topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.73
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 横島が大慌てで夕映を担いで出城に駆け込んでいた頃、古菲はレーベンスシュルト城本城に戻ってテラスに上がり、テラスの先端で宙に浮かぶモニターに映るネギ、小太郎コンビと茶々丸の戦いを観戦していた真名の下を訪ねていた。
 モニターからは轟音、爆音と共に時折ネギと小太郎の絶叫が聞こえてきており、それに合わせて観戦している面々の黄色い声が上がっている。まき絵などは最前列で声を張り上げてネギを応援していた。
 当初はネギ達が圧倒的に不利な状況をひっくり返せるかと彼らの戦いに注目していた真名だったが、既に勝敗は決し、後はネギ達がどこまで逃げ切れるかと言う状況になっていたため、古菲の呼び掛けに彼女はあっさりとモニターの前から離れ、テラスに備え付けられたテーブルの城側に近い一つに二人で着く。
 すると、それに気付いたぷりんがすぐさま飲み物を持ってやって来た。この子はやんちゃなすらむぃや、いつもにこやかなあめ子と違って無愛想だが、仕事はきっちりこなす。エヴァもスライム娘の中で最も信頼を置いているそうだ。同じくクールな性格で知られており、お世辞にも表情豊かとは言えない真名は、こっそり彼女に親近感を感じていたりする。
「ごゆっくり……」
 無表情にそう言ってぷりんは去って行く。真名は心なしか緩んだ表情でそれを見送り、彼女が持って来たジュースを一口飲んで、話を聞く体勢に入った。一方、古菲の方はどこか緊張した様子だ。彼女が人前に出て萎縮するようなタイプでない事を知っている真名は、怪訝そうに眉をひそめる。
「どうかしたのか?」
「実は真名に聞いて欲しい事が……」
「ほう、なんだ?」
「実は……」
 その先が続かず、困った様子で頭を掻く古菲。真名に相談しに来たはずなのに、いざ彼女を前にしても何を言えば良いのかが分からない。
 古菲の心の中にもやもやしたものが渦巻いているのは確かなのだが、それが一体何なのか、彼女自身にも掴み切れずにいた。
「どうした。言いたい事があるならさっさと言え」
 真名はスラッと長い足を悠然と組み、ジュースを口に含みながら先を促す。しばらく俯いていた古菲だったが、やがて意を決した様子で顔を上げると、真名の目を見据えてこう言い放った。

「横島師父と仮契約(パクティオー)しようかと考えてるアル」

 予想外の一言に、真名が盛大に噴き出したのは言うまでもない。
「な、な、な……」
 「何故?」と問いたいが、言葉が続かない真名。そもそも、古菲は自分の力で強くなる事を目指していて、アーティファクトの力を借りる事を嫌がっていたのではないか。それが何故、仮契約すると言う話になっているのかが理解できない。
 真名が混乱したまま考えをまとめられないでいると、古菲がぽつりぽつりと仮契約しようと思った理由について語り始めた。
「アスナや夕映みたいに、私も覚悟を決めなければいけない気がするアル」
「それと仮契約が、どう結び付くんだ?」
「横島師父に付いて行く覚悟、アル」
「……なるほど」
 真名から見ても、今までの古菲は、確かに一般人の枠から飛び出そうとしても飛び出せずに燻っていた。素質が無かった訳ではない。理由は色々あるだろうが、切っ掛けがなかったと言うのが第一の原因だろう。
 そんな彼女の前に訪れた切っ掛け、それがGS横島忠夫だったのだ。
「古菲、横島と出会って、お前は裏の世界に関わり、そして知った」
「横島師父のおかげアル」
「裏の世界はGSばかりじゃない。それもお前は知ったはずだ」
「……ウム」
 確かに真名の言う通りだ。古菲は横島と知り合う事により、一般人の枠から飛び出す事が出来た。
 しかし、飛び出した先に存在したのは、何もGSばかりと言う訳ではない。例えば、真名は関東魔法協会に雇われた傭兵のような立場にある。また、魔法使いばかりではなく、刹那は神鳴流の剣士であり、楓は退魔師の一族だ。
「お前がこの世界で躍進するのに、GS、霊能力者の道を歩む必要はどこにもない。お前ならばきっと、格闘技と気だけで更に飛躍する事ができるはずだ。それだけの素質を持っている事を私は知っている」
「………」
「それを踏まえた上で聞こう。古菲、お前は横島について行くのか?」
 真名は、古菲が何を悩んでいるのかを、なんとなく察した。彼女が胸にもやもやしたものを抱え、それが何であるかが自分でも分かっていないであろうと言う事も。だからこそ、彼女は心を鬼にして問い掛ける。そのもやもやした物に形を与え、古菲の前に突き付けるために。
