topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.146
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 街の喧騒を見下ろしながら追跡するネギ達。ネギは杖に跨って空を飛び、小太郎は屋根から屋根へと飛び移りつつ並走している。
「兄貴、あそこだ! ほら、フードが取れてる、お団子にしてるヤツだ!」
「って、一緒におるの横島やで!」
「! 先に帰ったから知らないんだ!」
 カモと小太郎の声で状況の危うさを理解するネギ。
 フードの中に何を隠して持っているか分からない不審人物と、それを知らずに油断しているであろう横島。早くしないと横島が不意打ちをくらうかも知れない。
「こうなったら……!」
 まだ距離がある、このままでは間に合わないと判断したネギは杖にまたがったまま魔法を使う。
「風花・武装解除(フランス・エクサルマティオー)!!」
「来たれ(アデアット)ーッ!!」
 魔力を帯びた風がフードに炸裂しようとした瞬間、横島が間に入り、それを弾いてしまった。その手には大きな卵、彼のアーティファクト『コスモエッグ』がある。
「えぇっ!? なんで!?」
 予想外の展開にネギは思わず止まって声を上げ、それで横島の方も彼等の存在に気付く。
「コラー、ネギー! 降りてこーい!!」
「ど、どないする?」
 隣の小太郎も戸惑っているが、ネギはフードの人物が逃げようとしてない事に気付いた。
「見て、あの人逃げてない。横島さんが捕まえてくれたのかも」
「流石兄さんだ、行こうぜ兄貴!」
 カモにも促され、ネギ達は見つからないように地面に降り立ち、横島達の方へと駆け寄る。
「街中で無闇やたらと脱がそうとするんじゃない!」
 そして横島にゲンコツを食らった。
 涙目で横島を見るネギだったが、そこで彼は横島が庇ったのが教え子の超であり、周りにはアスナ、刹那、高音、愛衣の四人がいた事に気付く。あのまま魔法を炸裂させていたら、全員まとめて脱がせてしまっていただろう。
「ネ〜ギ〜、あんたここんとこやらないと思ってたら……」
「す、すいませんでした……」
 握り拳を震わせるアスナを見て、ネギは素直に謝る。
「……戒めの風矢だと、また粉々にされそうな気がして……」
「お前、エヴァにトラウマ植え付けられてないか?」
「ここんとこ毎日ふっ飛ばされてたからなぁ……」
 そんな彼の肩の上で、カモが遠い目をしていた。

 とはいえ、ネギはこのまま引き下がる訳にはいかない。彼は魔法先生として不審者を追ってここまで来たのだ。
「そ、それはともかく! 超さん、これは一体どういう事ですか!? どうして魔法先生の会議を覗き見なんて……!」
 己を奮い立たせてその事を告げると、横島は一転訝しげな目で超を見た。
「超、お前覗きがバレたのか? そういうのはちゃんとバレないようにしないと。逃げる時も、もっとこう……」
「い、いや、それと一緒にして欲しくないネ」
 ただし、少々方向性がズレていたが。
「横島君? まさかあなた、レーベンスシュルト城でも……」
「えっ!? そうなんですか!? 言ってくれればいつでも一緒に……!!」
「アスナさん!?」
「待て、誤解だ! 風呂に入るのが皆バラバラだから、常に誰かの目があるだろ! そんな状況で覗けるかっ!!」
「状況が許せば覗くんかい」
 小太郎のツっこみに、横島はただ視線を逸らすだけだった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.146

「あの、お姉様。それよりも私達の会合を覗いていた方が問題ですよ」
「……コホン、それもそうね。超さん、あなたどうして覗きを? 出来心?」
「横島師父の覗きみたいに言うの、止めてくれないかナ? ちゃんと答えるから」
 流石に勘弁して欲しいのか、超はうなだれつつ白旗を揚げた。
「実は……」
「実は?」

「世界樹前広場に大規模に認識阻害して集まってる一団がいたから調べてたネ」

「…………え゛?」
「ホラ、いつもより広い範囲で認識阻害してたネ」
「い、いや、確かにそうですけど……」
 関西呪術協会や魔法界からの援軍もいたため、いつもより広範囲になっていたのは事実だ。
「普通に怪しかったヨ?」
「超、あんた魔法使いの事にも詳しそうじゃない。ホントに気付かなかったの?」
「いや、いつもと違う規模で認識阻害してたから何事かと思ったネ。今は魔法協会以外にもできるとこがあるし、スルーしたら実は別のとこでしたって事も有り得るヨ?」
「た、確かに、外からは分かりませんが……」
「言われてみれば、麻帆良以外でアレやったら問題になりそうだな……今度学園長に言っとこう、次からはどこか屋内にした方がいいって」
「あぅ……」
 魔法使いにとっては当然のものである認識阻害の魔法だが、言われてみれば確かに公共の場でやるものではないだろう。
 ネギはいまいちピンとこなかったが、横島も超に同意したため、それ以上反論する事ができなかった。


