topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.147
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「ひゃっほーーーーっ!!」
「飲めや歌えやーーーっ!!」
 前夜祭の見物を終えてレーベンスシュルト城に戻ったアスナ達は、もう夜遅いというのにいまだにテンションマックス状態だった。
「茶々丸、アルコールは飲ませてないだろうな?」
「まさか、そのような」
 その勢いはエヴァも呆れて酒でも飲んだのではと疑うほどだ。
 エヴァと茶々丸、それと横島以外に騒ぎに加わっていないのは少ない。
「遠足前夜みたいねぇ」
「似たようなものじゃない?」
 刀子とシャークティの先生二人。
「まったく、毎年の事でしょうに……」
「昨日まで準備してましたからねぇ」
「……徹夜明けのテンション」
 高音、愛衣、ココネの魔法生徒三人。
「ああもう、月詠まで混じって……興奮して抜かんやろな、アイツ……」
 そして今は家事手伝いの千草である。
「エプロン着けてそういう事言ってると、ホントお母さんみたいよ」
「えっ、マジで!?」
 そう言いつつどことなく嬉しそうな千草。そんな彼女が心配する月詠は、アスナ達に混じって大騒ぎ。友達だろうが強ければ斬りたくなるタイプの彼女だが、弱い友達はそのまま友達なのだ。アーニャ、コレットも一緒になって騒いでいる。
 そんな友達に囲まれる月詠の姿を見て目を細める千草は、やはりお母さんであった。

 ちなみに横島がどうしてこの騒ぎに加わっていないのか。
 それは、この騒ぎに加わって自分の理性が保てるとは思えなかったからだ。
「よっこしっまさぁ〜〜〜ん
「こら、アスナ! よだれ、よだれ!」
 かつての自分を思い出させるようなアスナがいたというのも大きいだろう。
「あ、アスナズルい!」
「あら、いいじゃない。私達も行けば」
 それを見て次々に近寄ってくる少女達。とてもではないが、横島も騒げる状態ではなかった。

「まったく、こいつらは……」
「明日の朝、大丈夫かしら?」
「……睡眠時間は確保できるようにしておいてやる」
 少女達の波に飲み込まれていく横島を見送ったエヴァは、彼女達が眠った後一時的に城内の時間の流れを変える事を決めた。
 これによりアスナ達は、寝過ごす事なく麻帆良祭のオープニングイベントに参加する事ができるようになったのである。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.147


 青く澄みきった初夏の空をキャンパスに、麻帆良航空部の複葉機が見事な曲芸飛行を披露する。
 それを見て湧く歓声。だが、それだけではない。そこかしこでアトラクションなどが行われ、それぞれに歓声を誘っている。
「想像以上の規模だな、これは……」
「魔法界でも、これほどの規模のはそんなに無いわよ」
 エヴァのおかげで数時間遅れの参加にならずに済んだ横島達も、想像以上の祭りの規模に驚きを隠せなかった。
「三日間の延べ入場者数約40万人。世界でも有数の規模の学園都市の合同イベントですから。大騒ぎのバカ騒ぎ、三日間は昼夜問わずの乱痴気騒ぎという訳です。昨夜の比ではありませんよ?」
 そう説明してくれる夕映は、麻帆良学園都市の生徒として誇らしいのかどこか自慢気だった。
 なお、この場にいるのは横島、千草、月詠、アーニャ、コレット、そして夕映の六人。横島と夕映を除けば学園都市の生徒では無かった。
 アスナ達は皆、出し物の準備のため既に担当の場所に向かっている。夕映も横島達と方向が一緒なだけで、この後は同じ図書館探検部ののどか、パルと合流し、一度図書館島に顔を出してから祭り見物に行く予定だ。
 フェイトの問題もあるが、それはそれとして楽しめる内に麻帆良祭を楽しむつもりらしい。
「そういえば、タダオはクラスの出し物行かなくていいの?」
「ウチのクラスは、女にモテたいヤツだけ参加って事になっててな……」
「ああ、それはもう旦那様には必要ありまへんな〜」
「ぬはははは! 嫉妬の視線がこそばゆいわ!」
 横島のクラスがやるたい焼き屋は、女性との出会いを求める者だけが参加する事になっているので、仮に横島が行っても追い返されてしまうだろう。
 という訳で、横島は既にGSとして警備の仕事に就くからとクラスメイトに伝えており、麻帆良祭の期間中は自由に行動できるようになっている。
 美女、美少女を侍らせて歩いている姿を見られれば「憎しみで人を殺せたら……!」と呪詛を吐かれる事になるだろうが、ただの素人の呪いでは何の影響も及ぼさないだろう。