 案の定、真名の言葉を聞いた古菲は腕を組み、先程とは別の理由で唸り始めてしまった。自分の中で曖昧だった問題がハッキリとした事により、明確な答えを出さなければならなくなったのだろう。
 その姿を眺めながら、真名は苦笑してしまった。悩む彼女を見詰める自分の胸の内に湧き上がってきた想いが、喜びである事に気付いたのだ。しかも、妹の成長を喜ぶ姉のような喜びだ。こんなだから横島から「年齢詐称」と言われてしまうのかも知れないが、これはこれで悪くないとも思える自分が居るのも否定する事が出来なかった。

 古菲がそのまま思考の海に沈み、黙り込んでいる内に、超に案内されたアスナ達がテラスに到着した。真名は「じっくり考えるんだな」と言って席を立ち、皆の下へ戻って行く。
 別空間での戦いもどうやら終わったらしく、のどかがエヴァから治癒の水薬の入った小瓶を二本受け取ると、ネギ達を迎えに駆け出して行く。他の者達もまた、昼食に向けて動き出していた。
 ここのテラスは先端部分が円形に広くなっており、そこまで続く通路は一段高くなった中央部分にはめ込むように、或いは一段低い部分にベンチとテーブルが備え付けられている。昼食は中央の長いテーブルにバーベキューを用意するようだ。
 皆で準備を進めていると、のどかに支えられたネギ達、続けて夕映を背負った横島が姿を現した。
 ネギと小太郎の怪我は治癒の水薬によりほとんど治っていた。一方、昨日までアスナ達の修行には参加していなかった夕映がそんな状態で戻って来るとは予想外だったようで、テラスに残っていた面々は、目を丸くして驚き、彼女に駆け寄り、集まってくる。
 夕映は横島のヒーリングのおかげである程度痛みは引いたが、それでも完治には程遠く、今も痛みで歩くことすらままならないとの事。まるで修学旅行を終えて麻帆良に帰って来た直後のアスナのような状態だ。使用した霊力量、時間を考えると夕映の方が症状が酷いと言えるだろう。
「横島さんに文珠で治してもらうとかは?」
「いえ、自分がしようとしている事を、この身でしっかりと受け止めたいので」
 和美が提案するが、夕映は首を横に振って答えた。先程、横島も同じ事を提案したが、既に断られている。
 夕映はこの痛みも霊力を目覚めさせるための試練だと考えているため、仮契約カードを通しての霊力供給も行っていない。なんとも生真面目な話ではあるが、そのひたむきなまでに真っ直ぐに突き進む様は、実に夕映らしいと言えるであろう。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.73


 ネギの事を心配していた木乃香は、すぐさま彼に駆け寄ろうとするが、その前にエヴァに横から掻っ攫われてしまった。小太郎も呼ばれておとなしくその後をついて行く。
「あ、横島さ〜ん。こっちの席空いてますよ〜」
「待て。横島、貴様にも同席してもらうぞ」
「超からも聞いたが、真面目な話か?」
「ああ、早く来い」
 木乃香、刹那と共にテーブルに就いていたアスナは、横島に声を掛けて自分の隣に呼び寄せようとしたが、どうやらネギに関する話のようなので、ここはおとなしく引き下がった。アスナも横島と言う師匠を持つ身、修行に関する話は邪魔するわけにはいかない。
 横島が背負っていた夕映はアキラに任せ、横島はネギ、小太郎、のどかと共にエヴァの下に向かう。丸テーブルの周囲には、中央側には一段高い部分にはめ込むように二人ぐらい座れそうな二つのソファが半円状に設置されており、その内の一つをエヴァとチャチャゼロが占拠していた。外側には四つの椅子が用意されており、エヴァの指示により横島がもう一つのソファーに、ネギ達がそれぞれ椅子に着く。最初からテラスに居たため、待つ側だったカモは、ネギが座ると同時に彼の肩に飛び乗る。
「ボク、ヨコシマのとーなりっ!」
「あ、お姉ちゃんズルイですー!」
 一人で座るには少々大きいソファの真ん中に横島が座っていると、風香と史伽が両側に飛び込んで来た。エヴァは師匠としての威厳を見せるために横島を隣に座らせずにいたのだが、その隙を突いた形になる。
「貴様等……」
「え〜、いいじゃん」
「邪魔はしませんよー」
「仕方がないな、邪魔をするなよ!」
「「はーい」」
 横島の威厳については今更だし、二人は追い払っても去りそうにないので、エヴァは溜め息をついて二人の同席を認める事になり、三人でぎゅうぎゅう詰めの状態となってしまった。風香と史伽は嬉しそうな表情で横島にぴったりと寄り添っている。
