topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.151
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「あら、横島君じゃない。あなた達も見に来てたの?」
「「美神さんっ!?」」
 重なる横島とアスナの声。
 そう、そこに立っていたのは現役GSトップクラスの一人、横島のかつての雇い主、美神令子その人であった。

「どうしてここに……?」
「有名なお祭りなんだから、来たっておかしくないでしょ?」
「いや、そーなんですけど……」
 どうやら彼女も麻帆良祭目当てでこの街を訪れたらしいが、かつて雇われた時には、この祭りの事など聞いた事が無かった横島は妙な違和感を覚える。
 実際美神がこの祭りについて知ったのは、ゴールデンウィークにアスナ達と会って麻帆良について調べてからなので、彼の直感は間違っていない。
 どちらにせよ下手にツっこむのは怖いので、それ以上は触れなかったが。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.151


 その一方でアスナは、憧れの先輩に再び会えた事を素直に喜んでいる。
「美神さんも出場するんですか!?」
「いや、私じゃなくて……」
 まるでアイドルを前にしたような少女の姿に「六女予備軍」みたいだと思う令子。
 しかし彼女はあくまで観客なのでそう言おうとしたところで会場の方から大歓声が聞こえてきた。
 何事かと見てみると、予選が既に始まっており、早々に本戦進出を決めた参加者が現れていた。
「おーっと、最初に本戦進出を決めたのはCグループ! 意外にも飛び入り参加の観光客だーっ!」
 実況をしているのは『麻帆良のパパラッチ』こと朝倉和美。中学生離れしたスタイルを丈の短いスカートに包み、朗々とした声を響かせている。
 それを聞いてグッと小さくガッツポーズをする令子。もしやその観光客というのはと皆が決着が着いた舞台に目を向けると、そこには観客に向かって大きく手を振る勝利者の姿があった。

「ウワハハハハ! 軽い軽い! 鍛え方が足りんぞ、小童共!!」
「誰よアレ!?」

 舞台の上で豪快な高笑いを上げる中年男、それは魔法界から来たメガロメセンブリアの元老議員、『近衛部隊の鬼教官』リカードであった。

 なお、予選は20人が1グループになってのバトルロイヤルで行われる。
 AからHまでの各グループから2名ずつ本選出場者が出る事になっているので、Cグループにはもう一人の本戦進出者がいる。
「なんか全然目立ってないでござるよーっ!!」
 そちらが令子のお目当て、人狼族のシロであった。相手が濃いので仕方がない。
「美神さん、アレですね。1000万は自分が出るほどじゃないけど、シロが取ってきてくれるならおいしいと……」
「あら、分かってるじゃない♪」
 シロを出場させたのは令子のようだ。本人も元々やる気だったらしいが。
 本戦進出を決めたシロは令子と、その隣にいる横島に気付いて手を振っていたが、リカードに肩を叩かれて控え室の方に戻っていった。
 予選終了後に本戦トーナメントの組み合わせが発表されるので、それが終わるまでは戻ってこれないとの事だ。

 令子も一緒に会場が見える位置に移動して予選を見ていると、赤ん坊を抱いた一人の女性が近付いてきた。
「令子、一人で先に行っちゃ駄目じゃない……あら、横島君。来てたのね」
「美智恵さん達も来てたんすか」
 令子の母・美智恵と、妹・ひのめだ。
「そっちの子以外は、ゴールデンウィークに会った子達ね」
「あ、紹介しときます。この子はアーニャちゃんといって、例の関係者です」
「はじめまして、アンナ・ココロウァです」
 「魔法使い」という単語が使えないので、横島はぼかして紹介。アーニャも心得たもので、特にツっこむ事もなくおすましさんな態度で挨拶をした。
「二人ともオカルト業界関係者なんだが、こういう所で話す事でもないから、また後でな」
「オッケー、予選が終わってからね」
 そう言ってアーニャは観戦に戻る。それを見て美智恵は、年の割にはしっかりした子だという印象を受けていた。
「ところで、おキヌちゃんは?」
「今日は学校よ?」
「あ、そっか」
 麻帆良祭は三日目が日曜日になるため、初日は金曜日となる。
「終わったら来る事になってるけど、こっちに着くのは夜でしょうね」
「一日ぐらいサボればいいのに」
「あの子が、そういう事できる訳ないでしょ。仕事でもないのに」
 おキヌの合流は今夜、時間的に予選が終わってからになるだろう。駅前のホテルを予約しているので、そちらで合流する事になっているそうだ。
 