 もちろん警備員の仕事をするため、横島達はコスプレ中である。
 木を隠すなら森の中、武装を隠すなら仮装の中。麻帆良祭中は学園都市中が仮装OKなので、こんな出で立ちでも特別目立つという事も無い。
 では順に紹介していこう。
 まず横島は、赤い忍び装束に身を包んでいた。派手な色なのは、地味な色だと不審者扱いされかねないためだ。同様の理由で顔も隠していない。
 千雨が、漫画研究会にも属するパルの協力も得てデザインした、要所要所をプロテクターで補強して格好良くしつつ、動きやすさは阻害していない自信作である。
 ちなみにプロテクターは金属ではなく、茶々丸が加工してくれた強化プラスチック製。仮装といっても実際にそれを着て警備の仕事をするため、実用に耐えうる強度を持たせてある。

 続けて月詠だが、彼女は横島の忍び装束の色違いで、絶妙に女の子向けデザインにアレンジされたものを着ていた。色は白で、横島と並ぶと紅白になってめでたい。
 元々彼女はロリータ系の可愛らしい服を好むのだが、「首切り……暗殺……うふふ……」と笑みをこぼすぐらいに、このお揃いの忍び装束を気に入っていた。
 別の意味で気に入ってそうな気もするが、とりあえずそういう事にしておこう。

 その一方で千草は、いつもの陰陽師としての着物である。千雨曰く「これ以上どうしろと?」との事だ。
 最近は霊力供給の修行のおかげか肌が若返ったかのようにきれいになったらしく、自信を持って大胆に胸元を開いている。
 彼女の陰陽術は札の隠し場所など、その出で立ちだからこそ成立する部分があるため、下手に変えられなかったという理由もある。
 その一方で、千草が若さに負けず、若返った肌を活かして色気で勝負しようとしたというのも一面の真実であった。
 普段のものよりも良い着物を持ち出しているあたり、彼女の本気具合が伺えるだろう。

 アーニャとコレットは警備員ではないのだが、せっかくの機会という事で二人もコスプレしていた。
 丈が短い、お揃いのデザインで色違いの着物。裾や袖にフリルが付いて可愛らしい。
 二人とも「ニッポンのキモノ!」と大喜びで袖を通していた。
 コレットは本来外出時はアリアドネーの制服でなければならないのだが、彼女以外の生徒達が警備を手伝っているため、それと間違われないよう祭り期間中は制服を着ないようにと言われていた。
 普通の服を着ているとウサギの耳が目立ってしまうのだが、千雨の提案でアーニャの方が猫耳としっぽを付ける事によって、コンビのコスプレイヤーに見えるようにしている。
 今の麻帆良の雰囲気とも相まって、二人とも一般の観光客にしか見えなかった。
 警備の仕事で別行動になる事もあるだろうが、二人一緒ならば大丈夫だろう。

 最後に夕映、黒いマントを羽織り、コウモリが描かれた帽子を被っている。
 こちらもただのコスプレで、のどか、パルと示し合わせているそうで、その後合流した二人も同じような出で立ちをしていた。
 せっかくなので横島は、パルにネギ達の様子を聞いておく事にする。
「パルちゃん、ネギ達はどうだ? 昨日大騒ぎして寝不足とかなってないか?」
「あ、そっちは大騒ぎだったんですか? こっちは先生達の目があって全然でしたよ〜! その分、早起きできたんですけどねぇ」
「こっちの先生は放置してたなぁ」
 ちなみに千草、刀子の二人は、エヴァに付き合って晩酌を楽しんだそうだ。
 ともかく、あちらも元気に活動を開始しているらしい。
 ネギは関東魔法協会の一員として、教師として忙しそうなので、せめて木乃香の事は心配せずに済むようにしてやらねばなるまい。
 その事について伝言を頼むとパルは笑顔で承諾、のどかはペコリと頭を下げ、夕映と一緒に去っていった。
 ちなみに夕映は、午後に児童文学研究会で絵本の朗読会に参加するらしいので、そちらで合流する予定だ。


