かに、いきなり仮契約を申し込んだコレットはぶしつけであったかも知れないが、それはアスナ達もそう変わらない事だ。横島にとってはそのほとんどが不意打ちだったであろう。
 アスナ達にとって重要なのは、コレットが自分達のマスターである横島忠夫と言う男を理解していない事についてだ。
 今の彼女にとっての横島は『英雄』と言う偶像であり、真剣だがミーハーな部分が見え隠れしている事を千鶴は感じ取っていた。先程感情が昂っていたのはそのためだ。
「コレットちゃん、あなた『英雄』の横島さんの情報は集めてたみたいだけど、『GS』の横島さんについては知らないよね?」
「そりゃまぁ、魔法界じゃ情報が手に入らないし」
 コレットの言う通り、それは仕方がない面もあった。魔法界で得られる横島の情報には限りがあるのだ。『英雄』としての横島以外はほとんど知られていないと言って良いだろう。ましてや一学生に過ぎない身で集められる情報には限度がある。コレットが横島を『英雄』として見てミーハーになってしまうのは状況的に仕方がない事なのだ。
 一方でアスナ達にとって横島は『GS』の横島忠夫であった。スケベだけど、優しくて頼りになる、「世界を救った英雄」よりもはるかに身近な存在だ。
 コレットの話のおかげで、今まで知らなかった彼の一面を知る事が出来たが、それでもやはり彼女達にとっての横島はGS横島なのである。

 ミーハーであれ、彼女が真剣である事はアスナ達にも伝わってきた。だからこそ知ってもらいたい。横島とはどんな人間なのか。
 自分達のマスターは『英雄』と言うフィルターを通さなくても、こんなにも魅力的なんだと言う事をコレットにも知ってもらいたいのだ。
 怒られる訳ではないと言う事が分かると、コレットの方にも精神的に余裕が出てくる。しかし、その余裕は彼女の脳裏に一つの疑問を浮かび上がらせた。
「……あれ? それじゃ、どうして場所を移動したの? 別にあの部屋でも良かったんじゃ?」
「ちゃんと意味はあるのよ」
「……えっと、なんで?」
「え? それは……」
 先程までの堂々とした態度とは打って変わってもじもじし始める千鶴。コレットはさっきの仕返しだと言わんばかりに更に問い詰める。
 すると、千鶴は恥ずかしそうにこう答えた。
「だって……本人を前にして言うのは恥ずかしいじゃない」
「……………あ、そう」
 コレットは理解した。これから自分は惚気話を聞かされるのだと。
 しかし、これはまたとないチャンスである。魔法界では決して知る事の出来なかった、横島の実態を知る事が出来る。コレットは腰を落ち着けて彼女達の話に耳を傾ける事にした。


「それじゃ、まずは私からね」
 一番手に名乗り出たのはアスナ。コレットの前に立ち、『ハマノツルギ』を召喚してみせる。
「……何それ?」
 先程見せてもらったカードでは大剣であったが、今彼女が手にしているのはどう見てもハリセンだ。魔法界出身のコレットにはそれがハリセンである事が理解出来なかったが。
「いや、私の霊力によって形状変わるみたいなのよ。『両面宿儺(リョウメンスクナ)』と戦った時は、大剣になってたんだけど」
「ふ〜ん」
 そしてアスナは、横島と出会い、弟子入りしてからこれまでの事を語り始めた。最初の頃は真面目にGSの修行について語っていたのに、いつの間にか惚気話に突入しているのはご愛敬である。
 その惚気話は京都での仮契約について話すところで最高潮を迎えた。
「私が横島さんと仮契約したのは、修学旅行先で泊まってたホテルでね。それで横島さんと抱き合って……キャ〜〜〜っ!」
 顔を真っ赤にしながら、身振り手振りを交えて横島との仮契約の時の事を語るアスナ。コレットは『英雄の従者』の意外な姿に目を丸くして驚いていたが、コレット以外の面々も別の意味で驚いていたりする。
 最近、言動が女子中学生の域から外れつつあると言われているアスナ。そんな彼女にもこんな初心な部分が残っていたのかと、夕映達は驚きを隠せないでいた。

