topmaintext『黒い手』シリーズ魔法先生ネギま!・クロスオーバー>見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.77
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「なにぃ、もう一人呼びたいだと?」
「ウム、実はじゃな……」
 地下室に下りた学園長が、レーベンスシュルト城に入る直前のエヴァに、もう一人魔法先生を呼びたい旨を告げると、案の定彼女は嫌そうな顔をした。魔法先生が来る事ではなく、これから入ろうとしていたところに水を差された事に対してである。
 しかし、学園長が近付き、呼ぶのは裕奈の父、明石教授であり、彼が魔法使いである事を娘に伝えさせるのだとこっそり耳打ちすると、エヴァの中でその話を聞いた裕奈がどう反応するのか見てみたいと言う好奇心がむくむくと膨れ上がってきた。
「……分かった。さっさと呼び出せ、十分だけなら待ってやる」
「今から呼び出すから、それでは間に合わんかも知れんぞ」
「それなら貴様は来るまで上で待っているがいい。まぁ、貴様等が入城する頃にはパーティは終わっているかも知れんがな」
「待て待て、それではせっかくここに来た意味がないではないか」
「そんな事言ってる暇があったら、とっとと呼べ」
 僅かな時間だけでも「待つ」と言っているのだから、エヴァにしては譲歩した方だろう。以前の彼女ならば考えられなかった事だ。学園長は苦笑しながら、魔法で浮かべていた洗濯機の入った段ボール箱を下ろすと、携帯を手に一階へと戻って行く。
 突然連絡を受けた明石教授は、今すぐエヴァの家に来いと言われて戸惑った様子だった。しかし、裕奈も居て、彼女が横島により霊能力者の資質を見出された事を聞くと、学園長が何を言いたいのか悟ったようで、数秒の間を置いて「分かりました」と答える。
 しかし、魔法を使ったとしても、明石教授がここに到着するまで十分以上掛かるだろう。学園長がその事をエヴァに告げると、彼女は返事の代わりに舌打ちし、彼の脇を横切って階段を上って行った。なんだかんだ言いながら、明石教授の到着を待ってくれるようだ。城に入る時間がずれると面倒だと考えただけかも知れないが。
 アスナ達も学園長が呼び出したのが裕奈の父である明石教授である事を聞かされていないため、一体誰が来るのか知りたいと、待つ事に反対はしなかった。レーベンスシュルト城のボトルが中央を占拠する地下室は手狭なため、皆荷物をそこに残して一階へと戻る。
「横島、こっちに来い!」
 リビングに戻ったエヴァは、不機嫌そうな声で横島を呼び付けた。
「ん、どうした?」
「いいから、そこに座れ」
 何事かと疑問符を浮かべながら近付く横島。エヴァは強引に彼をソファに座らせると、その膝の上に自らも腰掛け、胡坐をかいた。
「俺はクッションか」
「馬鹿を言え。背もたれもあるのだから、どちらかと言えば椅子だろう」
 そう言いつつ、エヴァは横島の胸に小さな背を預けてくる。こころなしか、その顔には微かな笑みが浮かんでいるようだ。
 何にせよ、機嫌が良くなっているのは確かなようなので、横島は抵抗せずに明石教授の到着を待つ事にした。こちらはアスナ達と違い、先程学園長と話した内容から、呼び出されたのが明石教授であろうと察しがついている。
 そんな横島の両隣には、それぞれアスナと裕奈が座った。二人とも学園長が呼び出した人物に興味津々の様子だが、片方の裕奈は思い切り当事者である。しかし、エヴァの様子を見るに、彼女は当然目の前に父親が現れた時に裕奈がどんなリアクションをするか見たがっていると思われるため、横島は苦笑いで誤魔化し続ける。