 結局超は、魔法協会側にも不審がられる理由があったという事で、そのまま解放する事になった。
 超は麻帆良祭の準備があるからと去り、横島達も帰宅。ネギ達は学園長に報告するために世界樹前広場へと戻ろうとしている。
「なぁ、ネギ。あれ、逃がしてよかったんか? 胡散臭かったで」
「そう言われても、僕達が怪しかったのは確かみたいだし、超さんは僕の生徒だから信じたいし……怪しいのは分かるけど」
 ネギは曖昧な返事をする。彼も釈然としないが、追求できるほどの証拠も無いというのが正直なところのようだ。
 そんな彼等を、肩の上のカモがげっげっげっと笑う。
「甘い……甘いなぁ、お二人さん」
「なんやねん、カモ。気色悪い笑い方しおって」
「カモ君は、超さんを信じていいと思うの?」
「いいや、逆さ。俺っちも胡散臭いと思うぜ」
「だったら引き返して!」
「待ちなって、小太郎の兄さん」
 踵を返して駆け出そうとした小太郎を、カモはニヒルな笑みを浮かべて呼び止めた。
「兄貴の言う通り、証拠が無いんだ。ここは誤魔化されたフリして泳がせようぜ」
「なるほど、それならアリか?」
「生徒を疑いたくないなぁ……」
 そうぼやくネギだったが、彼も疑念を捨てきれない。これからも注視するという事ならばいいだろうと、カモの言葉を受け容れ、それを報告する事にする。
 学園長も疑念を捨てるべきではないと考えたようで「麻帆良祭中も注意するように」と釘を刺してきた。こちらは、超個人よりもドローンを使ってしばらく気付かれずに自分達を監視していた事実を重視したようだ。
 ネギも油断しなければいいと考え、素直にそれを受け容れるのだった。


 その後、レーベンスシュルト城に戻った横島達は、前夜祭を見るために横島パーティに椎名桜子、柿崎美砂、釘宮円の三人を加えた皆で街に出た。
 桜子達チアリーディング部三人はパーティに属している訳ではないが、フェイトの件を知っているので、麻帆良祭中は安全のためにレーベンスシュルト城に泊まる事になっているのだ。
 ちなみに、この安全策についてはネギ達の方でも考えられているようで、のどか達はもちろんの事、パーティに属していないあやかもあちらのセーフハウスに泊まる事になっていたりする。
 彼女等も今頃前夜祭のために街に出ているだろう。横島達とも後程合流する事になっていた。
「毎年見て飽きていたが、今年で見納めかも知れんと思うと感慨深いな……」
 去年までは無視していたエヴァも、今年は茶々丸とチャチャゼロも連れて横島達に同行している。
「来年はお客さんとしてくればええんとちゃう?」
「お前、学校はどうするつもりだ? 来年の今頃は六女に通っているつもりなんだろう?」
「あ、そやな〜。前夜祭と一日目は難しそうやな〜」
 麻帆良祭は金曜日から日曜日の三日間に渡って行われるため、麻帆良学園都市以外に進学すると前夜祭と一日目の参加は難しくなる。
 エヴァは進学する気など無いが、だからといって長年閉じ込められていたこの街に好き好んで来たいとは思わないので、見納めというのは間違っていなかった。
「花火は……まだあがってないみたいね」
「間に合いましたなぁ」
 実のところ彼等は予定より少し遅れていた。
 なんて事はない、横島の両隣に立つのは誰かを決めるべくジャンケン大会が行われたのだが、なかなか決着がつかなかったのだ。
 ちなみに勝者の一人は、「バカレッドの一念、岩をも通す」アスナ。嬉しそうに腕を組み、少しでも「アピール」しようと一生懸命に彼の腕を抱え込んでいる。
「夏美ちゃん、ほらアスナさんも頑張ってるわ」
「う、うん……」
 そしてもう一人の勝者は夏美だった。
 まさか自分が勝つとは思ってもいなかった彼女は、最初は手をつないでいただけだったが、千鶴がアスナを引き合いに出して煽ると、勇気を振り絞って腕を組んだ。
 すると横島の二の腕に夏美が頭を預ける形になるのだが、色々あって敏感になっている彼女は、その瞬間に心地良い感覚に包まれた。
「あ、ヤバいこれ……」
 引き寄せられるように少しずつ身体を動かす夏美。横島の前に回り込むようにして腕に、胸板に顔を寄せて、胸一杯に深呼吸を――
「あの、夏美ちゃん。流石に歩きにくいんだが……」
「ゲホッゲホツ!」
――しようとしたところで不意に声を掛けられてむせた。
「大丈夫か?」
「な、なんでもないです! なんでもないです!」
 顔を上げて慌てふためく夏美。その後ろで千鶴がクスクスと笑っていた。
 結局夏美は、腕を組むのではなく掴まり、彼の後ろ側にひっつく形で一緒に行く事になった。もちろん、顔を近付けて匂いを堪能する事を忘れない。
「……あいつ大胆になってきたな。外でまでやらなくてもいいだろうに」
 そしてエヴァは呆れた顔で、とろけた顔になっている夏美を見ていた。
 止めようかとも思ったが、周りに人が多い分目立たないだろうと放置する事にする。
 とりあえず、自分が買ってやった下着で迫る事はできなくて、屋外でそういう事ができるのはどういう事なのか、と後で小一時間ほど問い詰めようと考えながら。