 それから更に夕映、古菲、千鶴、千雨、裕奈と、仮契約した順に横島について語っていく少女達。やはり重要な事なのか仮契約については皆熱く語っていく。
 話を聞いてみると、夕映も仮契約した時はアーティファクトを目的としていた面があったそうだ。逆に古菲は、アーティファクトはどうでもよく、仮契約する事そのものが目的だったらしい。
 それを聞いたコレットは自分と変わらないではないかと思ったが、それどころではない。前日に横島の部屋でファーストキスを済ませた裕奈以外の五人は、揃って横島との仮契約がファーストキスであったらしく、仮契約の儀式と言うかキスそのものについて事細かに語るのだ。裕奈はご丁寧に前日のキスから語ってくれた。
 千鶴がさらっと一回のキスでは済まなかったと語った時は、ピシッと周囲の空気が凍り付いたのは言うまでもない。
 それらの話を聞いてコレットは、もし仮契約の申込みが受け容れられていれば自分もそうなっていた事を思い出し、思わず赤面してしまう。
「それでね、それでね」
「え゛、まだ終わらないの!?」
「当たり前です。何のために仮契約したと言うのですか」
 だが、彼女達の話はまだ終わらなかった。アスナ達にとってはむしろここからが本番だ。
 そしてアスナ達はこのレーベンスシュルト城での生活を中心に、横島の従者となった後の事について語り始めた。ここまでくると本当に惚気話が中心となってくるが、それでもコレットにとっては考えさせられる部分もあった。
 アスナ達が語る話は、横島と修行した、横島に甘えたと言った取留めもない内容であったが、それらは全てコレットの中に無かったものなのだ。
 そう、仮契約はアスナ達にとって新たなスタートであったが、コレットはゴールだと考えていた。彼女の中には、仮契約した後のイメージが全く無かったのである。

「コレットちゃん、どうしたの?」
「え、いや、その〜」
 それを見透かしたかのように千鶴が声を掛けてくる。コレットはどう答えれば良いか分からずにしどろもどろになってしまい、咄嗟に今聞いたばかりのサロンで横島にじゃれつく話について問い掛けてみた。
「横島さんって、その……けっこーエッチなの?」
「………」
 口にした直後、自分が何を言ったのかに気付いてコレットは頭を抱える。
 しかし、アスナ達にとっては意味のある質問だったらしく、彼女達は無言で顔を見合わせている。
「……うん、まぁ、エッチよね」
「と言うか、あの修行方法から言って……ねぇ?」
 「言われてみれば……」と顔を見合わせて語るアスナ達。彼女達はその点についてはあまり意識していなかったらしい。
「て言うか、お前等同レベルだろ。違うとは言わせねえぞ」
 ジト目の千雨がツっこむ。彼女に言わせれば横島のスケベは言うまでもない事だが、それを平然と――いや、むしろ喜んで受け容れているアスナ達も同レベルである。これは仮契約していないが一緒に霊力供給の修行をしている面々も同じであった。
「まぁ、今に始まった事じゃないわよね。私も、それを承知で仮契約したし」
「私、横島師父に乳揉まれた事あるアル」
「兄ちゃんにもたれ掛かると、谷間覗き込んでくるよね」
「うっ、私は覗き込まれた覚えないかも……」
「そりゃ密着してたら見えないです」
「お前らな……」
 呆れた様子の千雨であったが、かく言う彼女も、横島に一糸纏わぬ姿を見られた事があったりする。
 それよりも問題は、その千雨自身も赤面しながら満更でもなさそうな表情をしていると言う事だ。やはり、彼女もアスナ達と同レベルになりつつあるのだろう。