 それから皆で他愛もない話をしながら待つ事十数分。何者かがエヴァの家のドアをノックする。
 おそらく明石教授であろう。学園長は出迎えに行こうとする千鶴を手で制し、自ら率先して玄関へと向かった。
 扉を閉じる音がして、二つの足音がこちらに近付いて来る。一同が固唾を呑んで学園長ともう一人が姿を現すのを待っていると、そこにどこか困ったような笑みを浮かべた明石教授が学園長と共に現れた。彼の顔を知るアキラ、まき絵、亜子の驚きの視線が一斉に裕奈の方に向き、当の裕奈は目をパチクリさせて絶句していた。無理もあるまい。
「さぁ〜て、役者は揃ったようだし、そろそろレーベンスシュルト城に入るとするか」
「裕奈は放置かよ」
「話なら中でも出来るだろう」
「そりゃまぁ、そうだろうが……」
 十分以上、明石教授の到着まで待ってやったエヴァは、呆然とする裕奈をよそに皆を引き連れて地下室へと向かう。
 状況が理解出来ない裕奈は不安そうな表情でチラチラと父親に視線を向けながらも、何を言って良いのか分からずに、横島の手を取り黙ってエヴァの後を付いて行くのだった。
 無言のままレーベンスシュルト城に入る一同。辺りには気まずい雰囲気が漂っている。学園長は明石教授の脇腹を肘で小突きながら「なんとかせい」とせっつくが、明石教授も急な呼び出しに心の準備が出来ていなかったため、娘に何と言えば良いのか分からずに戸惑っている。
 エヴァはニヤニヤと笑みを浮かべながら歩を進めて行く。助け船を出す気は毛頭無いらしい。
 やがて一行は大きな広間に到着した。辺りを見回してみると、中央部分に天井はなく三階まで吹き抜けになっていた。二階、三階の壁に沿って通路が張り出しており、壁には扉が並んでいるのが一階からも確認する事が出来た。
「女共は二階、三階の部屋を好きに使うがいい」
「一階の部屋は?」
「実際に見れば分かるが、厨房に食堂、それに倉庫。どれも宿泊用の部屋じゃない」
 エヴァの話によると、ここは元々は使用人達が寝泊りするための区画なのだそうだ。そのため宿泊出来る部屋が密集している。
 レーベンスシュルト城は、元々客人を迎えるように作られていないため、無駄に広い客室に大勢を寝泊りさせるよりも、こちらの方が寛げるだろうと言うエヴァなりの配慮である。何より、使用人用と言っても少女達が普段から暮らしている寮の部屋と同程度の広さはあるのだ。多少古めかしい所はあるが、もてなしとしては十分であろう。
「そう言えば、昨日確認したが、倉庫にはソファやテーブルが置いてあたネ。それを出せば、ここの広間をサロンみたいにして皆で寛げるヨ」
「それじゃ、五月達がパーティの準備している間に、私達で引っ張り出しちゃおうか?」
「さんせー!」
 その話を聞いて、3−Aの中でもノリの良い面々が早速動き出した。
 超一味は買い揃えてきた食材を手に厨房に入り、他の者達は倉庫へと向かう。
 ネギをはじめとする男性陣の宿泊場所は別に用意してあるそうだが、倉庫から荷物を運び出すとなると男手も必要だろうと、豪徳寺と山下が手伝いを申し出る。中村もそれに続き、ポチも面倒臭そうな小太郎を連れて倉庫へと向かったため、心配そうに裕奈と明石教授を見詰めるネギだけがその場に残される事になる。
「………」
 一方、普段ならば率先して動き出しそうな裕奈は、無言のまま動かずにいた。
 彼女にとって、それよりも先に解決せねばならぬ問題があるためであろう。
 この状況下において、学園長に父が呼び出された時から、もしやとは思っていた。
 レーベンスシュルト城に入っても驚いた様子を見せない父を見て、それは確信へと変わりつつある。
 明石教授の方も、もう逃げ出せない事を悟っていた。娘の方へと向き直り、どう切り出したものかと考えていると、彼の考えがまとまるよりも先に裕奈が先に口を開いた。