 しばらく歩いていると、裕奈がある事に気付いて声を上げた。
「あ、見て! 世界樹が光ってる!」
 つられて世界樹を見てみると、いつもなら麻帆良祭最終日にしか光らない世界樹が、前夜祭だというのに淡い光を放っていた。
「22年に一度、魔力が溢れ出す……あれがそうなのね」
「毎年見てたけど、あれ魔力の光だったんだね」
「というか、改めて考えると木が光るって変じゃない?」
 一般生徒の間では「世界樹の下で告白すると成就する」などと噂されているが、魔法使いの情報が解禁されたアスナ達は、それがあの魔力によるものである事を知ってしまっている。
 ひとつのロマンが失われてしまった気がして少し寂しくもあるが、それは同時に彼女達が新しいステージに進んだ結果でもあった。
「横島さん、明日からがんばりましょうね!」
「ああ、そうだな!」
 横島の腕をぎゅっと抱きしめ、満面の笑みを浮かべるアスナ。
 対する横島は、鼻の下が伸びそうになるのを堪えつつ、力強い声で返事をした。
 同時に打ち上げられる花火。そして湧き上がる歓声。
 麻帆良祭、いよいよ開幕である。





 一方その頃、解放された超はある場所で葉加瀬と合流していた。
 ゴゥン、ゴゥンと重低音が辺りに響いている。
「超さん大丈夫でしたか?」
「いや〜、ヤバかったネ。危うく記憶を消されるとこだったヨ」
「今度捕まったら、流石に見逃してもらえないでしょうね」
 さて、今回は上手く逃れる事ができた超だが、実は彼女、これまでに三度魔法協会から警告を受けている身だったりする。
 それらの警告を無視した上での今回の件だったので、捕まっていれば流石に見逃してはもらえず、魔法協会により魔法使いに関する記憶を消されていただろう。
 もっとも、消されたら消されたで保険を掛けていたりしそうなのが、この超鈴音という少女なのだが。
「いや〜、それにしてもネギ坊主は強くなってたネ。まさか追い詰められるとは思わなかったヨ。横島師父達がいなければ、どうなってたか……」
 とりあえず『風花・武装解除』を防げなくて脱がされていただろう。
「味方にできたら、かなり使えそうだけど……難しいだろうネ」
「もう自立しちゃってる感じですもんね」
 以前のネギならば引き込む事もできたかも知れない。しかし、横島達との出会いを経て、今や自らのパーティを率いる立場となった彼は、責任感の強さもあり、そう容易い相手ではなくなってしまっている。
「ま、仕方ないネ」
「それはいいんですけど、超さん……」
「ん? 何かナ?」
「止めません? こういうあまり意味のない黒幕ムーブは」
 そう言って呆れる葉加瀬が立つ場所は、前夜祭を楽しむ人々を見下ろす飛空船の上だった。
 そう、麻帆良の上空を飛ぶ飛空船の上こそが、二人の合流場所だったのだ。
 花火が見やすい特等席ではあったが、先程から飛空船のエンジンの音がうるさい。
「やっぱり降りませんか?」
 葉加瀬が降りようと促すが、超はじっと花火と、そして満天の星を見上げていた。
 いつもより落ち着いた表情で、その目はどこか遠くを見つめている。
「いいじゃないか、ここならホラ――こんなに星が近いネ」
 そう言って天に向けて掲げる彼女の手には、不思議なデザインの懐中時計『カシオペア』が握られていた。





つづく


あとがき

 という訳で、カシオペアはネギの手に渡りませんでした。
 色々と理由はありますが、これでネギは一日を何度も繰り返してという手が使えなくなります。

 原作の麻帆良祭の期間は、6月20日(金)〜6月22日(日)となっています。
 観光客を呼ぶ意味もありますので、麻帆良祭は6月第三週の金曜日から日曜日の三日間で行われると『見習GSアスナ極楽大作戦!』では設定しています。

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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