topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.209
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 霊力供給の方法は、大きく二つに分かれる。
 一つは背後から首元に手を当てられながら供給されるもの。もう一つは抱き合う等の方法で支えられながら供給されるというものだ。
 後者の方が安定しているが、横島と密着する事になるので恥ずかしくなる。また横島側の煩悩も刺激するため、ある一面ではかえって不安定になるという問題もあった。
 勇気を振り絞って参加したおキヌだったが、そこが限界だったようで、彼女が選んだのは前者の供給方法だった。
 おキヌはベッドの端に腰掛け、後ろから首筋に手を当ててもらい霊力供給を受けるのだ。
 この体勢ならば触れ合うのは最低限で済み、紅くなる顔も見られずに済む。これならば大丈夫だ。おキヌはそう考えていた。

 その考えが甘かったと思い知るのは数分後の話である。

「んっ…… んんっ
 口を押えて、必死に声が漏れるのを防ごうとするおキヌ。しかし、その効果が出ているとは言い難い。
 確かに身体は触れ合わない。しかし、身体が横島の霊力で満たされていく。
 首元から身体中にじわじわと広がっていく感覚。内側から押し広げられるような圧迫感と共に、身体を重ね合わせているような錯覚を覚える。それがおキヌには、たまらなく心地良く感じられた。
 たまらず何かから逃れるかのように身をよじらせる。しかし横島に肩を掴まれ、ビクッとその動きを止めた。霊力供給中に身体を動かすのは危険なのだ。
 快楽の波に思考が翻弄され、脳裏に火花が散り、冷静にものを考える事ができなくなる。
 ただただおキヌは、身体を倒してはいけないと堪え続けた。
 むしろ倒れてしまえば、横島が咄嗟に支えてくれて楽になれるのだろうが、そこまで考える余裕が彼女には無かった。
ん〜〜〜〜〜っ♥♥
 全身のチャクラを巡る霊力が足まで満たされた時、おキヌはビクンッと身体を大きく震わせ、ピンと伸ばしたつま先を痙攣させた。
 そして力を失い、崩れ落ちる。
「おっと」
 おキヌはそのまま床に向けて倒れるところだったが、横島が慣れた手付きで支えたため倒れずに済んだ。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.209


 その一部始終を見ていた六女組の少女達。皆呆然としていて何も言う事ができない。
 実は麻帆良組の皆はなんらかの形で身体を密着させて霊力供給を受けていた。だから彼女達はこう考えていた。「首に手を当てる方法なら、恥ずかしさもマシだ」と。実に半分以上がそう考えていたのだ。
 しかし、その考えは甘かった。見ていた彼女達も、それを思い知らされていた。
 横島と抱き合うのは恥ずかしいが、それは半分。もしかしたらそれ以下かもしれない。
 彼女達の視線の先にはぐったりとして、いち早く復活した木乃香と千鶴に介抱されているおキヌ。
 触れ合わずともここまでできる。霊力供給の凄まじさを見せつけられていた。

 なお横島は横島で、おキヌに霊力供給してしまった事で、聖域を穢してしまったかのような罪悪感と、何故か沸き上がる達成感を同時に味わっていたりする。
 複雑な感情が渦巻き、静かな水面のような賢者のごとき冷静さと、全てを燃やし尽くすような滾る熱さがぶつかりあっていた。
 結果として霊力が増し、はたから見ている少女達にもハッキリと分かる炎のような霊力が横島を包んでいる。六女組の半分ぐらいはそれを見て腰が引けてしまっていた。
「横島さん……!」
「次は……!」
「私が……!」
 しかし、逆に燃える者もいた。成里乃、霞(シア)、姫、大和だ。順に横島への敬意が強い者、横島への憧れが強い者、憧れの気持ちならば霞にも負けていない者、そしてGSを目指す者としての覚悟が決まっている者である。
 それを皮切りに次々と修業を受けると申し出てきた。
 四人に続いたのは美菜。クラスメイトの成里乃と姫の後を追う形だが、彼女の場合は躊躇していたというより、ぼ〜っとして出遅れただけだったりする。
 次はジミーこと静美。こちらは霊力供給の修業の実態を見て躊躇していたが、横島の霊能力者としての凄さを目の当たりにして、修業を受ける事を決意したようだ。
 有喜、メリー、むさしの三人は修業を目の当たりにして恥ずかしくなっていた。しかし、なんだかんだといって彼女達もGSを志す者。彼女達も霊能力者としての凄さを見て、これを逃してはならないと覚悟を決めたようだ。
 なお、最後まで躊躇していたのはむさしである。おキヌへのライバル心で真っ先に申し出そうなものだが、持ち前の精神防御の弱さを発揮していた。
 とはいえ一度に全員という訳にはいかないので、一人ずつである。
 受けると申し出た順にという事となり、まずは成里乃が一歩前に出た。緊張した面持ちだ。やはり怖くないという訳ではないのだろう。
 待ち受ける横島も息が荒いが、これは興奮しているためではなく、むしろそれを抑えて落ち着くための呼吸である。
 これはあくまで霊力供給の修業。横島も余計な事をするつもりは無い。その強い意思の表れとみていいだろう。
 後は横島という人間を信じられるかどうか。少女達は信じる道を選んだ。