「ね、ねぇ、おとーさんって、やっぱり、魔法使い……なの?」

 おずおずとした裕奈の問い掛けは、ストレートな直球であった。

見習GSアスナ極楽大作戦! FILE.77


「それじゃ、俺も皆の手伝いに……」
「待って、兄ちゃんはここに居て」
 いたたまれない雰囲気に耐え切れなくなった横島が、倉庫の皆を手伝いに行くと言う名目でこの場から逃げ出そうとするが、裕奈が彼の服の裾を掴み逃がしてはくれなかった。
 今まで信じてきたものが覆されそうで裕奈も不安なのだ。だからこそ兄のように慕っている横島に側に居て欲しいのだろう。
 アスナと古菲、それに夕映と彼女を支えるアキラ、これにネギとその肩の上のカモが、裕奈達のやり取りを見守っている。笑みを浮かべているエヴァも居るが、彼女は見守っていると言うよりも、興味本位で見物していると言った方が正確であろう。
 明石教授としては学園長に恨み言の一つも言いたいところだろうが、関東魔法協会が情報公開の準備を進めている以上、遅かれ早かれこの問題に直面していたのだ。しかも、裕奈自身既に魔法使いの存在を知り、また、自分に霊能力者の資質がある事を知った。
 最早黙っているのは限界である。ここがタイムリミットなのだろう。
「……そうだ、僕は魔法使いだ」
 明石教授は覚悟を決め、自分が魔法使いである事を娘に告げた。
 対する裕奈は、驚いているのか、あやふやだったものがはっきりとした事に安心したのか自分でも分からずに、複雑な表情を浮かべている。
「横島兄ちゃんも知ってたの?」
 続けて裕奈の追及は横島にも及んだ。
 彼が、ある意味ネギよりも学園長に近い位置に居る事は周知の事実である。先程までの横島の態度を見るに、彼ならば知っていても不思議ではない事に気付いたのだ。
「うっ……ス、スマン。学園長に口止めされてたんだ」
 ジト目で見られて素直に謝る横島。次の瞬間、裕奈は何かが弾けたように動き出した。
「兄ちゃんのアホー! なんで教えてくれなかったのよーっ!!」
 不意打ち気味に、横島に飛びつくと、そのまま仰向けに倒れた彼の右腕を取り、腕ひしぎ十字固めへと移行する。
 父も横島も、裕奈に事実を告げる事は出来なかった。裕奈も理屈では分かっているのだ。しかし、感情では納得出来ない。特に横島ならば、霊能力者になるかどうか判断を迫られた際に、こっそり教えてくれても良かったのではないかと思ってしまったのだ。
「痛い痛い! 極まってるっつーか、挟まってる! ふにょっとスッポリと、はぁーんッ!!」
 悲鳴か歓声か分からぬ声を上げる横島。学園長に口止めされていた事は確かだが、実は、裕奈が明石教授から話を聞くよりも先に霊能力者になると決心していたら、学園長との約束を破ってでも裕奈に明石教授の事を知らせるつもりだったのだ。しかし、結果として裕奈が悩んだまま現在に至ってるため、今更言い訳にもならないだろう。
 じゃれついているようにも見える二人のやり取りは、アスナと古菲が止めに入るまで続けられた。裕奈自身も分かっているのだ。横島に当たったところで事実は変わらないと言う事を。
「本当、なんだよね? おとーさんが魔法使いって」
 父から直接聞いても信じられない、いや、信じたくないと考えたのだろうか、裕奈は腕ひしぎ十字固めの体勢のまま、真剣な表情で横島に問い掛けた。力は抜けていたため、横島は顔を彼女の方に向け、はっきりとした口調で「そうだ、間違いない」と答える。
「そっか……」
 力ないその言葉と共に、裕奈は横島の手を離して起き上がった。
「おとーさん、ちゃんと話して」
「分かった。学園長とネギ君も一緒に――いいですね?」
「ウム、ワシもネギ君に話さねばならん事もあるしのぅ」
「え? 僕にもですか?」
 急に話を振られてネギは戸惑うが、元々彼の方がメインなのだ。
 気を利かせた千鶴が、テーブルとソファを一式用意してくれたので、皆でそのテーブルに着き話を進める事にする。
「さて、ネギ君、先日君と戦った赤い覆面の魔法使いの事は覚えておるかね?」
「え〜っと……」
 ネギは思い出そうとするが、パッと浮かんではこなかった。あれからエヴァへの弟子入り、彼女との修行。更にはヘルマン一味の襲撃に、ゴールデンウィーク中の皆との修行と、濃い日々を送っていたので仕方があるまい。
「兄貴、あの覆面教師Xの事だぜ!」
「ああ、あの人か!」
 見かねたカモが助け船を出した事で、ネギはようやく思い出したようだ。覆面教師Xとは、学園長が最初にネギの師匠候補として紹介した魔法先生、神多羅木の事である。この時はまだ、ネギに魔法先生の事は秘密にされていたので、顔を隠すために赤い覆面を被っていた。彼の名誉のために、覆面を被るように指示し、覆面を用意したのは他ならぬ学園長である事をここに記しておく。
「こちらの明石教授もそうなのじゃが、実は麻帆良学園にはネギ君以外にも大勢の魔法使いが存在しておる。高音君や愛衣君もそうじゃ」
 その言葉を聞いて、ネギは驚きに目を見開いた。ここで高音と愛衣の事が出てくると言う事は、ネギ達と二人が接触し、かつ二人が魔法使いであると知っている事を、学園長は把握していると言う事だ。
 思わずネギが横島の方に視線を向けると、それに気付いた横島はブンブンと首を横に振った。彼が報告したわけではなさそうだ。
 そもそも、横島が書く報告書はGS協会の唐巣宛に送られる物。魔法使いに関する事を書いたとしても、個人に関する事についてはネギの名前すら出していなかったりする。
「他にも魔法先生は居るんじゃが、それは日を改めて紹介するとしよう。ヘルマン伯爵を撃退したネギ君ならば、魔法先生達と肩を並べて戦う事も出来るじゃろうしの」
「よ、よろしくお願いします」
 ネギは戸惑ってばかりだが、ヘルマンを倒した事により、自分が学園長に認めてもらえた事は理解出来た。
 更に学園長は、今まで黙っていたのは、修行中のネギが「いざと言う時は、魔法先生達を頼れば良い」と安易な道に逃げ込まないようにするためだった事をネギに伝える。それを聞いたネギは、そう言う理由ならば仕方がないと納得したようだ。素直な少年である。

