topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.167
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 令子がアスナ達から鈴音について聞いている間、横島は横島で鈴音について考えていた。
 自分の娘であり、かつての恋人の生まれ変わり。彼もまた複雑な思いを抱いている。
「もう復活してんだけど……」
 なにより、既にルシオラは復活しているというのが複雑だ。そこにもう一人出てくると戸惑うのも当然である。
 いや、横島という男ならば、ここで「ダブルルシオラに挟まれてーーーっ!!」とか言いながら興奮するのが正しい姿かもしれない。
 そうなれないのは、ひとえに「今までの超鈴音」のイメージがあるからだろう。あの破天荒な少女がルシオラだったといわれて大きなショックを受けている。
 しかし彼の方向性は、令子とは少々異なっていた。

「お、俺の教育が悪かったのか……? それとも、美神さんが教育に悪かったのか……?」

 両方かもしれない。とは言ってはいけない。
 なお、横島の存在そのものが教育に悪かった。それどころか全部が原因というのも考えられるのはここだけの話である。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.167


「そんな落ち込まないでよ〜。兄ちゃんの教育が悪いとか、そんなの無いって」
 肩をポンポン叩きながら慰める裕奈。
 彼女は本気で言っている。彼女達にとって横島は、良き師匠なのだ。流石に娘に「あの」霊力供給の修行はしていないだろうとも信じている。
 そもそもアレは、妙神山での修行を経て、アスナを修行させている内に身につけたものなので、鈴音の生まれた未来では使えるはずもないものなのだが、彼女達は知る由もない。
「ところで忠夫さん」
「なに? 千鶴ちゃん」
「次に保護者参観があったら、見に来るんですか?」
「……行かないとダメか? やっぱり」
 横島は、学生服で行くのはまずいだろうかと真剣に考えてしまった。そういう意味では、しっかり鈴音の事を娘と考えているのかもしれない。
 そして突飛な発想をしているあたり、千鶴も冷静ではないのかもしれない。
 しかしそれは他の面々も同じようで、多かれ少なかれ「横島の娘」の出現に混乱しているようだ。特にクラスメイトであった3−Aの面々はそれが顕著である。
 「クラスメイトの父親」という事で横島を遠くに感じてしまい、それにショックを受けたのだ。

「連れ子がおるもん同士か……」
「ちょっと待って、千草はん。千草はんの連れ子って……」
 なお、一番リアルな方向性で暴走しているのは千草であろう。
 彼女の中で月詠は、既に娘扱いになっていた。

 こういう流れになってくると、3−Aの少女達は「横島を元気付ける名目で騒いじゃおう!」と言い出し始める。
 ショックを受けて沈んでいても始まらないという事で横島もそれに逆らわず、レーベンスシュルト城は、先程までと打って変わってパーティ会場と化すのだった。
「で、今日は修行は無しですか?」
「……今日は休みで」
 明日に備えてだ。令子が怖いからではない、多分。
 
 それはそれとして、修行が無ければ無いで少女達は横島の周囲を確保しようとする。
 特に今夜はいつも良いポジションを確保するアスナと、いつも騒ぎを止めるあやかの二人が、鈴音の話をするため令子につかまっているので尚更だ。
 風香とシロが威嚇し合い、怯えた史伽が助けを求めてちゃっかり横島の膝の上を確保。
 右隣では裕奈がこのチキン美味しいよと勧め、左隣ではアキラがご苦労様とジュースを注ぐ。
 背中には出遅れて隣に座れなかった夏美……と見せかけ、彼女は背中に顔を埋めてこっそり一日駆け回ってきた彼の匂いを堪能していたが、彼女についてはおいておく。
「そんな事になってたんだね。言ってくれたら手伝ったのに……」
 ジュースでお酌をしながらアキラが言った。
 実は横島一行は、鈴音の時間転移に気付いてから、彼女が再び現れるまでの間、普通に麻帆良祭を楽しんでいた。その間にアキラ達水泳部のたこ焼き屋台にもいたのである。
「アキラちゃんなら、地面の上での追跡ならなんとかなったかも知れないけど……」
「……空を飛ばれると厳しいね」
 クラスメイトが関わる事なので知ればアキラも参加したがったろうが、ただの追いかけっこではなかったのでそれは難しかっただろう。だからこそ横島達も、アキラに事情を説明しなかったのだ。
 クラスメイトなので、できるだけ巻き込まないようにしようと思ったという面もある。
「というか兄さん、普通にお祭り回ってたんだ? 鈴りんが出てくるまで」
「時間移動して、しばらく戻ってこないのは分かってたからな」
「へ〜」
 戻ってくるまでの間、鈴音は「隠れている」のではなく「存在しない」ので、捜索するだけ無駄なのだ。
 こういう時間を開き直って休息に当てられるかは、結構大事な事である。
 その話を聞いてアキラは思った。自分ならばそんな風に休む事ができただろうかと。
 そして多分無理だっただろうと心の中で答えを出す。元々彼女は心配性なところがある。鈴音の話を聞けば、そわそわしっぱなしで休むなどできなかっただろう。
 そういう意味でも彼女達を巻き込まなかった横島達の判断は正しかったといえる。

