topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.203
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 今晩、横島家で行われるパーティー。真っ先に、まだ準備している内に新横島邸を訪れたのは薫、葵、紫穂の三人だった。
 学校が終わり着替えなどの荷物をまとめると、すぐに飛んできたようだ。今晩から再び横島邸で暮らし始める気満々である。
 同じく準備している内に訪れたのは六道夫人が。それとほぼ同時に横島の母・百合子が到着した。父・大樹は仕事で来られないそうだ。
 薫達に百合子はパーティーの準備を手伝おうとしてくれたが、その前に魔法の水晶球の事を説明しなければならない。
 そちらについては水晶球について知っている六道夫人が引き受けてくれた。彼女は水晶球の中身についても一枚噛んでいる。
 実際に中に入り、見せながらの説明になったため、薫がはしゃいで飛び回ったりしたのはご愛敬。結果として水晶球の中は縦にも広い事がよく分かった。

 説明が終わると薫達三人はパーティーの準備の方に参加。百合子と六道夫人は水晶球内のテーブルひとつを囲んで、何やら真剣な顔で話し始めた。
 もしここに大樹がいれば『村枝の紅ユリ』が帰ってきたと恐れおののいていたかもしれない。
 実のところ彼女は、これだけのものが無料で提供された事を知り、何か裏があるのではと勘繰っただけだったりするが。
 六道夫人もそれは当然の懸念だと思ったため、この魔法の水晶球はテストケースの一種であると説明しておく事にしたようだ。
 そして説明を聞いた百合子は準備作業中の横島を呼びつけ、妙な実験を持ち掛けられても受けないようにと釘を刺すのだった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.203


 そしてそろそろ日が暮れようかという頃、弓かおりと伊達雪之丞の二人が新横島邸に到着した。
 パーティーには少し早い時間だ。かおりにしてみれば会うのは久しぶりだし、雪之丞も麻帆良祭では慌ただしくてゆっくり話す間も無かったので、気が急いたのだろう。
「あら、あそこにいるのは……」
「お、タイガーじゃねえか」
 二人の視線の先には、一文字魔理とタイガー寅吉がこちらに近付いて来ている姿が見えた。二人もかおり達に気付いたようだ。
「あれ? 弓、なんでそっちから? 駅とは逆じゃん」
「差し入れになるものを買ってきたんです!」
 なお、買った物を全て持っているのは雪之丞である。
「そちらこそエミさんは? 一緒じゃないの?」
「事務所からだから、アタシらとは別だよ。もう着いてんじゃ……ああ、着いてるな」
 そう言って魔理が指差す先には、事務所の駐車場に停められたエミの愛車があった。

 玄関前で話していても仕方がないと、魔理がチャイムを鳴らす。すると中から声が聞こえて扉が開いた。
「お前は確か……」
「えっ? あ、えっと……ダテブラックさん?」
「……人呼んで、伊達雪之丞だ」
 四人を出迎えたのはエプロンを着けたアスナ。雪之丞は彼女に見覚えがあった。どちらも同期合体で『究極の魔体』モドキに戦いを挑んだメンバーだ。
 互いに自己紹介を済ませ、アスナは四人をパーティ会場へと案内する。
「おい、そっちなのか?」
 地下に降りようとしたところで魔理が怪訝そうな顔をして声を上げたが、アスナは「こっちで合ってますよ」と言ってそのまま降りていった。
 そして水晶球が設置された部屋に入る。
 部屋の奥に大きな水晶球があり、足元には魔法陣。アスナは四人に魔法陣の上に立つよう促す。
 当然、魔法の水晶球の事を知らない四人は怪訝そうな顔をする。かおりは警戒し、まずは水晶球に近付いた。中には複数の建物と、それを囲む森が見える。
「……まぁ、横島の知り合いみたいだからな。大丈夫だろ」
 ここで、雪之丞がまず一歩を踏み出した。かおり達もそれに続き、全員が入ったところで魔法陣が発動。アスナを含めた五人は水晶球の中へと移動する。
「なっ……!?」 
「これは、転移!?」
 驚きつつも、四人はすぐさま自分達の身に起きた事に気付く。
 既に他の六女の生徒達は到着しているのだが、これが転移だとすぐさま気づいたのはこの四人だけだった。かつて魔鈴の魔法でクリスマスケーキの世界に転移した事があるからかもしれない。
 彼等が転移した先は、壁が無く、柱と屋根があるだけの小さな四阿(あずまや)の中。石の台座の上に立っており、その石には転移の魔法陣が光っている。
 お堂の外には開けた原っぱが広がっていた。その光景に水晶球の外から見た風景とは違うのかと、かおりは周囲を見回す。
 彼女の視界に入ったのは、原っぱを囲む複数の建物。そして、その向こうに見える森。
「ま、まさか……」
 彼女は気付いた。あのミニチュアの中にあった複数の建物。その隙間がこの広い原っぱであると。外から見た風景が間違っていた訳ではない。彼女が考えていた以上に、水晶球の中が広いのだ。
 アスナは一足先に石畳の道に降り、まだ驚き冷めやらぬ四人に向かって両手を広げる。
「ようこそ! 横島さんの修業場へ!」
 そして満面の笑顔で、自慢げに彼等を歓迎した。