「それじゃ、おとーさんも私達の事知ってたの?」
「ネギ君とエヴァンジェリンの戦いに巻き込まれたと言う話は聞いていたよ。まさか、その後、友達になっているとは思わなかったけどね」
「だって、クラスメイトだよ? 当たり前じゃん」
「……そうだね、その通りだ」
 娘が元・賞金首であるエヴァンジェリンと友人になったと聞いた時、明石教授は衝撃を受けた。しかし、裕奈は当然の事だと言わんばかりに、あっけらかんと笑っている。
 魔法先生の中でも、魔法使いの生まれでありながらシスターとなったシャークティは、これまでの魔法界に閉じ篭っていた魔法使いとは異なる考えを持つ新世代の魔法使いだ。魔法使いの事を知らないまま、人間界で生まれ育った裕奈もまた、魔法使いの血を引きながら、これまでの魔法使いとは一線を画しているのだろう。その事に気付いた明石教授は、フッと自嘲めいた笑みを浮かべる。
「ゆーな、これを覚えているかい?」
 明石教授は、背広の内ポケットから、小さな杖を出して裕奈に手渡した。
 先端に星型の飾りが付いた小さな杖。ネギがのどか達に渡した練習用の杖と同じ物だ。しかし、明石教授が出したそれは使いこまれており、どことなく古い感じがする。
 裕奈は、その杖を手に取ってみた。握ってみると何故かしっくりと来る。
 何故か懐かしい。先端の星型の飾りを目の前で動かしてみた裕奈は、はたとそれが何であるかを思い出した。
「あ……私、これ知ってる……?」
 裕奈は思い出した。これは、かつて裕奈がネギよりも更に幼い子供の頃に持っていた物だ。
 当時は何も考えず、おもちゃの様に振り回していたが、確かに彼女はこの杖を手にしていた。
「そうだ。ゆーなは昔、この杖をおもちゃ代わりにしていたんだよ」
「え? て言う事は、ゆーなって魔法使いの修行してたの?」
 明石教授の言葉に驚きの声を上げたのは裕奈ではなくアスナだった。他の面々も声には出さなかっただけで皆驚いている。裕奈自身、魔法使いの修行をしていた記憶など無い。
「いや、修行をしていたわけじゃないよ。いずれ修行を始める時のために、幼い内から杖を持たせていたのは否定しないけどね」
「え、でも、これは……」
 しかし、今までこの杖は裕奈ではなく明石教授の下にあった。これは一体どう言う事なのか。
 幼い頃の裕奈が杖を持っていた最後の日、それは裕奈にとって忘れられない日であった。


 降りしきる雨の中、皆真っ黒な服を着て並んでいた。
 周りは厳かな雰囲気に包まれており、皆無言で空気が重苦しい。泣いている者も居るようだ。
 今にして思えば、学園長もあの列に並んでいた気がする。
「ねぇ、おとーさん。おかーさんはどこにいったの?」
「ゆーな……おかーさんはね、遠い遠い空の向こうへ行ったんだよ」
 そう、裕奈の母の葬儀に参列する者達の列に。
「とおいところ? いつかえってくるの?」
 「死」と言うものが理解できない裕奈は、星の付いた杖を手に無邪気に問いかけ、父親を困らせる。
 ここは誤魔化すべきか。一瞬そう考えた明石教授だったが、生真面目な性格故に、彼は娘に嘘をつく事が出来なかった。腰を屈め、視線の高さを裕奈に合わせて、優しく語り掛ける。
「……ゆーな、おかーさんはね、もう帰ってこないんだよ」
「え……?」
「でも大丈夫だよ。おかーさんは空の上からいつもゆーなの事を――」
「いやだっ!」
 その瞬間、裕奈は父を突き飛ばした。腰を屈めていた明石教授は、バランスを崩して尻餅をついてしまい、その隙を突くようにして裕奈は踵を返し、その場から走り去ってしまった。