 ちなみに横島達は、地下の探索を終えて身だしなみを整えた後、囲碁大会を終えたエヴァ達と合流、その後茶々丸の野点で彼女達に状況を説明した。
 エヴァも時間移動については「そういう霊能もあるらしい」程度にしか知らず、鈴音がその使い手だとはにわかに信じられなかったようだ。
 しかし、同じ時間移動の使い手である令子が痕跡を見つけた事について話すと、闇雲に捜すよりはという事で、鈴音を捕まえに行く間の木乃香の護衛を承諾してくれた。
 エヴァ自身も魔法で空を飛べるので追跡班候補でもあったのだが、それは面倒だと妥協した結果だったりするのはここだけの話である。
 それから一行は時間が来るまで、アキラの屋台以外にココネのクレープ屋台にも顔を出し、夏美の演劇など横島パーティの面々の出し物をできる限り。
 それだけでは終わらずあやかの乗馬体験など、武闘会に出ていたネギの代わりとしてネギパーティの面々の出し物の方も見て回っていた。
 なお、行く先々で少女達に歓迎される横島を見て、令子が不思議なものを見るような顔になったのはいうまでもない。
「……あの子達、騙されてるんじゃない?」
「弓さんだって、横島さんが学園祭に来たらああいう対応すると思いますよ?」
 そんな会話が令子とおキヌの間で交わされていた。
 横島が麻帆良に来たのは、GS協会の使者として、『関東魔法協会』に協力するため。今も学園長達が進めている情報公開に向けての下準備の一環だった。
 しかし、それとは別にアスナと出会い、夕映、古菲と出会い、彼女達を指導する事になった。そうして横島は、GS協会から依頼された仕事とは別に指導者としての実績を積み、成長した。それがあるからこそ少女達から信頼され、歓迎されているのだ。
 なお教え子以外の面々に関しては、アスナ達のおかげであやか達には「彼のいつものノリ」を見せていないからこその信頼である。

 閑話休題。

 ひとしきり今日の出来事を語った少女達の話の内容は、やがて鈴音の事に移っていく。
 麻帆良女子中はクラス替えが無いため、3−Aの面々は入学当時から鈴音の事を知っている。だからこそ、横島の知らない彼女の姿を教えてあげたいという思いもあるのだろう。
「そういえば鈴りんって、入学した頃から日本語ペラペラだったよね」
「あの中国人っぽい喋り方って、どこから来てたんだろう?」
「キャラ作りだろ、キャラ作り」
「私、超……鈴と一緒に日本語勉強したアル」
「古菲のアルとかってもしかして……?」
 そんな笑い話から始まり、初めての中間テストでほぼ満点を取って皆を驚かせた事、大学の方にも顔を出すようになって天才ぶりを発揮するようになった事、そして麻帆良祭で『超包子』を始めた事、様々な話を横島に語って聞かせた。その楽しそうな表情から、本当に仲が良かった事が伺える。
 横島は鈴音が娘であった事に戸惑いを覚えている。裕奈達もそれは分かっている。
 しかし、双方を知る彼女達としては、横島と鈴音にはこれからも仲良くしてほしいというのが本音であった。
 その気持ちは伝わり、横島も今の鈴音が何を考えているのかちゃんと知らなければ、悪い事を企んでいるなら止めなければと決意を新たにしていた。


 一方、超の話を聞いてすぐに本拠に戻った学園長は、すぐさま魔法先生達と魔法界の関係者を呼び集めていた。
 あの空間の究極の魔体とロボット軍団は横島達が片付けたが、果たして鈴音のロボット軍団はそれで全てだろうか?
 学園都市の地下がどうなっているかを知っている彼は、「他にもロボット軍団を隠しているところがあるかもしれない」と考えていた。
「町は魔法生徒に、郊外は関西呪術協会に、そして関東魔法協会と魔法界からの援軍で地下を大捜索する……いや、それはダメじゃな」
 魔法界からの援軍は傭兵も多い、学園都市の地下は機密が多いので、捜索に参加させる者は厳選せねばならない。
「傭兵達を町に……いや、彼らにとっては実戦は稼ぎ時、郊外に回す方が良いかの? 関西呪術協会も、町を任せれば信頼を見せる事に……」
 三者への配慮を考える学園長。ふと見ると、時計の針が麻帆良祭二日目があと数分で終わる事を示していた。

 明日はいよいよ麻帆良祭最終日。世界樹の魔力が最も強くなる日。
 鈴音、そしてフェイトが何を企んでいるかは分からないが、情報公開の成功させるためにも、なんとしてもそれを食い止めなければならない。
 湯呑みを手にすっかり冷めてしまったお茶をすすりながら、学園長もまた明日への決意を新たにするのだった。





つづく


あとがき

 超鈴音に関する各種設定。
 レーベンスシュルト城に関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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