「へ、へぇ〜、そうなんだ〜」
 話を聞きながら引き攣った笑みを浮かべるコレット。咄嗟の質問だったが、もしかしたらパンドラの箱を開けてしまったのかも知れない。
 アスナ達から横島の「実態」を聞き、彼女が抱いていた『英雄』のイメージが木端微塵に打ち砕かれてしまった。
 本当に英雄なのか。それとも、英雄の実態は所詮こんなものなのか。コレットの脳裏に様々な疑問が浮かんでは消えて行く。
 そして同時に気付いた。魔法界ではアーティファクトを得るための手段として割と軽く考える者もいる仮契約だが、彼女達にとってはそうではないようだ。彼女達にとっての仮契約は、多かれ少なかれ自分の人生に影響を及ぼす重大な決断であるらしい。
 現に彼女達は、横島と仮契約をしてその身を彼に委ねている。千鶴と裕奈の二人に関しては、その身を彼に委ねる覚悟があったからこそ、仮契約したと言い換える事も出来るだろう。
 コレット自身、悪ふざけや冗談で仮契約を申し込んだつもりはないが、彼女達ほど仮契約した後について真剣に向き合っていたかと問われると、首を横に振らざるを得ない。
 アリアドネーの援軍の一員として麻帆良に来たコレットは、援軍としての任が終われば、魔法界に帰らなくてはならない身だ。もし、仮契約したとしても、彼女達と同じように横島と一緒にいられるかと言うと、それは不可能であった。
 横島が断ったのも、仮契約した後の事を考えての事だったのだろう。援軍の事情までは彼も知らないだろうが、アスナ達と同じようには出来ない、いやコレット自身がそれについて考えていない事を、彼は分かっていたのだ。

「そうだ! コレットも仮契約するつもりなら、霊力供給の修行も受けてみたら?」
「それは良いかも知れませんね。高音さんによれば、魔法使いにも効果はあるようですし」
「ハッキリ言うが、勧めねーぞ。ハマったら抜け出せないからな」
 座った目をして千雨が言う。アスナ達のような本格的な修行は受けていないと言うのに、既にハマりつつある人が言うと、非常に説得力がある。
「アハハハハ……それはなんとなく分かるよーな」
 千雨の言葉を聞いてコレットは思わず笑みが零れてしまう。
 なんとも楽しそうな六人だ。彼女達の話を聞き、コレットは彼女達の事を羨ましいと感じた。なんと言うか、眩しいのだ。横島の事を誇らしげに語る彼女達が。
 横島の事を少し身近に感じられるようになり、同時にますます興味を抱いた。彼女達をこれだけ夢中にさせる横島とは、一体どのような男なのだろうか。「英雄」ではなく横島自身の事を知りたい。コレットの心の中で、そんな願望がふつふつと湧き上がってくる。
 そのためにも、アスナ達の言う修行を受けてみるのも悪くないかも知れない。
 問題があるとすれば、エッチな目に遭いそうな事だ。初対面で仮契約を申し込んでおいて何だが、やはり初対面でそれは躊躇してしまう。
 それとも千雨の言う通り、一度ハマってしまえば、そんな事は気にならなくなるのだろうか。