 麻帆良の名だたる強豪達に先立って観光客が本戦進出。予想外の展開に、エヴァが呆れた様子で息を吐く。
「まったく、観光客に先を越されるとは……」
「いや、あのおっさんを観光客扱いしていいのか?」
 麻帆良の人間でない事は確かだが、微妙なところである。
 シロは、正真正銘の観光客ではあるが。
「タカミチのヤツも情けない」
「えっ、高畑先生も出てるの?」
「ほら、あそこにいるぞ。Fグループだ」
「あ、ホントだ」
 エヴァの言う通り、Fグループの舞台には高畑の姿があった。
 彼はポケットに手をつっこんで悠々と歩いてるだけだが、何故か周りの参加者達が次々に倒れていく。
「えっ? あれは何をやってるですか?」
「わ、分かんないよ〜」
 その不思議な光景に夕映とアーニャも困惑気味だ。
「横島さん、分かりますか?」
「見えてるけど……」
「けど?」
「見えてても何やってるか分からん。なんだあれ?」
 ちなみに令子と美智恵も見えてはいるし、どういうものであるかも分かるようだが、何故そんな事をしているのかはさっぱり分からないようだった。
 ちなみに高畑と一緒に本戦進出を決めたのは、豪徳寺。修行の成果を発揮した見事な勝利であったが、高畑の謎の攻撃と比べたら地味な勝利である。

 それはともかく予選は進んでいき、次々に本戦進出者が名乗りを上げていく。
 続けてDグループの古菲と真名が本戦進出を決める。
 ほとんど古菲が一人で片付けてしまい、真名は見ているだけだったのは秘密である。

 次に決まったのはEグループ。こちらは小太郎と楓の二人だ。
 途中から二人で分身勝負になって脱線していたが、それでも危なげなく勝利していた。
「あ、美神さん。あっちの背が高い子、女華姫直属隠密部隊の子孫っすよ」
「マジで!?」
 おキヌが合流すれば自ずと出るであろう話題なので、あっさりとバラす横島。
 令子はおキヌの関係者という事で、楓に興味を持ったようだ。

 次に勝利を決めたのはBグループのネギ。当初は他の参加者達からスルーされていたが、つまみ出そうとした巨漢を一撃で吹き飛ばしてからは独壇場だった。
「フフ……小さいのにやりますね」
「え、あ、はい。ありがとうございます」
 もう一人の進出者はクウネル・サンダースと名乗る、フードを目深に被った謎の男だ。
 その姿を見て、観客席のエヴァが反応する。
「む、あやつは……」
「知ってるのか?」
「私の想像通りなら、あれはナギ……ネギの父の仲間だった男かも知れん。生きていたのか……」
 しかし、ここで令子が口を挟む。
「死んでるかも知れないわよ?」
「……なんだと?」
「ハッキリとは分かんないけど、あいつ幽霊っぽいわ」
「なっ……!?」
 彼女は気付いたのだ。クウネルという男に実体は無く、幽霊に近い存在だという事を。
 これにはエヴァだけでなく、アスナ達も驚きを隠せない。
「えっ、幽霊が参加してるんですか?」
「アスナさん、ウチのクラスにもいますよ、幽霊」
「あ、そっか」
 しかし、さよの事を考えると途端に馴染みのあるものになったらしく、平静に戻った。タフな少女達だ。
「まぁ、魔法によるものだろう。ヤツならやりかねん」
 最後はエヴァがこう言って締めた。
 すると令子と美智恵が顔を見合わせる。魔法界の魔法という、彼女達にとって未知の技術に色々と思うところがあるのだろう。
「令子……悪用考えちゃダメよ?」
「そ、そんな事考えないわよ、ママ」
 それぞれ違う方向で考えているのは間違いない。