「ところで、早乙女ハルナはどうした?」
「ハルナさんなら向こうに」
 ネギが指差す先を見てみると、そこには他のクラスメイトの面々と談笑するハルナの姿があった。
 それを見て、額に青筋を浮かべたエヴァは怒鳴りつける。
「早乙女ハルナ! 貴様もさっさとこっちに来い!」
「え、私も?」
「当たり前だ! ぼーやの従者だろうが、貴様は!」
「は〜いはいっと」
 のどかに比べてあまり『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』としての自覚の無いハルナ。軽い調子で返事してこちらに来ると、空いていた最後の一つの椅子に就いた。左から順に、小太郎、ネギ、のどか、ハルナの順で座っている。
「さて、午前中はぼーやと犬に修行の成果を見せてもらったわけだが」
「修行の成果と言うか、今も生きているのが不思議なくらいですよ……」
「オレもや。ポチの兄ちゃんに鍛えてもらわんかったら、本気で死んでたかも知れんで」
 どこか遠くを見詰めているネギと小太郎。横島達は見ていないが、茶々丸との戦いは相当過酷なものだったらしい。
 当の茶々丸はさも当然のようにエヴァの背後に控えている。横島が供給した余分な霊力は使い切ったようだ。どこかスッキリした表情をしているような気がしないでもない。
「あの茶々丸の猛攻から数時間生き延びられたわけだし、二人ともそれなりに成長したと言って良いだろう。認めてやるぞ」
「ツマンネーナ、一人グライ死ンダ方ガ面白レーノニ」
「あ、ありがとうございます」
 エヴァがこうしてネギを認めるのは珍しい事なのだが、内容が内容だけに、ネギは複雑な表情だ。
「ところで、豪徳寺薫達はどうしたのだ?」
 この問いには、ネギではなく小太郎が答える。
「ああ、リーゼントの兄ちゃん達なら、今も修行の真っ最中や。俺等がドンドン強なるもんやから、対抗心燃やしとるで」
「ほぅ……」
 エヴァの眉がピクリと跳ね上がった。それならばと、再びネギに問い掛ける。
「ぼーやから見て、豪徳寺薫達はどうだ? 再びヘルマンの様な輩が攻めて来た時、使えそうか?」
「それは……も、モチロンですよ。次は負けません!」
「それは楽しみだ」
 ネギの答えを聞き、エヴァはあえて否定せず、疑う素振りも見せず、にんまりとした笑みを浮かべる。隣でその笑顔を見る横島は、また何か企んでいるなと思ったが、この場の主役はエヴァなので、黙って話を聞く事にした。
「では、そこの犬」
「て言うか、名前で呼んでくれや」
 勿論、エヴァは聞き流す。
「貴様にも同じ質問をしよう。豪徳寺薫達は、再びヘルマンの様な輩が攻めて来た時、使えそうか? そうだな、私を相手に考えてみろ」
「う〜〜ん……」
 小太郎は腕を組んで考え込んだ。
 ネギとのどかがハラハラした表情で見守る中、小太郎はどう答えたものかと悩む。
「正直に答えろ。返答次第では、私だけでなく、私の僕も一緒になって貴様等に襲い掛かるぞ」
「ぐっ……」
 ギロリと睨み付けてくるエヴァ。「僕」と言う言葉を聞いて、小太郎は一瞬チラリと横島に視線を向ける。
「待て、何故そこで俺を見る」
「いや、なんとなく……」
 念のために確認しておくが、ここでエヴァが言っている「僕」と言うのは『魔法使いの従者』、すなわち茶々丸とチャチャゼロの事を指す。エヴァの事だから、更にすらむぃ達も繰り出してくるだろう。
 横島のツっこみに言葉を濁した小太郎だったが、やがて意を決したように顔を上げ、エヴァの問いに答えた。
「無理やな」
「ぼーやとは正反対だな」
「ネギには悪いけど、やっぱまだスライム連中にも一対一じゃ敵わんと思うで。『金鷹』使った豪徳寺の兄ちゃんで勝てるかどうかちゃうか? ま、ポチの兄ちゃんならかる〜く蹴散らしてくれるやろけど」
「そうかそうか」
 小太郎は自分が感じていた事実を包み隠さずに答えた。ポチに関するくだりは、同じ人狼族であるため仲間以上の身内意識を持っている事もあり、どこか得意気である。
 その返答にエヴァは満足そうに頷く。彼女自身、三日の修行ではせいぜいそんなものだろうと考えていたのだ。豪徳寺が戦い方によってはすらむぃ達に勝てる力があるのも、ポチならば軽く蹴散らせると言うのも、彼等には元々それだけの力が備わっていただけの事、小太郎の目利きは正しいと言えるだろう。
 一方、ネギは頬を膨らませていた。彼は、本当に皆も頑張ればすらむぃ達に勝てると信じているので、早々に無理だと見切りを付けた小太郎に腹を立てているのだ。