 そんな事を考えていると、夕映がコレットの前にしゃがみ込み、その手を取って話し掛けてきた。
「ところでコレット、横島さんのGSとしての活動方針は知ってるですか?」
「いや、そう言うのは……」
 魔法界で生まれ育ったコレットは、そもそもGSと言うものがどう言うものなのかすら知らなかった。
 だが、これはとても重要な事だ。
「『人と人ならざるものの共存』……それが横島さんの活動方針だそうです」
「それって亜人とか?」
「妖怪や神魔族と聞いています。亜人と言うのは聞いた事がありませんが、先程までの横島さんの態度を見るに心配する必要はないのでは?」
「と言うか、人間界にいないから亜人って入ってないだけなんじゃない?」
「そ、そうなんだ……」
 裕奈の言葉は微妙に間違っている。確かに人間界には「亜人」と呼ばれる者達はいない。しかし、それは人狼族のような者達も、妖怪の一種として扱われているためである。ただ単に呼び方が異なるだけで、魔法界で言うところの「亜人」が人間界にいないと言う訳ではなかった。
「まぁ、横島さんは人間かどうかより可愛いかどうかで判断するからな。お前なら大丈夫じゃないか? 磨けば光りそうだし」
 何を元にしたコスプレかではなく、それを着る千雨自身が可愛いと評価されている人が言うと、説得があるかも知れない。ついっと視線を逸らすその顔の、頬が紅潮しているように見えるのは気のせいではあるまい。
 それは人間界と交流を深めるにも、まず人間でない事で躓いていたコレット達にとっては衝撃的な話であった。もし、横島の方針がこの人間界で一般的であれば、こんなに苦労せずに済んだのではないかと思えてくる。
 ちなみに、相手が男性の場合の横島の判断基準は、第一に好戦的でない事が重要だったりする。要するに、危険でなければ相手が人間であるかどうかは二の次なのだ。
 更に意思疎通が出来れば尚良い。そう言う考えの持ち主だからこそ、人と人ならざるものの共存なんて事を言えるのだろう。
「人と、人ならざるものの共存……」
 自分の中で何かを確認するようにその言葉を呟くコレット。
 確かに横島は、コレットのイメージする「伝説の英雄」などではなかった。どこにでもいるようなただの男だ。ちょっと度が過ぎたスケベかも知れないが、それは些細な事である。
 彼女自身も「人ならざるもの」、もし、それが実現すると言うのであれば、人間界もそう悪いところではないのかも知れない。

「ところでどうするです? やっぱり仮契約したいと言うのであれば、私達からも口添えしますが」
「そうね。改めて横島さんと仮契約したいって言うなら、私達も反対する理由はないし」
 夕映とアスナが問い掛けてくる。コレットはその言葉に心が揺れた。
 仮契約がしたい。先程までのミーハーな気持ちとは異なる想いが、彼女の心の内に芽生えている。
「う〜ん……今日は、止めとく」
 だからこそ、簡単に返事する事は出来なかった。仮契約するだけでなく、その先まで見据えて考えなければならない。今誘われるままに返事をしては、それはミーハーな気持ちで仮契約を申し込んだのと変わらないのではないかとコレットは考えていたのだ。
「もっと、じっくり考えないとね。自分の将来について」
「なるほど。そう言う事でしたら、待つ事にしましょう」
 コレットが笑顔でそう返事をすると、六人もまたは笑みを浮かべてそれに応えた。
「あっ……でも、また遊びに来ても、いいよね?」
 おずおずと問い掛けるコレット。仮契約についてはもう少しじっくりと考えたいが、それとは別として横島を含むレーベンスシュルト城の面々とはもっと仲良くなりたい。特に愛衣と夕映の二人とは仲良くなれそうに思えた。
 そんなコレットの気持ちを知ってか知らずか、夕映は嬉しそうに答える。
「それは問題ないかと。私もコレットともっと話したいです」
「良かったぁ。それじゃ、また明日も来るね」
「また明日も……って、今日はどうした? もう帰っちまうのか?」
 千雨が問い掛けると、コレットは寂しそうな笑みを浮かべてこう答えた。
「ゴメンね。今日のところは一旦帰るわ。セラス総長に今日の事を報告しないといけないから」
「そうなの。今晩は歓迎パーティでもしようかと思ってたけど、残念ね〜」
「あはは、何とか許可取って、こっちに外泊出来るように頼み込んでみるよ」
 満面の笑みを浮かべるコレット。まるで横島について語るアスナ達のような眩しい笑顔だ。アスナ達と語り合う事は、彼女にとってプラスになるものだったのだろう。
 そして彼女は、一旦別棟に戻って皆に挨拶をすると、明日また来ると約束して皆に見送られながらアリアドネーの援軍が宿泊しているホテルへ帰っていった。



つづく


あとがき
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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