 アスナはまず、魔法の水晶球について基本的な事を説明する。
「なるほどなぁ、魔法使い達の情報が公開されると、こういうのが俺達でも手に入るようになるって訳か」
「ウチも欲しいですわね……」
 一番興味を持ったのはかおり。彼女の家『闘竜寺』は大勢の弟子を抱えているので、水晶球ひとつでこれだけの広さを確保できるならばと考えてしまうようだ。
「高いんだろうなぁ、こういうの」
「想像もつかんですジャー」
 魔理とタイガーはいずれはと考えるが、自分達がどうこうというのはまだピンとこないようだ。
「チッ、横島のヤツめ。いつも一歩先に行きやがる……」
 そして雪之丞は、こんな水晶球を手に入れた横島へのライバル心を燃やしていた。
 もっとも、水晶球の中のものは、六道家、GS協会、関東魔法協会、魔法界が協力して用意したものなので、横島の力かと言われると微妙なところではある。


「えっと、パーティーはどこでやるんですカイノー?」
「あの正面に見える一番大きな建物です。あの前でバーベキューの準備をしています」
 アスナが指差す先には旅館のような建物が見えた。魔法陣があるお堂からその建物に向けて、石畳の道が真っ直ぐに伸びている。
「周りの建物はなんなんだ?」
「えっと、向こうに見えるのが保管庫ですね。呪われたもの用」
「呪……っ!? なんでそんなもんを!?」
「何言ってるの、横島さんの解呪は業界トップレベルでしょ」
「あ、そっか」
 文珠のおかげである。そのため横島の下には呪われたものが持ち込まれる事が多くなる。そう考えた六道夫人の提案で設置されたのがあの建物だ。下手に外の倉庫に仕舞うより安全である。
「あっちの建物は?」
「ん? なんか人いねえか? タイガー並にでけえヤツ」
「確かに、細いけど身長はわっしと同じくらいありそうじゃノー」
 しかも一人ではない、ここからでも十人以上の人影が見える。
「ああ、あれは与作さん達ですね」
「与作?」
「機体番号『T−ANK−α4』、通称『田中与作』です」
「機体番号……? まさかあれ全部、マリアみたいなロボットか!?」
 そう、その人影は全てロボット、正確にはアンドロイド。鈴音とハカセで生み出したT−ANK−αシリーズの4号機だ。
 2号機『田中Jr.』の後継機といえば聞こえは良いが、実際のところは武装などを解除し、安全が確認された作業用のダウングレード版だったりする。
 レーベンスシュルト城に茶々丸の姉達がいるように、こちらには与作軍団がいるのである。横島的にはまったく嬉しくない。
 建物の方は鈴音の研究所だ。麻帆良にはもう置いてはおけないものを全て引き上げてきている。与作軍団のメンテナンスを行う場所でもある。
 ちなみに麻帆良武闘会に出ていた3号機『田中さん』は、1号機『田中ハジメ』の後継機であり、実は2・4号機とは系統が違っていたりする。
 1・3号機は性能を追求した試作機、2・4号機は量産を目的とした廉価版なのだ。前者はハカセこと葉加瀬聡美が、後者は鈴音がメインになって開発を進めていた。
 ちなみに『田中さん』は『田中ハジメ』が残した魔族との戦闘データも組み込み、更なるパワーアップを遂げて復活。ネギ達と共に魔法界に行く事になったハカセに同行していたりする。その名も『R田中ハジメさん』である。