 どうしたあんな事をしたのか、自分でも分からない。大好きな母に二度と会えない事を認めたくなかったのかも知れない。
 ただ一つ、あの時裕奈は大事にしていた星の杖を投げ捨てて走り去った事だけは、はっきりと覚えている。
 今、父から手渡された杖は、あの時投げ捨てた杖なのだろう。目の前で揺れる先端の星を見て、裕奈ははっきりと思い出した。
「思い出したようだね、ゆーな」
「うん、この杖は私の杖だ。おとーさんとおかーさんから貰った、私の……」
「あの頃の僕はね、ゆーなを魔法使いにしようと思っていたんだ。でも、それが怖くなった」
「おかーさんが、死んじゃったから?」
 裕奈の言葉に明石教授はコクリと頷いた。
 彼の妻も魔法関係者であったが、それ故に若くして命を落としてしまった。それからだ。娘を魔法使いにするのが怖くなってしまったのは。
 あの時、裕奈が杖を放り出して走り去った後、彼は娘が放り出した杖をそのまま取り上げてしまった。杖を隠してしまえば、自分が魔法使いである事を教えなければ、裕奈が魔法使いになる事は無い。危険に身を晒す事も、命を落とす事も無い。そう考えたのだ。
 魔法使いであるネギが担任になっても、エヴァとの戦いに巻き込まれても、裕奈自身が持つ、魔法使いの血筋としての資質を知らなければ、ただの傍観者でいられる――そう信じていたかった。
 しかし、それ以降もヘルマン伯爵に人質として捕らわれたりと魔法使い絡みのトラブルに巻き込まれるような位置に立ち続け、そこから身を引こうともせずに、更には自分の資質に気付いてしまったとなると、そうも言ってはいられない。
「横島君が、ゆーなの資質を調べなければ、もう少し余裕があったかも知れないけどね」
「いや、そう言われても、裕奈達の方から調べてって言って来たわけで」
「そーだよ、横島兄ちゃんは悪くないよ!」
「分かっているよ。あくまで切っ掛けだ。遅かれ早かれ、こういう日が来る事は分かっていたんだ」
 いつかこうなる事は、関東魔法協会が情報公開を決めた時から分かっていた。
 横島はその切っ掛けに過ぎない。いや、横島は裕奈の資質に真っ直ぐに向き合ったのだ。今まで彼女の資質から逃げていたのは明石教授の方である。だが、今は娘のためにも目を逸らす訳にはいかない。裕奈の人生を、彼女自身の意思で歩ませるために。
「裕奈が魔法使いになりたいと言うのなら、僕はもう止めない。霊能力者になりたいと言うなら、応援するよ。僕は霊能力に関しては門外漢だが、横島君が良い師匠である事は、神楽坂さんを見れば分かる」
「え、そうですか? いや〜、そんな」
 褒められているのは横島なのに、何故か照れるアスナ。尊敬する師匠が褒められるのが嬉しくて堪らないのだろう。
「……もう少し、考えさせて」
 そして裕奈は結論を出すのを避けた。横島や皆が居たおかげで冷静に話を聞く事が出来たが、やはり頭は混乱している。
「それで良い。『魔法使い』と『霊能力者』、ゆーなは今、その岐路に立っているんだ。どちらの道を選ぶにせよ、どちらの道も選ばないにせよ、しっかり考えた上での結論なら、僕は心から祝福するよ」
「おとーさん……」
 これで言うべき事は全て言った。明石教授が一息つき、ソファに身を沈めようとしたその時、今まで黙って話を聞いていた夕映が口を挟む。
「待って下さい。それならば一つ、はっきりさせておかなければならない事があるです」
「何だい?」
「GSと魔法使いの関係についてです。裕奈さんがどの道を選ぶにしても、それを知っておかねばならないはずです」
「ふむ、それもそうじゃのぅ」
 その夕映の言葉には、明石教授ではなく学園長が答えた。
「思うに、『関東魔法協会』が情報公開をすれば、魔法使いは『陰陽寮』の陰陽師のような『GSではない霊能力者』、霊能力者の一カテゴリーとして扱われるようになると思うのですが」
「その辺りはまだ分からんのぅ。陰陽師と違い、魔法使いと言うのは元来『退魔』の者ではなく、むしろ魔側に組する者達だったんじゃ」
 こう言う話になってくると、アスナはもうちんぷんかんぷんだが、GSに関係する話のようなので、真剣に耳を傾ける事にする。隣の古菲やネギも真剣な表情だ。こっそり横島も勉強になるなぁと思いながら聞いているのはここだけの話である。
「しかし、今は違うのでは?」
「勿論違う。この辺りの事も、情報公開と共に周知させていかねばならんじゃろう。ところで、君がそう考えた根拠は何かね?」
「『現代の魔女』魔鈴めぐみさんの存在です。彼女は魔法使いであり、GSでもあるはずです。ならば、GSと魔法使いは両立する事も出来るのでは?」
「ふむ……」
「ククク、どうしたどうした。生徒の質問にしっかり答えてやったらどうだ?」
 魔鈴の名を聞いて、学園長は少し困った表情をし、エヴァはここぞとばかりに責め立てる。『現代の魔女』魔鈴めぐみ。当然、学園長も彼女の存在は知っていた。
 しかし、ネギは彼女の事を知らないらしく、興味津々な様子で夕映に問い掛ける。
「あのー、夕映さん。その魔鈴めぐみさんってどんな方なんですか?」
「なんでも、失われた中世の魔法を次々に復活させている魔法研究者だそうです」
「す、スゴイですよ、それ! 人間界で言う中世の魔法と言えば、魔の力を借りていた頃の物。魔法界にも当時の資料が残っていませんから、誰も知らない魔法です!」
「魔鈴めぐみ、か……彼女は、魔法界の学校で魔法を学んだのじゃよ」
「そうなんですか?」
「卒業後、人間界に戻ったそうじゃがの。失われた魔法技術を研究し始めたのは、それからのはずじゃ」
「何故ですか? あれほどの功績を上げている方ならば、魔法界にとっても貴重な人材なのでは?」
「そうですよ、そんな人なら『偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)』になるのだって夢ではありません!」
「むぅ……」
 学園長は唸った。確かに夕映の言う通りではあるのだが、彼女が魔法界から去ったのには理由があるのだ。
 そして、ネギの言葉は間違っている。魔鈴めぐみはどれだけ功績を上げたとしても『偉大なる魔法使い』にはなれないだろう。その理由は、彼女が魔法界から去った理由と密接に関係していた。
「そうだったな、その事もしっかり話しておかねばいけなかったな」
「うむ、そうじゃのぅ……」
 どこか悲痛な面持ちの明石教授と学園長。二人の様子にアスナ達は疑問符を浮かべて顔を見合わせる。ただ一人、エヴァだけが二人の葛藤を見抜き、クククと笑みをこぼしていた。
 確かに、裕奈に道を選ばせる以上、この話をしておかないのは卑怯だ。しかし、この話をすると言う事は、魔法使いでない娘に対し、魔法使いである父親の恥部、暗部を曝すようなもの。彼等に掛かる精神的負荷は、相当な物になるだろう。
 しかし、エヴァは決して助け船を出そうとはしない。わざわざ助けてやる義理も無いが、それ以上に、この件に関しては彼女自身も被害者側に位置しているのだから。
「ネギ君、身内の恥を曝すようで何じゃが、彼女が、魔鈴めぐみが『偉大なる魔法使い』になる事は無い。決してな」
「ど、どう言う事ですか!?」
「それはね、ネギ君……魔鈴めぐみは魔法使いの生まれではないからだよ」
「え……?」
「そうか、そう言う事か」
 呆然とするネギに対し、肩の上のカモは、その一言で全てを察したようだ。
 『教会』の魔女狩りにより人間界を追われ魔法界に移住した魔法使い達は、元々人間界に対し隔意を持っており、自分達は魔法使いであり人間ではないと、逆に魔法使いではない人間達を「非魔法族」として蔑んでいた。
 時代は流れ、現代では魔法界も人間界と密かに交流を持つようになり、魔鈴のような一般人や、魔法使いと一般人の混血が魔法界の魔法学校で学ぶようになった。しかし、この「非魔法族」に対する蔑みは根強く、彼女自身、在学中は相当苦労をしたと思われる。卒業後、すぐに人間界に戻ったのも、その辺りが原因なのだろう。
「人間界出身の非魔法族、ですか」
 ネギは少なからずショックを受けた様子だ。魔法界で生まれ育った彼の周囲には「非魔法族」と呼ばれる者達はおらず、そのような差別がある事すら今まで知らなかった。勿論、彼自身受け持つ生徒達を「非魔法族」などと思った事など無い。しかし、魔法界でそのような差別がある事は事実なのだろう。学園長達が嘘を付くとは思えない。
「ワシらは情報公開をする事で、その現状に一石を投じようと考えておる。しかし、一朝一夕でどうにかなる問題ではない。裕奈君が魔法使いになるにせよ霊能力者になるにせよ、その頃にはまだ、現状はそう変わってはおらんじゃろう。どの道を選ぶのか、それを踏まえて考えなさい」
「わ、分かりました」
「ああ、念のために言うておくが、魔法使いになるからと言って、魔法使いの価値観に染まれと言うてるわけではないぞ? むしろ、非魔法族とか、そう言う価値観を持たない魔法使いになって欲しいとワシらは考えておる」
「そうですよね!」
 学園長の言葉に、裕奈はほっとした表情を見せた。考えてみれば、ネギや、高音や、愛衣を見れば、今の若い魔法使い達の間にそんな差別意識が無い事はすぐに分かるのだが、父や学園長の話を聞いていると、段々と不安になってしまっていたようだ。
 裕奈は安心した様子で立ち上がると、「じっくり考えてみるね」と言い残し、倉庫からテーブルやソファを出している千鶴達の手伝いへと向かった。今は悩むよりも身体を動かしていたい気分なのだろう。難しい話を聞いて、いい感じに頭が茹ってきていたアスナと古菲もこれに続く。
 アキラも手伝うべきかと迷っていたので、横島が夕映の事を引き受けると、ペコリと頭を下げて、皆を手伝いに行った。
「君は行かなくて良いのかい?」
「夕映の面倒を引き受けましたから」
「なかなか上手い手じゃのぅ、参考にさせてもらうぞい」
「いや、学園長。確かに情報公開のためにGSから色々と学ばねばならないって横島君に来てもらったわけですけど、そう言うところを参考にするのは止めましょうよ」
「そうかのぅ?」
 大人同士でそんな益体もない話を始めてしまったので、横島は夕映を連れてさっさとその場から退散する事にする。
「なぁ、エヴァ。夕映の部屋はどこだ?」
「ん? 別に部屋割りをきっちり決めている訳ではないだろう。適当に階段上ってすぐの部屋を選んだらどうだ?」
「んじゃ、そうするか」
 そう言うやいなや、横島は夕映を抱き上げる。突然の彼の行動に夕映は驚くが、ろくに身体を動かす事も出来ないため、拒む事も出来ない。
「んぢゃ、部屋で霊力送ってヒーリングでもしようか」
「……それなら、先にトイレを済ませてもいいですか?」
 前回のようにならないための予防策である。