 それからGグループで中村と山下が、Hグループで大豪院が本戦進出を果たした。三人とも修行の成果が出た、順当な結果だろう。
 そしてHグループからはもう一人。
「フフフ……やるではないか」
「……そちらこそ」
「我が名はアレクサンドル・ザイツェフ、人呼んで『黄昏のザイツェフ』だ」
 魔法界から来た傭兵結社「黒い猟犬(カニス・ニゲル)」の賞金稼ぎ部門、第17部隊隊長、本名「チコ☆タン」である。
 賞金1000万と聞いて思わず参加したようだ。横島達からは離れているが、観客席には六本の腕に応援グッズを持ったモルボルグランの姿もある。
「ならばこちらも名乗らせてもらおう。大……いや、犬豪院ポチだ」
「ポチか……覚えておくぞ」
 何故か二人は互いの健闘を称え合い、友情らしきものが芽生えたようだ。
「彼、もしかして人狼族じゃ……?」
 一方観客席では、美智恵がポチの正体に気付く。
 人間社会に入り込んで正体を隠している人狼族という事で、犬飼ポチを思い出して警戒感を抱いていた。
「らしいっすね。ネギ達と一緒に雪之丞の同類やってるだけなんで問題は無いと思いますよ」
「そ、そう……」
 彼女には微妙に分かりにくい評価ではあるが、横島の知り合いのようなので、大丈夫だろうとスルーする事にした。
 何かあれば横島が巻き込まれるから大丈夫だろうという微妙な信頼感である。

「あとはAグループね」
「ここからはよく見えんな〜」
 Aグループの舞台は、横島達が見ているところから離れていた。
 少しでも見えるよう、横島はアーニャを肩車してやる。
「Aグループって、最初に始まったのよね? 長くない?」
「むしろ他が短いんだ。こういう試合は、圧倒的実力者が混じっていると早く終わる」
 アスナの疑問にはエヴァが答えた。
「つまり、Aグループ参加者の実力は拮抗してるため長引いていると」
 補足するのは夕映、しかしエヴァは言い回しが気に入らなかったらしく「ザコがちんたらやってるだけだ」と茶々を入れる。
 そんなある意味激戦を制したのは――
「Aグループ、決まりました! 本戦進出を消めたのは……麻帆良大学工学部よりの刺客、田中選手です!」
――かつて小太郎とポチが共に戦ったアンドロイドとうりふたつの大男。
 控え室の小太郎が、その姿を見て呆然としていた。
「そしてもう一人……本戦進出最後の一枠を手にしたのは……!
 剣道部からの刺客、打倒古部長を掲げる辻部長だーーーっ!!」