 それはともかく、与作軍団は何やら土いじりをしているようだった。
「あれは何をやってるんだ?」
「私も詳しくは知らないんですけど、水晶球の中で植物を育てる実験農園らしいですよ」
 近付くと分かる事だが、与作達は農家のような出で立ちであり、サングラスは掛けたままだが髪型もおとなしくなっている。
 彼等のおかげで鈴音の研究所の周りには、立派な農園ができつつあった。
「この中で農業まで……」
 その話を聞いて、驚愕の表情を浮かべたのはかおりだけだった。
「あ、あの、農業用水はどちらから?」
「ずっと奥の方に湖があるらしいですよ。そこまで行けば、小さいけど山もあるって」
 アスナは大した事ではないように答えるが、彼女はレーベンスシュルト城を知っているからマヒしてしまっているだけである。
 だが、かおりは理解できてしまった。この農業も可能だという魔法の水晶球は、魔法によって維持されている一種の生物圏(バイオスフィア)であると。
 応用範囲が恐ろしく広い。これは世界を変えかねない。この魔法の水晶球について聞いたGS協会や六道夫人がどんな事を考えたかは想像に難くないだろう。
 

 気を取り直してパーティー会場に向かう一行。近付いてみると、大きな建物が実は二つの建物が連なっている事が分かった。修業場と宿泊施設だ。
 修業場側には、簡易な医療設備も備わっている。
「おっきな温泉もあるんですよ!」
「あら、機会があれば入ってみたいわね」
「今度、時間のスピードを変える機能もテストしてみるって言ってましたから、すぐに機会がありますよ!」
「時間のスピードを変える……?」
 この水晶球も例に漏れず、中の時間の流れをコントロールする機能がある。たとえば外の一時間を中の二十四時間にすると、中で一日過ごさないと時間感覚が狂ってしまうため、宿泊施設は必須であった。
 とはいえ、こればかりは四人が理解できず怪訝そうな顔をするのも無理はない。
 という訳で、そのまま一行はパーティー会場に到着。ここに来るまでに四人とも、特にかおりが驚き疲れてしまっているのはご愛敬である。
 見回してみると既に六女の生徒達が集まっていたが、やはりかおり側、成績が良い組は疲れた表情をしていた。

 なお、一番疲れた顔をしていたのは『B.A.B.E.L.』の皆本である。常識が破壊されてしまったようで、柏木と一緒に頭を抱えて何やらぶつぶつ言っていた。
 桐壺だけはカオスと一緒になって酒を飲んで騒いでいたが、こちらはこちらで単に開き直って現状を見なかった事にしているだけだったりする。
 それだけこの魔法の水晶球は、凄まじいものなのだ。鈴音は美智恵に独占されてしまっているため、エヴァが皆に質問責めにされている。
 ちなみに令子の方は、ひとまず裏金を隠す用に一つ、いざという時のセーフハウス用に一つ、そして更にもう一つ手に入れて何か金儲けに使えないかと皮算用していた。
 一方唐巣と共に一足先に到着していたピートは、まさか真祖の吸血鬼に会うとは思ってもいなかったようで、かなり驚いていた。といってもピートは約700歳、エヴァは約600歳なので、エヴァの方が年下だったりするが。
 他の面々もこの水晶球内の光景を見て、横島の帰還を祝うどころではないようだ。なんだかんだといってアスナ達も、新しい水晶球の中に目を輝かせていた。

 そんな中横島は、テーブルの一つからその騒ぎを眺めていた。
 普段通りの調子で横島の周りにいるのは、タマモと澪、それに冥子と六道夫人ぐらいであった。
「皆〜、興味津々ね〜」
 六道夫人はこの水晶球を用意するのに関わっているので、他の面々のように驚いてはいない。冥子も驚いていないが、こちらは単に自宅の豪邸で慣れているのだろう。実際この水晶球の中も、六道邸には及んでいない。
 タマモは単に興味が薄いだけだ。そして澪は、水晶球よりも兄が帰ってきた事の方が大事なようだった。
「ったく、俺の帰還を祝うんじゃなかったのか、あいつら……」
 横島は、自分が放置されている事にぶちぶち文句を言っていたが、そんな彼の膝の上で澪は嬉しそうにバーベキューにかぶりついていた。
 その姿を見て、横島ものんびりできるならその方が良いかと考えを改める。
 そこに質問責めから逃げ出してきたエヴァが近付いてきた。
「おい、横島! 時間の流れを変えるぞ! 一時間で二十四時間過ごせるようにする!」
「えっ、なんで?」
「質問はもうたくさんだ! 時間をやるから自由に見て回らせろ!!」
 どうやら質問責めに耐えられなくなったようだ。
 しかし反対する者もおらず、エヴァの提案は受け入れられる事となる。
 という訳で、横島の帰還を祝うパーティーは皆が適当に食事を済ませるだけで中断となり、急遽魔法の水晶球内見学ツアーへと変貌を遂げる。
 それが終わる頃には皆も落ち着いており、パーティーが再開される事になるのだが、それは半日以上先の話であった。





つづく


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音に関する各種設定。
 魔法のに関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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