 そんな彼の様子に気付き、エヴァはにやにやとした笑みを浮かべながら声を掛けた。
「不服そうだな、ぼーや」
「い、いえ、そんな事は……」
「隠さずとも顔に出ている」
「………」
 全てを見透かしていると言わんばかりにふんぞり返るエヴァに対し、ネギは口を噤んで拗ねたようにそっぽを向いた。こういう反応をする辺りが子供である。
「ならば、試してみるか?」
「え?」
 その瞬間、エヴァの視線が鋭くなり、纏う雰囲気が変わった。
 小太郎はサッと体勢を変え、椅子の背に手を置き、いつでも動けるように腰を浮かせて身構え、のどかとハルナはビクッと身を震わせた。風香と史伽も怯えて横島にひしっと抱き着き、横島は二人の肩に手を回し、安心させるように抱き寄せる。
「実際に戦ってみようではないか。ぼーやがそういうからには、こちらも本気で行くぞ。死んでも文句は言うなよ?」
 肌にピリピリと感じる痺れるような感覚。エヴァが本気である事が伝わってきた。彼女はやる。本気で殺る。
「そ、それは……!」
 流石のネギも、これには即答する事が出来ない。豪徳寺達を信じているとは言え、そんな危険な目には合わせたくない。
 しかし、その反応はエヴァの予想通りだったらしく、次の瞬間、彼女は剣呑の雰囲気を霧散させてベンチの背もたれに身を預けた。これを引き出したかったのだ。これからのネギの成長のためには是非にも叩き潰しておかねばならない、ネギの弱点とも言うべき部分を。
「横島、私が何を言いたいか分かったか?」
「ん〜、何となく。でも、早くないか?」
「年齢については今更だろう。それに、今の状況がそれを理由に逃げる事を許してくれん」
「まぁ、確かに」
 そう言って横島はネギ達に視線を向けるが、当のネギ達は二人が何の話をしているのかが分からずに疑問符を浮かべるばかりだ。
 小太郎やのどか、ハルナも同様である。風香と史伽も首を傾げており、二人の意図が掴めずにいる。
「それにな、横島。そこまで分かってるなら、私よりも貴様の方が相応しいのも理解できよう?」
「エヴァが相応しくないって事もな」
「分かっているじゃないか」
 横島としては反撃のつもりだったが、エヴァは唇の端を釣り上げて笑うばかりで意に介さない。横島はその反応に白旗を揚げ、仕方なくネギへの説教役を引き受ける事になった。風香と史伽を抱き寄せたままなので威厳も何もあったものではないが、二人も嬉しそうに頬を寄せて離れようとしないのでそのまま話を進める事にする。
「ネギ、最初に一つ言っておくが」
「は、はい」
 対するネギは真剣そのものだ。これまでにも何度か彼には相談をし、その度に結果として実りある助言を受けているので、横島に対する信頼は厚い。今度はどんなためになる話をしてくれるのだろうと目を輝かせている。
 その輝きが横島にとってはプレッシャーだ。しかも、今はネギの隣に座るのどかや、眼下の風香と史伽までもが期待の眼差しで見詰めている。「ほんまに大丈夫なんかいな」と鼻をほじりながら見ている小太郎や、横島が困っているのを見越してにやにやしてるハルナの態度の方が、横島にはありがたかった。
「お前、さっきは豪徳寺達が勝てるって言ったろ。それが、いざ本当に戦うとなると嫌がるって矛盾してないか?」
「そ、それは、やっぱり危険ですし」
「それ、信じられてねーだろ。信じるなら最後まで信じてやれよ」
「ぐっ……」
 勝てると信じられるのならば、戦えば良いのだ。しかし、あの時ネギは、豪徳寺達ではエヴァ達に勝てないと思ってしまった。そう、彼等を信じ切れなかったのだ。図星を突かれてネギは呻いた。
 横島は更に続ける。
「ネギ、俺は今、麻帆良に来て、横島除霊事務所麻帆良支部を作りつつある」
「は、はぁ……」
 脈絡もなく話が変わったため、ネギは気の抜けたような声を出す。しかし、先程信じるなら最後まで信じるようにと言われたばかりなので、横島を信じ、根気良く彼の話に耳を傾けた。
「除霊助手はアスナと古菲、今日それに夕映が志願してきたが、あいつはまだ現場には出せん」
「それは、そうでしょうね。あの調子ですから」
 チラリと夕映の方に視線を向けてみると、彼女は満足に腕を動かす事も出来ずに、アキラの世話になっていた。あれでは、除霊現場に出る事はおろか、明日登校出来るかどうかも怪しい。
「なんでか分かるか?」
「はい、あれじゃ除霊の現場に出るのは危険ですよ。GSにとって除霊現場は実戦の場。命を落とす危険もあると聞いています」
「そう危険なんだ。俺が安心して連れて行けるようになるまで、夕映を正式に除霊助手にするわけにはいかないよな」