 その後、横島が夕映の痛みを和らげるために霊力を送り込んでいると、パーティーの準備が終わったらしく、アスナが二人を迎えに来た。
 ネギ達の部屋は別棟に用意したらしく、学園長と明石教授もそちらに泊まるそうだ。彼等は既にそちらに移動している。部屋に荷物を置いてからパーティー会場に向かうとの事。ちなみに、横島の部屋だけはまた別で、エヴァの寝室のすぐ近くに用意されているらしい。エヴァが寝込みを襲ってこないか注意が必要である。
 パーティーの場所はやはりテラスを使うらしく、横島が夕映を背負ってテラスへと向かうと、会場は既に大変な盛り上がりを見せていた。3−Aの生徒全員にすらむぃ達に豪徳寺達、それに学園長と明石教授も合わせた計四十人以上の人数が参加しているのだから、これほど盛り上がるのも当然の話であろう。テラスが手狭にすら思えてくる。
 そんな中、裕奈は一人静かだった。どの道を進めば良いのか考えているのだろう。横島も、こればかりは口出しする事が出来ない。裕奈は何かアドバイスして貰える事を望んでいるのかも知れないが、彼が何を言っても、彼女の判断に影響を及ぼしてしまいそうだからだ。
 明石教授もそれは承知しているのか、あえて彼女には声を掛けず、専ら学園長やネギと話している。
 アキラは裕奈が心配なのか、彼女の側に付いているようだ。裕奈の事は彼女に任せておけば大丈夫だろう。