「それでは……抱き合う形でお願いします」

 そして、門が開いた。
 その先に続くのは極楽か煉獄か……。





 夏草や少女(つわもの)どもが夢のあと。
 あの状態の横島に勇敢に挑んだのだから、兵(つわもの)と呼んでしまっても問題は無いだろう。
 結論から言ってしまうと、横島は無事にやり遂げた。今は建物の外に出て鬨の声か遠吠えか分からない雄叫びをあげている。外といっても水晶球内なので、周りにいるのは与作達だけだ。誰の迷惑にもならないだろう。
 死屍累々の少女達が部屋に残された形になるが、それは仕方がないだろう。
 皆ぐったりとしており、胸元だけでなく裾もはだけてふとももまで露わになっている。なお、誰がと具体的に名前を挙げるのは避けるが、六女組十人の内六人は下着を着用していない。本来は水垢離などの修業で使う霊衣なので、それが正式なのだ。
 そんな少女達が皆汗ばんだ頬を紅潮させ、息を荒くしている。部屋の中は香り立つような濃厚な熱気が漂っていた。
 これでもなんとか耐え切った彼の理性は、賞賛されてもいいかもしれない。
「大丈夫ですか〜?」
 一足先に復活したアスナ達が、六女組の少女達を助け起こす。
 彼女達自身も経験があるのだが、この熱気がこもった部屋にいると落ち着かないため、早めに移動してしまった方が良いのだ。
 という訳で手分けして六女組を助け起こし、皆で大浴場へと移動。汗やらを洗い流す。
「す、凄かったわ……」
「まだフワフワしてる〜……」
 入浴中の話題は、おのずと修業の事になる。
「あなた達、本当に毎日あれを……?」
「はい、毎日注ぎ込まれてますっ
 麻帆良組と六女組の垣根を越えて話している姿もある。
 同じ釜の飯ならぬ、同じ風呂に入った仲。助け、助けられた事もあって仲良くなり、また連帯感も生まれたようだ。
「すごい汗かいちゃったわ。臭わなかったかしら?」
「むしろ、横島さんの匂いが……」
「……え、そっち?」
「でも確かに、顔押し付けた方が安心できたかも……」
「マジで!?」
 ちなみに一人目の匂いフェチが麻帆良組の夏美、二人目は六女組のメリーである。雷獣変化を使う影響か、鼻がきくようだ。
 特にメリーは、本能で横島をリーダーと認め、服従するようになっていく事になる……が、それはもう少し先の話。
 元より変化時は獣の本能に従っているところがあるので、そうなってしまうのも仕方がない、のかもしれない。
「私は押し付けられる方が……」
「えっ? そ、そうかなぁ?」
「そういえば千鶴さん、横島さんの頭を抱えて胸に……」
「横島さん、よく我慢できたわね……」
 高校生の六女組も羨むたわわな果実。その誘惑に耐えきった横島に、少女達の敬意が少し高まったかもしれない。
「ていうか、修業中にお尻に当たってたのアレ……よね?」
「わ、私、さわっちゃったかも……」
「何やってんのよ、あんたは」
「いや、こっちも触るチャンスですよ?」
「アスナさん!?」
 しれっというアスナ。麻帆良組の幾人かは常識だといわんばかりにうんうんと頷いており、六女組はまだ不慣れである事を思い知らされる。
 もっとも慣れてしまっていいのかどうかは微妙なところではあるが。
 実際のところ、横島の暴走を狙っている者がいる事は否定できない。横島だけでなく、彼女達もまた煩悩まみれなのである。霊力供給の修業は、その実理性と煩悩の激しい攻防戦でもあるのだ。
「そういえば……」
「あれ、絶対狙ってるよね……」
 なお、満場一致で「一番ヤバい」と認定したのは刀子。彼女はベッドに横たわり、横島が覆いかぶさる体勢で抱き合いながら霊力供給を受ける事を好んでいた。しかもスラリとした脚を横島の腰に回して。
 彼女によって横島の理性が鍛えられているという見方もできるかもしれない。
 当の刀子は、機嫌が良さそうに鼻歌混じりで身体を洗っていた。霊力供給の影響で若返ったとしかいいようがない肌のハリにご満悦である。
「……負けてられないです」
「えっ、そういう勝負なの!?」
「横島さんは煩悩を刺激されると霊力が増す。つまり、供給するのに掛かる負担が減るという事ですよ?」
「そ、そうなのかしら……」
 間違ってはいない、といっておこう。
 元より霊力は文珠を作れるぐらいに有り余っているので、必要かと問われると首を傾げる。しかし、喜ぶかと問われれば、間違いなく喜ぶだろう。もしかしたら血の涙を流しながらかもしれないが。
 この後少女達の話題は、いかにして横島の煩悩を刺激するかにシフトしていった。同時に刀子が目指すべき目標として認識されたようだ。
 中学生のアスナ達がノリノリなので、高校生として負けていられない。それに、横島に弟子入りしたのは自分達の方が先だという思いもあったのかもしれない。