「さて、俺達だけになったがどうしよっか?」
「タダオ達は警備じゃないの?」
「俺達は警備って言っても木乃香ちゃんの警備なんだよ。街の警備は他の人達の仕事だから邪魔しちゃダメだ」
「そう言うてサボるんやな」
「サボりじゃないぞ、あいつら手柄争いしてるから、下手に手を出さない方がいいんだよ」
「ものは言いようですな〜」
 実際嘘ではない。特に関西呪術協会は、誰がフェイトを倒すかでしのぎを削っている。
「それじゃあ、どうするんですか?」
 コレットが小首を傾げながら尋ねると、横島は懐からスケジュール帳を出して答える。
「まずアスナがな、開場までの準備だけらしいんだ、仕事が。だから最初に美術部に行ってアスナと合流する」
「それ、力仕事しか求められてないんじゃ……」
 アーニャのツっこみは恐らく正しいが、アスナの名誉のためにスルーして話を進める。
「あと、木乃香ちゃんが占い研究会の出し物を午前で切り上げるそうだから、そこで木乃香ちゃんと合流……刹那ちゃんもついてるから、その前にマジカルミステリーツアーでもいいか? いや、早く合流して待ってた方が……? いや、しかし……だが、しかし……」
「ああ、3−Aの……あれ、ウチも楽しみやわぁ……」
 どうするべきかと悩む横島とは裏腹に恍惚とした表情を浮かべる月詠。マジカルミステリーツアーは彼女も準備を手伝ったので余計に楽しみなのだろう。
 それを見ていた千草はしばし考え、そして意を決して横島にある提案をする。
「それなら、ウチだけ先にお嬢様と合流しとこか?」
「どういう事?」
「そしたらお嬢様の護衛は刹那とウチの二人になる。この子ら連れて遊んでくる余裕もできるんとちゃうか?」
「ああ、そういう事か……」
「千草はん、ええんですか?」
「その代わり、ちゃんと横島の言う事聞くんやで?」
「それはモチロン!」
 笑顔で返事をする月詠を見て、満足気に頷く千草。
 もしかしたら彼女は、月詠の望みを叶えてやりたかったのかも知れない。本人は認めたがらないだろうが、やはりお母さんである。
「そういう事ならお願いできるか?」
「分かった、ウチがおらんでも大丈夫やと思うけど、念のためな」
 千草の提案を採用して五人は動き出す。場所は同じ麻帆良女子中学校なので、そこまでは一緒だ。
 大通りを見てみると、騎士に宇宙人に水着の少女、象に巨大ロボットに恐竜と、実に節操がなく、そして賑やかなパレードが行われている。
「ねえねえ、タダオ! 肩車して!」
「あいよ、任せとけ!」
 それに気付いたアーニャが肩車をおねだりしてきたので、横島はすぐさまそれを叶えてあげた。
 ちょうど進行方向が同じだったため、肩車されたアーニャはゆったりとそれを楽しむ事ができた。
「ホント、すごいわねぇ……」
 そう呟く彼女の頭上を、色とりどりの気球と「麻帆良祭実行委員会」と大きく書かれた飛空船が飛んでいく。

 第78回麻帆良学祭、いよいよ開幕である。





つづく


あとがき

 原作では夕映とネギが一緒に参加するのは哲学研究会の「ハイデガーとアリストテレスの勉強会」です。
 横島には似合いそうにないので、横島と一緒に参加するのは一緒に名前を出していた児童文学研究会の「絵本の朗読会」の方にしました。

 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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