「自分の道を決めるって大変なんですね……」
 アスナもそんな裕奈の様子に気付いたらしく、彼女を見てポツリと呟いた。
 それを聞いた横島は、少し意地悪な顔をしてアスナに問い掛ける。
「GSになるのが怖くなったか?」
「そ、そんな事ないですよ!」
 慌てて否定するアスナ。
 GSの道を目指す事に迷いは無い。確かに無いのだが、今の裕奈や、古菲の決意、それに痛みに耐える夕映を見ていると、自分はそこまで真剣に考えていたのかと、ふと疑問が浮かんできて、どんどん不安になってくる。
「横島さん……」
 アスナは隣に立つ横島の手をぎゅぅっと握った。手の中に感じるぬくもり、同時に胸の内に安心感が広がって行く。
 そして彼女は再確認する。横島と共に歩んで行きたいと言う気持ちに嘘は無いと言う事を。
「横島さん、行きましょ! 早くしないと料理がなくなっちゃいますよ!」
「おう、そうだな」
 アスナは笑顔で横島の手を引いてパーティーの輪の中へ入って行った。そこで古菲達と合流すると、千鶴と夏美が気を利かせて料理を取っておいてくれたらしく、料理が並べられたテーブルへと案内される。そこには風香、史伽が横島達を待ってくれていた。
 夕方頃に入城して数時間、丁度夕食時だ。お腹が空いていた横島はがっつくように料理を掻き込んでいく。
 ほとんどが未成年であり、学園長と明石教授の目もあるため、酒が出される事はなかったが、それから数時間に渡り、テラスはもう凄いどんちゃん騒ぎとなった。酔っ払っているわけでもないのに、それだけ騒げる少女達を見て、カモはタバコを手に「これが若さか……」と呟いたそうだ。



 その日の晩、裕奈は夢を見た。
 幼い頃の、まだ母が生きていた頃の夢だ。
 夕焼けに染まる道を、星の杖を手にした幼い頃の裕奈が、母と二人で歩いている。
「さくらこちゃんはー、ケーキやさんだってー」
「ゆーなは将来何になりたいの?」
「んー、おとーさんのおよめさん!」
「それはダメよ! 却下!」
 長い黒髪を風になびかせる美人だったが、今にして思えば、ちょっと子供っぽいところがある母親だったかも知れない。
「まぁ、ゆーなは元気だし、将来何になっても負けないか」
「げんきってつよいの?」
「うん! 元気は最強よ! 元気が最優先!」
「おおっ! さいきょーか!」
「明日も元気でゴーっ!」
「ごーっ!!」
 笑いながら元気に拳を突き上げる母と娘。その瞬間、裕奈は目を覚まして飛び起きた。
 改めて裕奈は思う。やはり、子供っぽい母親だったかも知れない。