「…………誰?」
 しかし横島達にとっては、どちらも知らない相手であった。


「最後は締まらない終わり方だったわね〜」
「いやいや、明日が本番っすよ」
 という訳で横島一行は観客席を出て古菲を迎えに行く。令子達もシロを迎えに行くので一緒だ。
 その道すがら、アスナがある事を思い出して令子に尋ねる。
「そういえば美神さん達、ホテルは取れたんですか?」
 観客数を甘く見てホテルの予約をせずに麻帆良祭に来る。麻帆良祭初心者が陥りやすい罠だ。
「早めに取ったから大丈夫よ」
 しかし令子は、ゴールデンウィークに会ってすぐに麻帆良について調べていたので、その辺りは抜かりなかった。
 しかし、その答えを聞いたアスナが足を止める。
「…………」
「ん、どうしたの?」
「あ、いえ、私達これから古菲達の本戦進出をお祝いするパーティーをやるんですけど……ねえ、エヴァちゃん。美神さん達を誘っちゃダメかな?」
「構わんぞ」
「えっ、いいの!?」
「自分から頼んでおいて、なんて言い草だ」
 エヴァがあっさり認めたので、アスナは驚きの声を上げた。
 エヴァの言う通り、失礼な話である。
「良かった〜、ホテル取ってなかったら、それ理由に誘えるかと思ったのに、普通に予約してるんだもん」
「それで策を弄したつもりか、バカレッドめ」
「うっさいわね〜」
 二人の会話を聞いて、今度は令子が戸惑う番だ。
「え〜っと、どういう事? 私が行ったら何かまずい事でもあんの?」
「ああ、気にしないでください。パーティー会場が魔法の産物だというだけです」
「というかもうじき情報公開なんだ、気にし過ぎてどうする。ただでさえこいつらは半分関係者だというのに」
「……ああ、そういう事ね」
 夕映とエヴァの話を聞いて、令子も納得したようだ。
「私としても呪いが解けた後の事を考えれば、お前達のコネは使える。遠慮せずに来るがいい。どこのホテルを予約したかは知らんが、それ以上の環境を約束するぞ」
「そういう事ならお邪魔しましょうか」
 エヴァの尊大な態度に美智恵は苦笑。六百年生きている吸血鬼の真祖だという事は知っているが、やはり子供を見るような目になってしまう。イメージが見た目に引きずられてしまうのだろう。
 七百年生きているバンパイアハーフのピートも「若手GS」扱いされているし、こういうのは珍しくないのかも知れない。
「魔法の産物のパーティー会場か、興味深いわね……」
「悪巧みか? 私にもメリットがあるなら付き合ってやるぞ?」
「それは後にしましょ。まずはその会場とやらを見てみないと」
「いつまでその余裕を見せていられるかな? 貴様が度肝を抜かれるのが目に浮かぶわ」
「「ふふふふふ……」」
 なにやらシンクロしている二人を見て、美智恵は大きなため息をついた。
「令子に預けるつもりだったけど、今は無理そうね。横島君、お願いできるかしら?」
「ひのめちゃんですか? いいっすよ」
「ありがとう。さっきメールが来たから、私はこのままおキヌちゃんを迎えに行ってくるわ」
「あ、じゃあ場所はメールで送っときます」
「お願いね」
 令子は変なスイッチが入ってしまったため、ひのめは横島が預かる事になった。
 アーニャが興味津々な様子で、そのふにふにしたほっぺをつついている。
「美智恵さん、せっかくですからホテルは引き払って荷物もこちらに持ってきた方が良いです。どうせキャンセル待ちはいくらでもいますから」
「ああ、その方がいいわ。レーベンスシュルト城の方が、この子も安全だもの」
「安全……? そうね、そうさせてもらおうかしら」
 その一言でピンときた美智恵。しかし、表には出さずに夕映の提案を受け容れた。
 そのままここで一旦別れ、駅までおキヌを迎えに行くのだが、去り際に「横島君、後でね」と言い残していくあたり、事情を聞き出す気満々なのだろう。
 横島としても、事情を知らないままだと何かあった時に首を突っ込みそうなので多少の説明は必要だと考えていた。

「あの、横島さん。あの二人どうしましょう? 戻ってこないんですけど」
「放っとけ、先に古菲達を迎えに行くぞ。エヴァが一緒なら、万が一はぐれても大丈夫だろ」
「ああ、確かにそうですね」
 とりあえず今できる事は、無事に本戦進出を決めた古菲とシロを迎えに行く事だった。





つづく


あとがき

 原作に無い予選のグループ分けは、田中さん以外は適当にやっています。
 田中さんは超の関係者である葉加瀬が参加させていますので、参加登録したのは早いだろうというという事で最初のAグループです。

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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