「僕も、それが良いと思います」
「豪徳寺達も一緒だと思わんか?」
「……………あ」
 その言葉で、ネギはようやく気付いた。
 本当に危険だと思っているのならば、命を賭けた実戦の場に出してはいけない。しかし、先程のネギは、気付かぬ内に彼等を死地に向かわせようとしていた。彼等を信じているからこそなのだが、無条件に信じれば良いと言うものでもないのだ。
 横島もそうだ。アスナと古菲の命に対して責任を持たなければならない。除霊事務所を持ち、除霊助手を雇うと言うのはそういう事なのだから。
「でも、ネギ君の場合は、その危険が向こうからやって来たのよね」
「その辺がGSとの違いだよなぁ。俺らも依頼されて断るのは信用に関わるけど」
「『命あっての物種』ってヤツ?」
「そうそう」
 ならば危険な相手は避ければ良いのかと言われれば、そうでもない。先のヘルマン一味のように危険が向こうからやってくる場合もある。
「ネギ、お前がどう考えてるかは知らんが、ハルナちゃんも、のどかちゃんも、小太郎も、豪徳寺も、中村も、山下先輩も、ポチ先輩も、ハルナちゃんも、のどかちゃんも、ハルナちゃんもお前を中心に集まってる」
「のどかの名前が二回出たぞー!」
「ハルナの名前は三回ですー!」
 それだけ重要だと言う事だ。
「あ、あとカモもな」
「ついでかよ!」
 カモのツっこみを、横島は「それはともかく!」と勢いで誤魔化し、その後にエヴァが続く。
「言うなれば、貴様等はぼーやをリーダーとした『ネギ・パーティー』と言ったところだな」
「あ、それ分かりやすい。リーダーはネギだな」
「僕が、リーダー……」
 雇用関係にあるわけではないが、責任ある立場である事に変わりはない。
 横島も雇い主としては大概若いが、ネギはそれを更に下回っている。先程横島が言っていたように、そんな重い責任を負わせるには、若い――いや、幼すぎると思われるが、エヴァの言う通り、現に彼を中心とした小太郎達によるパーティーが出来上がってしまっている。
「ハッキリ言うが、責任は重いぞ〜。俺もアスナを助手にして思い知ったけど」
 京都での一件を言っているのだろう。アスナは修学旅行一日目の夜に、木乃香の誘拐騒ぎに巻き込まれて怪我を負った事がある。幸い、横島の治療札で治せる程度の怪我で済んだが、下手をすればあの時、後に残るような怪我を負ったり、死んでしまったりする可能性もあったのだ。
 横島自身、あの一件で思い知るまで、除霊助手を雇う事を軽く考えていた節がある。実際に失敗し掛けた事だけに、ネギに対してもしっかり話しているのだろう。
「皆を戦わせていいのか、そもそも戦っていいのか、全部リーダーが考えなきゃいかん」
「実力が足りんと思えば鍛えろ。私に挑むなど十年早いわ、たわけが」
「その辺判断するのもリーダーの責任って事だな」
「うぅ……」
 横島とエヴァのツープラトンに、ネギはしゅんと小さくなっている。
 ネギがゴールデンウィーク中、女子寮に戻らず、小太郎達と行動を共にしていたと聞いた時から、エヴァはこの事を教えなければならないと思っていた。しかし、エヴァとチャチャゼロ、茶々丸との関係は、ネギ達や横島達のそれとはまた異なる。
 その点、横島は実際に事務所の所長としてアスナ達を率いる立場だ。しかも、その関係は雇用関係と言うよりも仲間と言う方が近い。彼の台詞ではないが「餅は餅屋」、まずは横島に話をさせた方が良いと考えたエヴァの判断は、間違いではなったようだ。

「さて、ぼーや。唐突に話は変わるが、私が京都から持ち帰った本の事を覚えているか?」
「え、あ、はい。父さんの別荘から持ち帰った本ですね。それがどうかしましたか?」
「あれの調査が終わったのでな。そろそろぼーやに返してやろうと思う」
「そうですか……って、もう終わったんですか!?」
「一日中別荘を使って調査を進めていたからな。結局、手掛かりはみつからなかったが」
 学校の時間を除くとして、一日を二週間近くに引き伸ばして調査を進めていた事になる。正確には、ゴールデンウィークに入る直前に調査を終えていたそうだ。今にして思えば、ヘルマン一味との戦いを前にして一週間別荘に篭った辺りから、エヴァが横島の血を吸う頻度が増えていたが、それも彼女の体感時間では長期間に及ぶ調査がそうさせていたのかも知れない。
「あ、でも、あれだけの本を置く場所が」
「ウム、ないだろうな」
 問題は、本を返してもらった所で、今のネギにはそれを保管する場所が無いと言う事だ。小さな建物とは言え、三階分の壁一面を埋め尽くす本棚に納められていた書物は相当な量に達する。