 母はいつも空の上から裕奈の事を見てくれている。あの時、父が言おうとしていた言葉だ。
 今も見てくれているのだろうか。いや、きっと見てくれているに違いない。
 だから、こうして夢に出てきてくれたのだ。裕奈を励ますために、裕奈にアドバイスをするために。
 ただの夢かも知れないが、裕奈はそう信じたかった。
「……決めた」
 その瞬間、裕奈の心は決まった。明日の朝、父と横島にこの決意を伝えよう。
 出来る事ならば今すぐ二人の部屋に駆け込みたいところだが、時計を見るとまだ夜中だ。流石にこの時間に訪ねるわけにはいかないので、裕奈は朝までもう一眠りする事にする。もう一度、母の夢を見られるように願いながら。

 翌朝、早朝に目を覚ました裕奈は、急いで着替えて部屋から飛び出した。廊下に出て一階を見下ろすと、テーブルやソファが並べられてサロンになっている広間に、横島達の姿が見える。父と学園長が一緒におり、何やら話し合っているようだ。
 何の話をしているのか裕奈には分からないが、丁度良い。早速裕奈は階段を駆け下りて横島達の下へと向かう。
「おとーさーん! 横島兄ちゃーん! おっはよー!」
 その言葉に気付いて横島達が顔を上げて振り返った。
「おっ、早いな、裕奈」
「私、決めたよ!」
「決めたって何を決めたんだい?」
「へっへー、私がどの道に進むかだよ!」
「おやおや、もう決めたのか。即決即断じゃのぅ」
 裕奈の言葉を聞いて笑う学園長。流石に昨日の今日で決めてくるとは、流石の彼も予想外だったようで、内心驚いている。
「それで、ゆーなはどの道に進む事にしたんだい?」
「私ね、魔法使いのGSになる!
「……はい?」
「だからー、魔法使いになって、GS免許も取るんだって」
 裕奈の宣言に素っ頓狂な声を上げたのは横島だった。明石教授と学園長も声こそ上げないものの、二人とも呆気に取られている。
「ゆえ吉が言ってたじゃない、魔法使いとGSは両立出来るんじゃないかって。今まで誰もした事が無いって言うなら、私が第一号になってやるのっ!」
「そ、そうか……スゴい事を考えたな、裕奈は」
「へっへー♪ でしょでしょ?」
 横島が辛うじて言葉を紡ぐと、裕奈は嬉しそうに笑いながら横島と明石教授の間に座った。
 一方、明石教授と学園長は絶句して二の句が継げない状態だ。
 その発想は無かった。かつて横島が弐集院に言った事がある。GSになれば、魔法を隠す必要が無いのではないかと。それに対し弐集院はこう答えた。魔法使いとしての誇りがあるから、GSにはなれない。魔法使いを変えていくには、魔法使いでなければならないと。
 明石教授と学園長も、弐集院と同じような考えを持っていた。魔法使いを内部から変えていくためには、魔法使いでなければならないと考えている。
 裕奈はそんな固定概念を木っ端微塵に打ち砕いてしまったのだ。
「おとーさん! 横島兄ちゃん! 私が魔法使いとGSの架け橋になってあげるからねっ!」
 二人の手を取り、二人と腕を組んで笑う裕奈に、もはや迷いは無い。
 そんな彼女を眺めながら、学園長は、この子も新世代の魔法使いとなる資質を秘めているのだと目を細めるのだった。



つづく


あとがき
 レーベンスシュルト城は原作の表現を元にオリジナル要素を加えて書いております。

 魔法界では、魔法使い以外の人間の事を『非魔法族』と呼び、様々な差別がある。
 『非魔法族』は『偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)』にはなれない。
 これらは『黒い手』シリーズ本編『アン・ヘルシングと賢者の石』にある独自設定を流用した、『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定です。

 裕奈の母は魔法使いの関係者であり、彼女が死んだのは魔法使い絡みのトラブルが関係している。
 明石教授は、かつて裕奈を魔法使いにしようとしていた。
 しかし、妻の死が切っ掛けで、娘を魔法使いにするのが怖くなり、魔法使いの事を何も教えていなかった。
 これらは『黒い手』シリーズ、及び『見習GSアスナ』独自の設定です。ご了承下さい。
 今後、原作で裕奈に関するどんな設定が出てきたとしても、『見習GSアスナ』では、この設定を貫いていきます。

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