 もっとも、全員がこんなノリという訳ではない。それは彼女達の名誉のために言っておこう。
 六女組の中でも一部の少女達、具体的にはおキヌ、有喜、むさしの三人は、姦しい話の輪に加わらず、大きな浴槽の隅で小さくなっていた。
 お互い視線を合わせないようにしているが、それでも気になるのかチラチラと相手の方を見ては、目が合って顔を伏せる。いつもならばおキヌをライバル視しているむさしも、今日ばかりはおとなしくなっている。覚悟を決めたからといって、恥ずかしさが消える訳ではないのだ。
 麻帆良組も皆が皆煩悩まみれという訳ではない。ここには古菲とアキラ、それに千雨もいた。
「まぁ、なんだ……この修業、霊力が使えれば自力でできるって話だから、どうしても無理というなら、止めといた方がいいぞ?」
「……確かに、霊力を高めて、身体に掛かる負荷を上げている訳ですから、自力でやった方が安全という見方も……」
 有喜はすぐに理解したが、歯切れが悪い。
 そんな彼女をジト目で見ながら、むさしが口を開く。
「でも、効率で言ったら横島さんにやってもらった方が良いよね?」
 結局のところはそこなのだ。
 自力の方が安全という事は、それだけ掛かる負荷も小さいという事だ。自分達よりはるかに強く、ギリギリを見極めて負荷を掛けてくれる横島の修業の方が効率が良いのは言うまでもない。
 そもそも自分で霊力を高め、負荷を掛け続けるのが難しいというのも忘れてはいけないだろう。
「結局のところ、続けるしかないでしょ。……皆やるんだし」
 更にぶつぶつと続けるむさし。
 自分がやらずとも、他の者達はやる。結果として引き離されてしまう。取り残されないためには自分も受けるしかない。
 今回修業を受けた六女組の中で、そう考えていた者はむさしだけではないだろう。有喜もまったく考えていなかったとは言えない。
「今の私達が自力でやっても、どれだけの効果が出るか分からないから……」
「先輩達も大変ですね……」
 そう言ったのはアキラ。彼女も恥ずかしさが強いのだが、まだ自分で霊力が扱えないため、こちらは選択の余地が無い。
「六女にはクラス対抗戦とかあるからどうしても、ね……」
「クラス対抗戦!?」
「古菲、ステイ」
 目を輝かせて立ち上がろうとする古菲を、千雨が手を引いて止めた。
 その後も真剣に話していたが、結論としては恥ずかしいがこれからも修業を受け続けるという事になった。
 本音を言えばそれ以外にも理由はある。それはお互いに分かっている。真剣に話しながらも紅くなっている頬を見れば一目瞭然だ。
 しかし、それには触れない慎みというものが、彼女達にはあった。

「…………」
 ここで会話に参加していなかったおキヌは、無言で立ち上がって浴槽を出て行き、また身体を洗い始めてしまった。
「……これ、シロちゃん気付いたりしない、よね……?」
 匂いでシロに気付かれるのではないかと危惧したようだ。
「美神さんには絶対に話せない……魔理さんとかおりさんにも……!」
 バレてはいけない。しかし、そう思う一方で、横島にこんな事やあんな事をしてもらったと自慢したいという思いがおキヌの中にあった。霊力を供給された高揚感から、テンションが上がっているからかもしれない。
 とはいえ令子達には話せない。それならば……。
 おキヌがチラリと視線を向けた先には、姦しい話の輪。彼女達も家族や他のクラスメイトには話せないが、ここでなら話す事ができる。
 いうなれば、今ここにいるのは秘密を共有した仲。ある意味「共犯者」といえるかもしれない。
 帰ったら話せなくなる。ならば自分も恥ずかしがらずに、あの輪に参加するべきだろうか。そんな考えが頭を過る。
 話したいと思ってしまっているあたり、やはり彼女も横島の霊力に酔っているのかもしれない。しかし、それは言わぬが花である。





つづく


あとがき

 『GS美神!!極楽大作戦』の面々、『絶対可憐チルドレン』の面々に関する各種設定。
 超鈴音・茶々丸に関する各種設定。
 魔法のに関する各種設定。
 関東魔法協会、及び麻帆良学園都市に関する各種設定。
 魔法界に関する各種設定。
 各登場人物に関する各種設定。
 アーティファクトに関する各種設定。
 これらは原作の表現を元に『黒い手』シリーズ、『絶対可憐チルドレン』クロスオーバー、及び『見習GSアスナ』独自の設定を加えて書いております。

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