「もう少し預かっていてもらう事は出来ませんか?」
「私に無駄な労力を使わせた本を預かれと?」
「うぅ……」
 意地悪そうな笑みを浮かべるエヴァだったが、意地悪で言っている訳ではない、多分。
 彼女も師として、ネギを手助けしようと考えているのだ。本に関しても、茶々丸との戦いでネギが不甲斐無いところを見せたならば、「リーダー」に関する話もせず、黙って預かっているつもりだったのだから、なんだかんだと言って親切である。
「茶々丸!」
「ハイ、マスター」
 名前を呼ばれた茶々丸は、足元に置いていた包みを取ると、前に出てそれをネギに手渡す。
 受け取ったネギがそれを開いてみると、そこにはネギの頭ぐらいの大きさがありそうな水晶球が入っていた。
「あの、これは?」
「私の別荘のボトルと同じ物だ。それをぼーやにくれてやろう」
「えぇっ!?」
 驚いた声を上げてネギはエヴァの顔を見る。肩の上のカモなどは何か裏があるのではないかと疑っているが、何て事はない。実は以前――と言っても数十年も昔の話だが、最新型と言う事で、別荘を入れ替えようと水晶球を手に入れたはいいが、ボトルと大して変わらぬ性能であったため、面倒臭くて倉庫の片隅に眠らせていた物なのだ。元々入れ替え用に購入したものなので、水晶球の中身は空である。
 今回それを思い出し、ネギのリーダーとしての責任感を鍛えてやろうと持ち出してきたのだ。
「ぼーやも自分のパーティーを率いるようになったわけだしな、それを使って一国一城の主になれ
「ええーっ!?」
 大した事ではないかのように笑顔で言うエヴァに対し、驚き仰け反るネギ。そのままの勢いで彼は椅子ごとひっくり返ってしまう。カモは咄嗟にのどかの肩に飛び移り、落ちそうになる水晶球は、隣の小太郎が辛うじて受け取めた。
「結構高いんだぞ、気を付けろ」
「いやいや、真祖の姐さん。兄貴が驚くのも無理ねえって」
「黙れ小動物」
 突然の話にカモは抗議しようとするが、エヴァはそれを一睨みで黙らせる。
「ぼーや、貴様は計らずも自分のパーティーを持った。ぼーや自身、『偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)』を目指すのであれば、共に歩む仲間が必要なのも事実だろう。正直、私も横島と同じく時期尚早だとは思うが、今からリーダーとして鍛えるのも悪い話ではない」
「……ッ!」
 『偉大なる魔法使い』、その言葉を聞いてネギの目の色が変わった。それは表向きは国連NGOとして活動し、陰ながら世のため人のためその力を使うという、魔法界で最も尊敬される仕事であり、ネギにとっては憧れの目標だ。
 椅子から転げ落ちて呆けていたネギは、慌てて椅子に座り直し、ぴしっと背筋を伸ばして話を聞く体勢になる。
「一流の魔法使いは防備の整った住み処を持っているものだが、これはパーティーの本拠地としての意味合いもある。いきなり完璧な城を手に入れろとは言わん。そいつを使って、パーティーを切り回すと言う事を覚えるんだ」
「僕が、皆を……?」
 隣で「かーっ! 面倒臭そうやなぁ」と辟易している小太郎とは裏腹に、ネギの目はだんだん輝き出した。
 彼にとって『偉大なる魔法使い』とは漠然とした父への憧れに明確な形を持たせたものだ。父の背を追い、父のようになりたいと願って脇目もふらずに、ただひたすら突き進んできた彼にとって「父のような『偉大なる魔法使い』になる」と言うのは到達点の一つである。
 ネギは何も入っていない水晶球を手に思う。
 これは修行だ。ただ魔法使いとして強くなるのではなく、『偉大なる魔法使い』になるための修行なのだ。
 しかも、エヴァと横島は揃って時期尚早と言っていた。それだけに、今のうちにリーダーとしての修行をする機会に恵まれた事を最大限に活かしたい。
「ぼーや、このレーベンスシュルト城の周囲には四つの空間がある。先程茶々丸と戦ったのもその一つで、他の三つも皆過酷な空間だ。茶々丸と戦った丘陵空間は比較的マシな方だと言えるだろう」
「そ、そうなんですか……」
 正直、茶々丸の怒涛の攻撃の方が怖くて、どんな場所で戦っていたかは記憶が定かではない。しかし、それが「マシな方」と言われてしまうと、他の空間で茶々丸と戦っていればどうなっていたのだろうかと背筋が寒くなってしまう。
「何を考えてるか分からんでもないが、修行するのに良い空間である事は確かだ」
「でも、危険なんですよね」
「勿論だ。だから、豪徳寺薫達を連れてくるかどうかはぼーやが決めろ。連れて来ても問題無いと判断すれば来るがよい、私が留守でない限り、レーベンスシュルト城は開放してやる」
「……分かりました。それもリーダーとしての僕の判断と言う事ですね」
 その通りである。理解の早い弟子にエヴァは満足気に頷いた。
 横島からは何か言う事はないか、エヴァがそう問い掛けると、横島はやる気を漲らせて拳をぎゅっと握り締めるネギを見て、リーダーの先輩として一つアドバイスをする事にする。
「ネギ」
「ハイ!」
「リーダーとしてパーティーを切り回してくって事は、お前はこれから自分を鍛える事、仲間を鍛える事、パーティーを運営する事、色々やらなきゃならん事が増えてくるって事は分かってるな?」
「勿論です! 見ててください、僕やってみせます!」
 なんとも元気の良い返事だ。それを聞いて横島はうんうんと頷き―――

「アホかーーーっ!」
「めふんっ!?」

―――ネギの頭に豪快な一撃を食らわせた。
「えっ!? えっ!?」
 ネギは何故怒られたかが理解できなかった。突然の一撃に涙目になり、小刻みに震えている。
 しかし、横島にしてみれば、この事を彼に言うのは三度目だ。そろそろ理解して欲しかった。
「いいかネギ! 前にも言ったが、人間一人で何でもやる必要はねーんだ。て言うか、全部やろうとしたらどんだけ時間があっても足りん!」
「そ、それは、そうかも知れません、はい!」
 ネギとしては色々言いたい事もあるのだが、横島の勢いに何も言い返す事が出来ない。
「他の人に出来る事があるなら、積極的に丸投げしろ、なっ!」
「ですが……」
 それでもネギは渋る。パーティーを切り回すのがリーダーの仕事ならば、リーダーである自分がそれをするべきではないかと考えているのだ。無論、横島の言う通り、それでは時間がいくらあっても足りない事は分かっている。しかし、責任感の強いネギは、人任せにするのは悪い事ではないかと考えていた。
 その様子を見て、いくら言葉を並べ立てても効き目がないと感じた横島は、少し矛先を変えてみる事にする。
「のどかちゃんは、ゴールデンウィーク中ネギと一緒だったらしいが、何してたんだ?」
「えっと、私は皆の食事の準備とか、おさんどんみたいな事を」
「やっぱりか、ネギは料理出来るのか?」
「いえ、僕はあまり得意では」
「豪徳寺達も出来そうにないよなぁ、つまり、のどかちゃんを頼ってるわけだ」
「……はい」
「そーいう人が居る事が何故幸せと気付かん! それとも、のどかちゃんに何か不満があると言うんかーっ! ハルナちゃんも居るんだろうが! お前から見りゃ『ちょっとえっちなおねーさん』だぞ!?」
「いや、否定はしないけど、そうあからさまに言われるのは……」
 興奮冷めやらぬ横島は、ネギを担ぎ上げて、その小さな身体を振り回し始めた。流石のハルナも押され気味で、いつものノリを出す事が出来ない。のどかと史伽は止めようと思うが、ネギを振り回す勢いに近付く事も出来ず、風香やエヴァに至っては面白そうに煽るばかりだ。
 腹を抱えて笑いながら見ていた小太郎が、ネギの悲鳴が聞こえなくなってきたので、そろそろヤバいのではと止めに入る事で、ようやく横島はネギを下ろした。
「大丈夫かいな?」
「な、なんとか……」
「なぁ、ネギ。俺も横島の兄ちゃんが言う事にゃ一理あると思うで」
「でもっ!」
「さっき言うてたやん、仲間を信じるなら信じろって。仕事を任せるって、それ信用してるって事ちゃうんか?」
「それは……」
 確かに小太郎の言う通りだ、ネギは言い返す事が出来ずに言葉に詰まる。
 ネギ自身、理屈では分かっているのだ。横島や小太郎が言っている事は正しいと。
「ちなみに、横島さんの場合は?」
「事務所の仕事は金庫番の事務員に丸投げサ!」
「胸を張って言うな、たわけが」
 しかし、ネギでは横島のようにはなれそうもなかった。根本的に性格が異なるのだから、仕方のない事だろう。
 見かねたのどかが、おずおずと声を掛けた。
「あの、ネギ先生はネギ先生のやり方でやってみれば、いいと思います」
「横島さんとこの事務員さんみたくは無理かも知れないけど、私達に出来る事なら裏方の仕事も手伝うからさ! いいじゃん『ネギ・パーティー』、なんだか燃えて来たわね〜」
 続けて、ハルナもネギの肩を叩いて励ます。ゴールデンウィーク中はネギ達と一緒ではなかった彼女も、先程の話を聞いて、ネギの『魔法使いの従者』として考えるところがあったらしい。彼を元気付けるように協力を申し出た。
「頑張ろうぜ、兄貴! 兄さん達も言ってたが、時期尚早上等じゃねぇか、今から勉強してきゃいいんだ」
「カモ君……そうだね!」
 カモの励ましにネギはようやく笑顔を見せた。横島のようにはなれなくても、ネギのやり方でリーダーをしてみれば良い。こうして支えてくれる皆がいるのだから。
「オコジョ協会で、若いのをまとめてるツレが居るんだけどよ。ソイツが酒の席で漏らしてたぜ、使えない部下を使うのも管理職の仕事のうちってな」
「アア、鉄砲玉トカ捨テ駒ダナ」
「えぇっ!? それダメだよ、カモくん!」
「いや、違うって!」
 要するにカモが言いたいのは、仲間をいかに使いこなすかを考えるのもリーダーの仕事と言う事だ。ネギも、「皆に任せろ」と言われるよりも、そう言われた方が納得しやすいようだ。
 流石はカモ、ネギの性格をよく分かっている。おかげでネギも、横島流のリーダー観をそのまま真似るのではなく、自分なりのやり方を見つけてみせると意気込んだ。
「どうやら、やる気になったようだな」
「ハイ!」
「ならば、最後の助言だ。協力者を求めろ」
「協力者、ですか?」
「そうだ、例えば朝倉和美に協力を仰げば情報面で助けてくれるだろう。修行をするにも、犬豪院ポチだけでなく、長瀬楓などに協力してもらうと言う手もある。ぼーや自身もまだまだ修行をして強くならねばならないが、同時にパーティーを強化していく事を考えるんだ」
「な、なるほど」
「へっへっへっ、真祖の姐さんの言う通りですぜ。俺達は『ネギ・パーティー』をどんどん強くしてかなくちゃならねぇんだ」
「皆で強なるか……そう言う話になると、なんか面白そうやな!」
「いいじゃんいいじゃん、ネギ君を守る熱い友情とその他で結ばれた戦士達。絵になるわぁ〜」
「私も頑張ります!」
 小太郎達も盛り上がりを見せ、彼等は『ネギ・パーティー』として一つになっていく。
 そしてカモは、『ネギ・パーティー』を強化するために更にもう一歩踏み出した。
「そうと決まったら早速行くぜ、兄貴!」
「えっ、どうするの?」
「決まってんだろ、『仮契約』だよ、『仮契約』! ぶちゅ〜っと仲間を増やしに行こうぜぇ〜!」
「えぇーーーっ!?」
 協力者を増やすよりも、ネギと『仮契約』させて仲間として引き込んだ方がパーティーの強化に繋がると考えたようだ。
 突然の話にネギは驚きの声を上げるが、カモは止まらない。理屈としては間違ってはいないのだから性質が悪い。
「ハルナちゃん」
「おっけい、みなまで言うな横島さん」
 横島に名を呼ばれ、彼の意図を察したハルナは懐から『仮契約カード』を取り出すと、『落書帝国(インペリウム・グラフィケース)』を出現させ、さらさらっと何かを描き込む。
「ノオォォォォゥ!」
 次の瞬間、紐状のゴーレムが飛び出して、カモをぐるぐる巻きに縛り上げてしまった。
 大した力はないゴーレムなので、効果はしばらく続くだろう。
「あれだよ、あれ」
「勉強になります」
 正に完璧なタイミングとコンビネーション。今回のケースに関してはカモに対する二人掛かりのツっこみ、ノリの問題なのだろうが、ハルナを見事に使いこなした横島に、ネギは頭が下がる思いだった。


 ろくに昼食も食べずに悩んでいた古菲は、何か今の自分の助けとなる言葉はないかと思い、いつしか横島達の話に耳を傾けていた。
 色々とためになる話を聞けたと思う。その話に合わせて、今の自分が置かれている状況について整理してみようとしたところで、古菲はふと考えた。
「私は……仲間アルか?」
 除霊助手と言う協力者なのではないだろうか。そんな考えが古菲の頭をよぎった。
 きっと横島は、そんな事など考えずに皆仲間だと考えているだろう。それは分かるのだが、不安になる。GSの横島にとっては、GS、霊能力者を目指すアスナと夕映こそが仲間として相応しいのではないかと。
 真名の言う通り、古菲が更に上を目指すための道は霊能力者以外にもある。
 だからこそ考えねばならないのだ。このまま気の力を極めて強くなる道を選ぶのか、横島の下で霊能力者の道を選ぶのか。古菲は、今まさにその岐路に立っているのだ。

 やがて、古菲はどこか吹っ切った表情で立ち上がる。
「……決めたアル」
 その視線は真っ直ぐに前を見据え、胸には確かな決意を秘めていた。



つづく


あとがき
 レーベンスシュルト城、及びオコジョ協会に関する描写は原作の表現を元にオリジナル要素を加えて書いております。
 建造物を入れる水晶球とボトルの性能差、またそれらが魔法界で売られていると言うのは、『見習GSアスナ』独自の設定です。
 ご了承ください。

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